イギリスを主とする海外コメディをガツガツご紹介するブログです。産地直送のイキのよいコメディ情報を独断と偏見でピックアップして(だいたい)絶賛します。***トホホな事情が発生して今まで書いていたGo Johnny Go Go Go を更新できなくなってしまいました(涙)今までの膨大な海外コメディ記事はhttp://komeddy.blog130.fc2.com/です。


2023年8月24日木曜日

Edinburgh Fringe 2023 エディンバラフリンジ2023 毎年の(ライブ)コメディ・アワード、ノミネート者発表されました。

 今年じつは、お金がなくて、なくなるかもしれない危機があったんですよね。

ボランティアで(ISH)コメディ・アワードが立ち上げられたりしてたんですが・・・

https://www.comedy.co.uk/fringe/news/7493/ish-edinburgh-comedy-awards-2023-shortlist/


とりあえず、今年もアワードは決行されることに。https://www.comedyawards.co.uk/best-comedy-show

以下ノミネート者です。アヒア・シャーのEnds, ノミネートされてます。
ハネたのを知りつつも、時間的に行けなかったおひる系の芸人さんx2には秋以降にまた来てほしいですね。そこでキャッチして感想を書くと思います。

ただ、観てないショーの方が多いのに、こんなこというのもなんですが、今年はオレ的には、アヒア・シャーしかいないと思います。彼じゃなかったら、アワードジャッジ側のこの十年くらいのダイバーシティへの不必要なまでの固執は、本当の意味で、偽善以上になることはないんだな、と思います。たぶん、彼ら(マジョリティーは白人)にはこのショーが与える感動と壮大さと深さが、骨の髄には染み渡らないんだろうな、と。

ちなみに、Chortleのベネットさんがこのショーを4.5星にしてたんですよ。白人のイングリッシュのレビュワーが5つ星と(偉そうに)評価するのは、潜在的にどこかちょっとだけズレがある、っていう表れなのかな、と。つまりリスペクトのマイナス0.5だと思うんですよ。で、まさに、このショーがクリアなレベル違いを見せてるところってソコだと思うんで。


Ahir Shah: Ends 

今思い出してもグッと胸が熱くなるこのショーの感想→
http://www.gojohnnygogogo2.com/2023/08/edinburgh-fringe-2023-2023-ahir-shah.html

Ania Magliano: I Can't Believe You've Done This 

常に申し上げてきていますが、このブログの唯一の欠点は女子レーダーがあまり上手に張られていないということです。2022年のレスターコメディフェスでベスト新作賞(?)を受賞してるようです。
GenZではないけどこの世代が提供する環境はファーストハンドで見聞きできるので、それも理由なのかも。

以下、彼女のウエブサイトのリンクを置いときます。
https://aniamagliano.com/


Emmanuel Sonubi: Curriculum Vitae 


去年新人枠でノミネートされてたらしいです。元バウンサーの兄ちゃんで、ノミネート以降ちょこちょこテレビのバラエティに出てるみたい(何しろテレビあんまりみないので・・・すべてなんとなくですみません)ポッシュでオックスブリッジコメディが大好きなガーディアンのレビュアーが理解できずに3つ星を下した以外は、おおむね4つ星で、インディペンデント紙も4つ星。だいたいなんとなくこれでイメージできるかと思います。

・・・数合わせなのかな・・・

Ian Smith: Crushing 

見たかったの。本当にこれは!見たかったんですよ。ガッドさんのWaiting for Gaddotチームにもいた芸人さんで、いつもチェックだけはしてきたんですが(ソロのショーだって2回くらい観に行ってるし!)まさか、ここまでハネるとは思ってなかった。失礼ですいません。・・・ノミネートされたので、秋以降キャッチできることを祈りまくります。


Janine Harouni: Man'oushe 


UKベースだけどアメリカンレバノン人というバックグラウンドの芸人さんで、2018-2019年くらいから賞にノミネートされ→テレビとかもちょこちょこ出て→もうスペシャルとかアマゾンで配信されてるし、ドラマとか映画とかにもちょこちょこでてる。お話はこうしたバックグラウンドをもとに繰り広げる現在妊娠8カ月の彼女について。だそうです。


Julia Masli: ha ha ha ha ha ha ha
 

これはちょっと気になる。クラウニングとインプロスキルを駆使して、オーディエンス巻き込んでオーディエンスの悩みを解決するショーらしい。コミュニティライフとかおせっかい婆的な存在の人のカリケチャーっぽい。(もう死んじゃった番組だけど)Mock the Weekとかよく出てたらしいので、風刺のエッセンスは多いんじゃないかな、と推測できるし。

Kieran Hodgson: Big In Scotland 

べた褒めの感想→
http://www.gojohnnygogogo2.com/2023/08/edinburgh-fringe-2023-2023kieran.html これは本当に素晴らしかったし、もう一回見たいくらい素晴らしかったです。
じつは先日とある「1時間で60人分モノマネしながら英国TVドラマで見るようなサスペンスを繰り広げるショーを観たんですが、人の特徴を模倣するスキルはあっても、モノマネ・ショー(かまたはそれに毛の生えたもの)以上の、一級品の一人芝居へ到達するのは、全くの別問題と別の才能とスキルが必要なのだよな、とあらためて思い知らされたんですね。(ものすごい悪い言い方すると、オフィス・パーティの演目みたいな感じ・・・)

Phil Ellis's Excellent Comedy Show

これも、本当にみたかったの。周囲がべた褒めしまくるし。だけど、時間帯ですね。ただ彼はプライベートでもエディンバラにはコネクションが多いようで、よく来てそうなので、秋以降に見れるんじゃないかな?と期待せざるを、得ません。
過去に話したことあった気がするんだけど、ないなぁ・・・以前(2014、2015あたり)、Funz n Gamesというお子様ショーのていで、お子様をいぢりまくるという、近年(中の人が結婚してお子様生まれたせいで)Marcel Lucontがやっているタイプのショーで一回爆当たりしてるんですよね。BBCでも配信されてたんだけど・・・

あとですね。
ビル・オニール(とナタリー・パラミーディス)のThe Amazing Banana Brothersが新人枠でノミネートされてます。

オレ的にも今年のベストの一本ですが、単純にエディンバラのフリンジが初回、ってなだけで、こんなアメリカのプログレなパフォーミングアーツ界で才能発揮してる人たちを新人枠に入れるのも、他の人かわいそうな気もする・・・











2023年8月23日水曜日

Edinburgh Fringe 2023 エディンバラフリンジ2023 新作もハマる人はハマる。今回は「女性」についてドクターが講演します。Mark Silcox: Women Only 観ました

 Mark Silcox: Women Only 

https://tickets.edfringe.com/whats-on/mark-silcox-women-only

ドクターに関しては去年みっちりレポートをしてます。

http://www.gojohnnygogogo2.com/2022/08/edinburgh-fringe-2022-2022-mark-silcox.html

今年はフリーフリンジだったので、15分くらい並んでギリギリ目に入れました。ジョー・ライセットさんの番組にほぼ必ず出てきちゃってるので、フリーフリンジになっちゃうと席取りの競争率は高くなっちゃう(と思います)

【今回のショーは・・・】

「去年は、みんながコロナ時にどうやって生きていたか、何をしてたか、何考えてたか、ってことをショーにしてたので、自分も同じことをして、どんよりムードをさらに重くするようなことはしたくなかったので、コロナの前にやってたのと同じショーにしてましたー

「今年は(コロナの時にやってたことを発表するのもみんな完全にやりつくしちゃって)だれもやってないので、このショーでは自分がコロナ時に考えてたり調べてたりやってたことについてやります

「今回の講演テーマは「女性」です。「女性」について様々な論争が繰り広げられてるけど、根本的な問題としてだれも、女性って何か?について探求してない。女性って何か?この問題に立ち向かうことで様々な問題が解決するとドクターは信じている。

「女性とは何かを定義するとき、差し引き法を用いるのがいい。世の中のすべてについて「これは女性か?」といちいち疑問し、違うとなったものを排除していけば、いずれ最後に残るのが女性となる・・・

と、スライドを使った講演がタンタンと進行していきます。

前回はA4の紙をラミネート加工してましたが、今回はパワポです。ちょっと進化。

そのながれで、男性とは何かについても説明が。

男性とは強い男と弱い男にわかれていて、ドクターとサム・キャンベルとジョー・ライセットの顔が例として紹介されます。いや、そうなんですけどw 

続いて弱い男の好む職業の紹介。つぎに強い男について同じように説明。

いよいよ、後半戦もクライマックスになり、女性がなぜ不満なのか、この不公平を解決して前に進むには、と「男性は女性に謝らないといけない。強い男性だろうが弱い男性だろうが、男性全部を代表して、女性に謝らないといけない。受けて入れてもらえるような謝罪をして、前に進めるのだと思う」とガチでケンブリッジ大学の研究文献として存在する謝罪のプロトコールをデモンストレーション・・・

で、終わります。

【感想】

今回、お茶もチックピーもビスケットもゆで卵もなかったですがw、ドクターのつくる世界観は健在してまして。前も行ったかもですが、ドクター・シルコックスが好きな理由は、いわゆるアジアンあるあるを一切やらないんですよね。全然違うところ(次元?)から勝負してるのと、ドクター特有の言葉の選び方と態度に素晴らしさを感じています。

プレゼンが進化していて、カンボーが手伝ってあげてる感が漏れてたんだけど、オレがそうういう気がしてるだけで、絵や文字をぐるっと回転させて出したり引っ込めたりとか、ラミネート加工だったドクターが自身だけの力でできるとはとても思えない・・・

あと、テクニカル・スタッフ役の「親友」を仕込んでて、(ほんとにあるテクニカル問題とは別にw)その人にスライドの順番をごちゃごちゃにされててイライラして無碍な扱いをちびちびやっていたんですけど、それが謝罪のプロトコールの実践のときに利用される仕込みになっていたのも、カンボーっぽい気が・・・いや、オレのなかでしてるだけで、どうでもいいんですけどね。Chortleさんから4つ星もらってました。

SOHOTHEATREでやるんじゃないかと思うので、ぜひ注目してください・・・



2023年8月22日火曜日

Edinburgh Fringe 2023 エディンバラフリンジ2023 テンション低すぎのネガティヴ・バイブで土曜の深夜のフェス客を制圧するミュージカル・コメディ(→褒めてます)Huge Davies: Whodunnit 観ました

 すいまっせん。2023年エディンバラ・フリンジで観たいものの元祖リストに入れてたのに、今見返したら、まるですっ飛ばしてたみたいです。去年秋からずっと注目してる芸人さんなんですよ、Huge Davies って!

Huge Davies: Whodunnit 

https://tickets.edfringe.com/whats-on/huge-davies-whodunnit

2019年にエディンバラフリンジの新人枠でノミネートされてます。首から本格キーボードをぶら下げて音楽奏でながらネタをやるミュージカルコメディアン。キーボードぶら下げといて音楽演奏しなかったら、それはそれで面白いかもですが、サウンド・クリエイターとしてだけで全く問題なくプロとしてやってける、というレベルかと。

アワードとかどーでも興味がなくなっていた時期なので、ノミネートとか全然知らなかったのですが、19年のノミネート以降、テレビ含めて結構いろんなところにひょこひょこ顔を出していたせいで、あんまりよく知らんけど、名前は知ってる状態にはなってました。そんななかで娘の仲の良いお友達で、オレをコメディマミーと、いろいろ質問にくる子が、Huge Daviesにハマっている、と教えてもらい、若者がハマるものを知るために、何かと注目していた、という経緯です。全面的にネガティヴで、エネルギーはミニマムにしか使わない空気の醸し出していて、キャラとしてかなり笑えます。表情も全く変えない。無表情。笑顔もクソもありません。

Nick Helmと一緒にFilm Quiz Podcast やっていた時、サイドキックだったんですが、その時もいい味出してましたし

今年このショーのWiPにあたるであろうヤツも見ちゃってました。

ショーの内容は、よくある「フリンジの登録を100ポンド・オフの割引期間のうちに済ませようとすると、何一つネタを書いていないうちから登録しないと行けない」とまっさらの60分を、この世の不平不満で埋めてく作業、って感じです。一方で、タイトルに入れちゃってるWhoDunnit についてなんか話さないといけない。というわけで、Huge Daviesが殺すとしたら誰をどうやって何んで、って話を、不平不満の合間に話していくんですよ。

つまり、殺人動機がいっぱいある、状態。

音楽弾きながら「見て分かるとおりアジア人なんだけど、記者にPhil Wangと間違えられる」と「Phil Wangと楽屋で一緒にメシ食ってた時も記者にPhil Wang と間違えられた」と愚痴。

スノーマンってクリスマスに見るファミリーエンタテイメントかよ、と愚痴。

スノーマンの続編見たことある? 傷口に塩を塗るような続編のオチは何、と愚痴。

キーボードで見事にスノーマンのテーマソングを編曲しながら愚痴をドラマチックに盛り上げていく。

観客は、拍手するほどウケるの禁止。オレ、ウマイって思うとパンパンパン!って拍手しちゃうタイプなんだけど、たまたま、オレだけパンパンパンってなっちゃった時に、「ちょっとそこの君!悪いんだけど、そんなに多くもない人数の客が拍手しちゃうと、(大多数の客が)ウケてないっぷりが目立っちゃうんで、拍手やめてくれる?てかみんなこれから拍手禁止だから。今度誰かが拍手したらそいつ退場」と。(もしかして、オレもガイシャの対象だったのでしょうか・・・)

ちなみに、下記のネタ、今回のショーでもぶっ込んでるので、参考までに。

一貫して、ナンセンスで、どーでもいいんだけど、スキルはむっちゃある。完全にパーソナを確立しちゃってる(友人が、このネガティヴなバイブはStewart Leeにちょっと似てると言ってて、確かに客をこき下ろすのは、そうだな、と思いました)。そしてエネルギーの出し方がミニマムなので、飽きが来ないかな、と思います。ほんと面白い芸人さんだと思うし、強いキャラありつつも、上手に共演者とコラボするし、メジャー業界で重宝されてるのも、納得です。

2023年8月20日日曜日

Edinburgh Fringe 2023 エディンバラフリンジ2023 文句なしの星5つ&各レビューで高評価叩き出してるのも納得。ナタリー・パラミディス演出のBill O'Neill: The Amazing Banana Brothers素晴らしかったです

Bill O'Neill: The Amazing Banana Brothers

https://tickets.edfringe.com/whats-on#q=%22Bill%20O'Neill%3A%20The%20Amazing%20Banana%20Brothers%22

このショーはまるでレーダー圏外だったのですが、Navi さんから教えてもらいました。Natalie Palamidesの演出とあっては、行ける時間帯が異常に限られた状況であっても優先順位がトップになってしまい、速攻でチケットを購入。(レビューも5つ星が出まくっているとのことで、早くしないとすぐに売り切れる焦りもありました)

いやもう、あっぱれとしか言いようがなかったです。全方位で5つ星。

入場すると、すでにステージにはThe Banana Brothersの兄ケヴィンが大暴れしています。樽にはバナナの皮とまだ剥いてないバナナが山積みに入っている。

1時間でバナナの皮で滑るネタ1000本の挑戦をする。できなければチケット代は払い戻す!と豪語。彼のアシスタントで弟ジョーイと一緒にこれから始めるよー、とジョーイを呼びにオフ・ステージへ。ジョーイが出てきて、オレの兄ちゃんすげえんだ、これからオレたち世紀のバナナの皮で滑っちゃうネタ1000本!やっちゃうぜ! じゃあ、兄ちゃん呼んでくるから、って舞台裏へ。でも兄ちゃんがいない。ちょっと探しては舞台に戻ってきて「ちょっと待ってて(いつものことなんだけど)ファンの女の子とやっちゃってるみたい!すぐ終わるはずだから!」でもケヴィンは来ず。客を沸かせ続けるのも間が持たず、ちょっとするとはジョーイは舞台袖にケヴィンを探しに行っては「ごめん、どうもにいちゃんは親友のリッキー・ジャーヴェイスと一緒にいるみたいで・・・」「ごめん、どうも今兄ちゃんは親友のデイヴ・シャペルとだべってて・・・」(*1) と弁解。いい加減ネタも尽き果て再度ケヴィンを探しに行ったジョーイが舞台裏で目の当たりにしたのは、ケヴィンが頭を鉄砲でぶち抜くシーンでした(注:観客にとっては音のみ。ね、念のため、ビル・オニールが両方演じてます)

ケヴィンがいつもスポットライトを浴びる中、常に兄を頼って生きてきたジョーイ。観客がこれだけ集まってしまっている中で、ケヴィンなしで一体どうやって、バナナの皮で滑るネタ1000本やりきるんだ? 自分が考えたネタは、女々しいと兄にボツにされたものばっかりだし・・・その一方で、心の根底で形を潜めていた意識がジョーイの中でじわりじわりと覗き出してくるんですよ。それはホモフォビックで、泥酔そしてセクハラが当たり前で、弱いものが不快なる反応を面白がる兄のToxic masculinityに虐げらていた自分。兄との関係を振り返りながら、やがてジョーイが行きつく先までが描かれていきます。

バナナの皮で滑る、というのは、いわゆるバナナを別の何かに見立てたボケの笑いなんですね。日本の笑いでもお馴染みかと思います。序盤から通して、本格的なクラウンのキャリアを持つBill O’Neillのフィジカル・コメディが、圧巻のクオリティです。背中にパットを入れてい流ので、バックがふくらがっていたのですが、それを脱いでもすごいところに筋肉がついてるんですよ。モンキーショルダーぽくなってた。小柄だし、最初ダミ声を出してる女の子なのかと思っちゃうほどかわいいんですよ。だからこそ、このストーリーがさらに活きてくることは否めないですね。

オーディエンスとの絡みからのオーディエンスをケヴィンと見立てた回想シーンへの移行も素晴らしい持っていき方でしたね。これも演者のクラウンとしてのキャリアがあってこそなのではないかと。オーディエンス参加型にすることで、(リスクを重々承知で)オーディエンスへの啓蒙を行っていく。過去作で見たナタリー・パラミディスの醍醐味がここでもマックスで出ていました。女性を連れた男性客ばかりをピックアップし、ロマンティックなダンスを踊ったり、バナナ1本を両端からそれぞれ食べていったり(結果、どうにもキスすることに)。

この作品はおそらくバイオロジカル的に女性だと限界が見えたパラミディスが、Bill O’Neillとタッグを組んだのかな、と。この作品のアイディアは元々Bill O'Neillのものなのか、それともパラミディスの作ったものを、見事Bill O'Neillが具現化したものなのかが気になっています。Bill O'Neillはパラミディスのこと、マミーと呼んでいるのをインスタで見ました。

しつこいですが、本当に本当に、Bill O'Neill、ゲロかわいいです。本当にめちゃくちゃ、かわいいです。インスタのフォローをお勧めします。

あと、これSOHO THEATRE プレゼンツの一環なので、そのうちSOHO THEATREシリーズで登場するんじゃないかと思います。でアマプラで視聴可能になるんじゃないかな、と。


(*1) 名声のある大物有名男性コメディアンが、「昨今言いづらいことを言うエッジなコメディアン」というスタンスで、ネトフリのコメディ・スペシャルというグローバルなプラットフォームで昨今のダイバーシティやジェンダー問題を差別し嘲笑するネタを繰り広げている、と言う経緯があります。


2023年8月18日金曜日

Edinburgh Fringe 2023 エディンバラフリンジ2023 Diversityの時代到来で、差別の時代は終わったのかと思いきや時代はループ状態。おじさん芸人のレンズを通してジェンダー問題の厄介さを描くZoe Coombes Marr: The Opener観ました

 Zoe Coombes Marr: The Opener

https://tickets.edfringe.com/whats-on/zoe-coombs-marr-the-opener


ゾーイさんは、2016年にエディンバラフリンジでノミネートされてまして、当時のオレは、超珍しくこき下ろしてます(滝汗。超珍しいので、目立つんだよな…)

ちょっとだけ弁解すると、ショーについてこき下ろしてるというよりは、ダイバーシティを意識しまくりすぎてるアワード審査員たちへ怒ってたんですけど。

http://www.gojohnnygogogo2.com/2016/08/edinburgh-festival-fringe-2016-zoe.html

しっくりしない部分があったけれどテーマとかやってること自体はオレの趣味だったので、これ以降もゾーイさんのショーは注目を欠かさないようにしてました。

一方、2019年に観たBossy Bottomは高評価です。

http://www.gojohnnygogogo2.com/2019/08/edinburgh-fringe-2019-zoe-coomb.html

ただこれは2016年に観た時の、彼女の看板キャラである(白人男性至上主義をDNAに仕込ませてる白人男性たちをおちょくろうとおもって始めた白人芸人)デイヴは出ないよー、というプレミスのショーだったので、2016年の作品に対するシコリは残っていたんですよ。そんな中で公演されたのが、今回のThe Opener. 

 前回オレが一番しっくりいかなかったことが解消されていて、最初にゾーイさんがゾーイさんとして登場。今回Daveを復活させる経緯と「Dave出てくるけど、自分はいつも客と同じ立場にいるから、彼の言動は彼(キャラ)のものであって、私ゾーイではない」と明確に説明してくれます。クリアに面白味を説明しちゃう笑いが好きかどうかは別にして、ゾーイさんがゾーイさんとしてデイヴについて語っているので、納得がいくんですね。しかも、後々、なぜわざわざ、このようにゾーイさんが明確に説明を入れているかが、効いてくる展開になっていくんです。

ディヴの登場からの内容は、2016年から冬眠していたけど、最近世の中が再びオレを求めているのがわかったから、覚めてやったぜ、的なフリで、キャンセルカルチャー問題になったリッキー・ジャーヴェイスやデイヴ・シャペルのネトフリスペシャルのスタンダップを引用したりしながら、ベタベタのダメんずネタを披露、「オレってホント面白いだろ」ってドヤる。

そうこうするうち、「ダチ」から携帯に電話かかってきて、薬を飲む時間のお知らせ。ずっと昏睡状態にあったので、「薬」を服用しないといけない。でも飲み過ぎはダメだよ、スルッと時間がループしちゃうから・・・

と飲むと、デイヴの中で記憶がすっ飛んで、リセット。登場から始まります。何ついて話してたんだっけ? キャンセル・カルチャーだ、ってなる。

で、しゃべってくることがちょっとずつずれたり、客の反応がちょっと違ったりで、まるで同じなリピートにはならない。けれど、このループがだんだん短いスパンで繰り返されていくんですね。その合間合間に、困惑してくるデイヴが同じ体を共有するゾーイさんに結局キャンセルカルチャーの要点ってなんだったんだっけ?って相談し始めるんですよ。一方、この一連のルーティンはぐるぐるとどんどん短いスパンでループする。

後半およびクライマックスでデイヴがメルトダウンするところとゾーイさんと表裏一体になるくだりが、冒頭のゾーイさんのクリアな説明と相反するため、最初のクリアな説明が上手に活きたな、と。ループも薬の服用も、みなリンクする。ジェンダー問題そしてダイバーシティ問題が混沌としていて全然前へと抜け出せてなくて、ぐるぐる回っている状況を見事に表現してたと思います。最後ダンスポールでデイヴがぐるぐる回るんですよ。

過激さと好みだとナタリー・パラミディスのネイトに勝てるものがないのですが、同じテーマのものを別の形で探求した傑作となってたかと思います。


Edinburgh Fringe 2023 エディンバラ・フリンジ2023 ウソも方便の決定版。Stuart Laws: Is That Guy Still Going観ました。

 Stuart Laws: Is That Guy Still Going

https://tickets.edfringe.com/whats-on/stuart-laws-is-that-guy-still-going

今年見るぞリストを書いたときに、スチュアートさんについてはちゃんと紹介入れてます。


【今年の新作の感想】

テーマは「正直になる」という「ホラ」なんですよ。真実として話を作る(ウソをつく)ことの美しさというか素晴らしさをデモンストレーションし続ける1時間でした。偶然にも(?)先日見たNick Pupoと真逆

結婚したとか、奥さんといかにラブラブか、という話をした後に「いい話でしょーでも一つ言えるのはホントは結婚してないし奥さんもいない」。「結婚してないし奥さんもいないけどVasectomyはやったんだ。同年代の子持ちの友人がとんでもない苦労をしているのを見て、あれはしなくていい、って思ったから。全てを投げうって子育てし、この子のこの笑顔がご褒美、っていうけど、自分は全てを投げ打たなくてもその子の笑顔いま見ちゃってるし」的な話の繋ぎから、実はこのショーは先日亡くなった父親のことについてちゃんと向き合おうと思って・・・と父との関係について語り始める。(注:このネタはもちろん60分ショーのうちの30分ー40分くらいのところ)でホロっとしたところで「父親が死んだってのは作ったんだけど」となる。

ロンドンのM&Mワールドで秘密のカクテルバーがあると都市伝説があるのをご存じかと思います。これこの芸人さんが作った話がヴァイラルになってしまった末の都市伝説なんです。(これはオレがスチュワートさんの活動を概ね追ってるので、この秘密のカクテルバーのSN Sでの騒動の一件を目の当たりで見てたから、ウソではない)どうも、ここが今回のショーの着想になってるっぽいです。最後にこの経験談を出して、どんどん勝手に歩き出してっちゃうことの面白さについて話をしていたので。

元々素の自分をステージ上で出すのがNGなスチュアートさん。ウソっていいじゃん? ってオレも思いっきり思うタイプなので、いいショーだなーと思いましたし、終わった後も、じゃあどれが一体本当なのか、上手にはぐらかしているのが賢いな、と思いました。

スチュアートさん、確か結婚してるはずと思ったんだけど・・・今となってはどっちかわかりませんw





Edinburgh Fringe 2023 エディンバラフリンジ2023 オレ的今年最大のハイライト完全レポート。フェスティバルで一番大きな会場の一つで10分間だけのソロショー行きました。Sam Campbell.Bulletproof Ten

【はじめに】

もしも今回初めてこの芸人さんを知った、という方は、このブログはかれこれ5年位は前から、オーストラリアが産んだ奇才で天才で王者のサム・キャンベルを推し続けてます。オレだけが王者って言ってるんじゃなくて、2018年オーストラリアのメルボルンコメディフェスでそして2022年エディンバラのフリンジで二冠取ってる、正真正銘の王者です。

参考までに何がそんなに凄いか情報は、下記リンクが一番いいかと思ってます。多分。

http://www.gojohnnygogogo2.com/2022/08/edinburgh-fringe-2022-2022prsam.html


【公演のお知らせは、フリンジ・スタートの3週間前】

「フリンジを制したものは、フリンジに来ず」というのは、まるで珍しくないのですが、それでも、スーパー・ファンと公私共に認めるオレ様としては、諦められずに、「2−3日でもいいから来てー来てよー。来てー」としつこくしつこく念を送っていました。どこにも届きようもないけど。

そんなある7月の下旬、友人からのテキスト経由で、お知らせが!


1日なのはいいんですが、「1時間」じゃなくて「10分」。

Mix Billじゃなくて、ソロ・ショーで「10分」です。

PleasanceのGrandの客席数は750。フェスティバルで一番でっかいハコの一つです。並んで入場&待ってる時間30分以上。10分のショーのために。10分観た後、出るのに10分かかるかもしれない。

10分なのでチケットのお値段は2ポンド。(大体平均1Hのショーは平日だと12ポンド)

こんな前代未聞のおもしろすぎること、思いつくだけならまだしも、ほんとにやっちゃう芸人さんは、他にいるでしょうか。

いません。

リンクもらって10秒後にはチケットを購入し、「オレは30分前から会場で並ぶから!」と、その公演日に予約入ってた美容院をキャンセルし、にぎにぎ待ち続けること3週間。(注:チケットはもちろん完売)

同行者らの「すみません、その前に用事があるのですが(→ほんとにあるかどうかは不明)、20分前でもお許しいただけないでしょうか」の許可申請も快諾し、40分前には到着。


だってこれ、最低30分並ぶところも含めて笑いなんですよ。逃すわけにいかないじゃないですか。ガチで一番を狙ってたんですが、同じことを考える強者がすでに何人もいて、負けました。

半笑いの係のお姉さんに従って列に並びます。

750人入れないといけないので、17:35分くらいには開場。同行者たちがまだ到着しないので「席全員分の取っとくから!」と言って、前から2番目のセンターをゲット。(注:1番前は興奮しすぎてネタが頭に入ってこない可能性があるので、避けています)

同行者らは程なく合流してくれたので、もう集中して、30分近くかけて席がどんどん埋まっていくのを目撃できます。

とはいえ後ろみたら、オレらの座ってる真後ろ列が若手芸人さんたちで埋まってたので、上手に撮影できなかった。

ちなみに一番前の列で数席、誰も座らせてもらえないところがあったので、何かしらの仕込みがあるのか・・・?と思ったけど、これは、単純にお身体の不自由な方のためのスペース空けでした。


なにしろ750人。オタクかローカルじゃない限りは、PleasanceのGrandの状況がわからんので、ちょっと前とかにくる。よって開演時間18時を過ぎてもダラダラ入場客があとを経たない。止まらぬワクワク感がさらに高まる席前方のファンダム。

そうこうするうち、10分近く押して、ついに! 王者降臨。(つまり結果的に開場到着から50分くらい待った)

(注:写真は撮ってませんよー)


【感想】

ガチで10分強でした。

タイトル通りネタ10本!だし、10分なんだけど、サム・キャンベル真骨頂。

エディンバラ・フリンジで王者になって、Channel4が大手を振って可愛がることができるようになったせいか、この1年、Ben Eltonプレゼンツの特番コメディFriday Nights Liveに出演しちゃったりTaskmaster S16のコンテスタントになったり、ジミー・カーが進行するご長寿番組8 out of 10 cats のCountdownに初出演したり、と英国メジャーコメディを制覇してきちゃってて。つまり、今まで猛毒吐く対象だった権力のある番組や芸人さんたち側の世界に踏み入れている、という状況なんです。

最初は、たとえば「(リゾート)ホテル のリフトは濡れてる人組と濡れてない人組分けてくれないと!」という、いつもの、空前絶後の発想が爆走するキャンベル・ジェットコースターって感じの、ボンカーズなネタなのですが、その後、ロンドンに住み始めて、ロンドンは怖い、業界パワーに疲労困憊、業界ってもすっかり変わって、今やポッドキャストにヘイコラしないといけない時代! メニューとタイトルについてる、でっかいポッドキャストの名前とかサクっと紛れさせて、猛毒モードに入り、スライドを使い始めようとするときに、ものすごい量のスライドを仕込んでて「本来は見せるものじゃないけど、ぎゃあ!間違えて見せちゃった」的に、チラ見せするんですよ。酷いいぢり方したジミー・カーのコラ画像とかw。手書きで数式いっぱい書いてあるスライドとか。「いろいろリサーチしてるんだよ!」って慌てて隠す。

ほんとはフリンジ来たくなかったんだけど、フリンジ側に懇願されてしょーがなかったんだよ!ちくしょー!オレは史上最強(恐?)の芸人だっ!って、出してきた画像が  Jerry Sadwitz(元々過激がキャラの芸人さんで、昨年キャンセル・カルチャーに巻き込まれてショーがキャンセルに)とJerry Seinsfield (「となりのサインフィールド」の、米大物メジャー芸人)(注:ジェリーつながり)を掛け合わせての、王者サムキャンベル登場画像。

クラシック・カンボ。クラシック・カンボですよ。

9本目のネタが終わったところで、カンカンカンと鐘を鳴らして袖からMark Silcox先生ご登場。「ラスト1本ですー」。→みんな待ってましたの大拍手。

10本目は、名作Troughでもあったような種類のネタ&フィナーレにふさわしく「足の指のタイプは、母子が一番長いタイプと2番目の足の指が一番長いタイプと、実は二種類ある。前者はそうだよねー、後者はへえええって反応するもんだ。と説明あってから、観客750人全員がスライドでさまざまな足の指を次々と見させられては、イエーーース&ノーーーーーーーと声を出さんといかん、というもの。このネタのフィニッシュが最高に盛り上がって、涙流すほど面白かったけど、言わないでおきます。多分、今後、他の場所でもやると思うから!

変わらぬ破壊力と、とんでもなさで、引き続き、いちいちワクワクして、騒いでいきたいと思います。

Chortleさんから「60分だったら5つ星だけど、10分なので換算して0.8333333333...星」って評価されてました。ちょっとウケた。

2023年8月16日水曜日

Edinburgh Fringe 2023 エディンバラフリンジ2023 去年の希望的推測が今年で確信に。限りなくRelatableなのにものごっつ奇妙な世界を繰り広げてますTom Little: The Reliably Funny Comedian You Want To See

ガチのフリー・フリンジです。 事前にチケット買えない。

Tom Little: The Reliably Funny Comedian You Want To See

https://tickets.edfringe.com/whats-on/tom-little-the-reliably-funny-comedian-you-want-to-see


オレ様がきちんと調べるときは(=YOUTUBE等を全て漁る)、かなり本気で「この子ハネる才能がある」と思っている時で(→だいたいそれ相応にその預言は当たる)

昨年この子を見た時に、延々ダラダラと彼の経歴やオンラインコンテンツ紹介やらをしている記事は以下です。

http://www.gojohnnygogogo2.com/2022/08/edinburgh-fringe-2022-2022-tom-little.html

また、7月くらいから、2分強の笑劇オンライン・シリーズやってるんですよ。彼が書いているのですが。正直、大当たり!とふにゃ?ってのとばらつきはあるものの、押し並べるとクオリティが高くてですね。


そんなわけで、今年最初に出した注目リストにもガッツリ入れてました。

今年のショーなのですが、去年以下のように思ったことが、ガッツリ当たっていて、本当に面白いパーソナを作り出してて、このパーソナを原動力に、日常にある、誰にとっても当たり前で、わざわざ気に求めないような事柄をピックアップして、ものすごい奇妙かつチャーミングな世界を繰り広げていくんですよ。それが、めちゃくちゃよかったです。

「やんちゃなランドセル小学生系をイメージしてたのですが、本人言ってる通り、ナーヴァスでプレッシャーに弱い社会の弱者的印象で、ちょっとびっくり。ただ、そのイメージとは反対に、ズケズケとした内容をすごいスピードでまくし立てるんですよ。ショー中の頭の回転速度に口が追いついていけてない? それとも、もしかして、スタッター持ち?と思ってしまったほど。ガチ緊張で荒削りと考えるか、このショー用のパーソナを作り上げてた、と考えるかは、次回にこの芸人さんを目撃した時に判断できるかも。というのも、帰って来てから、この芸人さんのクリップを視聴したけど、同じネタ喋っている(ヨーグルトのネタとかカンバーランド・ソーセージのネタとか)のに、こんな喋りのスピードも持ってないし、メンタル弱い社会の弱者っぽい感じじゃないんですよね。フリー・フリンジの現場にもすでに慣れていて、ほぼほぼ全て想定内なはずだし。どちらにしても、オレにとってはポジティブ・サインです。面白いパーソナを作っている気がする」

去年は虫も殺しそうにない草食動物くんみたいな様子で、歯に絹着せないツッコミ内容のギャップって感じだったんだけど、オンライン・シリーズでの制作でこねくり回す機会がたくさんあったのかな、ちょっと軌道修正したのかも。虫も殺しそうにない、草食動物くんなので、なんかあれ?と思うと、かなりいろんなこと考えすぎちゃって、思考回路およびネタ上の展開もものすごいことになっていくんですね。(→ちなみに、オンライン・シリーズはコレ)

この芸人さんの世界感が確立されてるのと、ネタの素材がまるでブレないので、1時間淡々とストーリー性もなくしゃべってるみたいに見えて、一貫性があるんですよ。キュッとしてます。

ちなみに今回のネタ素材はLynx Africaとチップス屋さんのソースとLNERのテーブル席などなど。

確実に彼自身の色があって、それをキープして欲しいけども近い将来的には、マッケンジー・クルックを彷彿とさせるようなテイストと極上クオリティになるのでは。

と、期待せざるを、えません。(あばれる君風で)

希望としては、そろそろ事前にチケット購入も可能なタイプのPWYWにして欲しいなぁ。来年も来たら絶対見るのでね。昨日は12ポンド払いました。

2023年8月14日月曜日

Edinburgh Fringe 2023 エディンバラフリンジ2023こんな芝居は初体験。めちゃくちゃ楽しい、めっちゃ笑える、そしてガッツリKiston。First Thing (Work in Progress by Daniel Kitson)観ました

First Thing (Work in Progress by Daniel Kitson)

https://tickets.edfringe.com/whats-on/first-thing-work-in-progress-by-daniel-kitson

これはねwww

素晴らしかったです。ちょっとした言葉じりやタイポで、完璧主義のKitsonがWiPのまんまにしてるのでしょうが、まるでWiP感がありません。

一体なんなのかというと。

ネタバレになっちゃうので、知りたくない人は読まないのが一番楽しめると思います。これを観れるチャンスがあれば、ぜひ盲目的にチケットを買い、行ってください。個人的には今までなかった芝居体験&かつ超Kiston体験ができました。

以下からはネタバレです。





会場に座って始まるのを待っていると、Kistonが登場。「新しい芝居を書いてるんだけど、これから全員にその台本配るんで、みんなそれぞれ台本に書いてある番号の役をやって!役に与えられたセリフには付箋貼って、ハイライトしてる。じゃあみんなで本読みやりまーす!」と、客席168席みっちり座る観客全員に台本配り始めるんですよ。1人だけ、結構台詞が多い人がいて、その人は最初にKitsonが「名前もある役なんだけど、やってくれる人いる? あなたやってくれる?」と、交渉。

始める前に、アドミン注意事項。「やりたくないっていう人もいるとおもう。その人はセリフのない役があるから、安心して。その台本と交換するから」と。配られた台本に目を向けるなり、「まだ読まないーーーー!!!! 台本開けるなーーーーー!!!」と、始まるまで、開けられない。「みんな台本受け取った?オッケーじゃあ、みんな勝手によろしく」とハケるふりなんぞしての軽いオープニングジョークを飛ばした後に、本読み始まります。

芝居の内容というのが、まさに「この状態」についての寸劇なのです。Kitsonが最初に入ってきたことと台本での冒頭のKitsonの台詞がシームレスになんのバンプもなくブレンドする。我々が与えられた役というのは観客役。そして質問ともKitsonの過去作品(スタンダップも含む)を含めた批判やツッコミとも、やじ飛ばしとも区別のしづらい、客とKitsonとのやりとりが繰り広げられる傍ら、「芝居」が進行していくんです。

一部ではなく、文字通り観客全員が参加するマックスレベルのインタラクティヴ空間を作り出す一方、脚本を通してKitsonが完全にその空間を制しているという。客のツッコミ及び批判という形をとった制作者自身のクリティカル・アナリシスというダブルスタンダードが、Kitsonらしい笑いを次々と作り出していきます。開始前のアドミン事項の全ても後々の展開の仕込みになっているところも、素晴らしかったです。(決して贔屓ではない)

オレが観た日が、たまたま運良くて、John Kearns (多分この記事が一番わかりやすいかな?古いけど→ http://www.gojohnnygogogo2.com/2014/08/edinburgh-fringe-2014-foster-awards.html)が客としてスルッと来てた日だったんですよ。「役者みたいに頑張らなくていいから!そういうノリノリな頑張り、まるで要求してないから!むしろ、役者とかいてほしくないから!」とガッツリKitsonにいじられてて、顔真っ赤んなってて笑いました。彼はセリフ1つだけいただいていたんですが、彼自身の状況に偶然にもあった台詞で、放った後に大爆笑の拍手喝采。

ちなみに、オレがもらった台詞はたった一つだけだったです。どれも簡単なセリフばっかりなのですが、間とか細かく考えると怖くて、よかったーと思いました。ちなみに、クライマックス?あたりで「全員に行き渡るように1枚20pかけて168コピー作って、ドン引きレベルの心配症と臆病者と英語の話せない外国人も参加できるように努力してんだよオレは!!!」という台詞があるんですよ。この奇妙なリアルと作りがあってない芝居。ほんとに発売開始の朝も5時半に寝起きでトイレも行く前にチケット取ってよかったです。


Edinburgh Fringe 2023 エディンバラフリンジ2023 クラシックな手法で理想のアイデンティティを模索するAlexander Bennett: I Can't Stand the Man, Myself. ある意味新鮮で大変よかったです

 まるでレーダー圏外だったのですが、仕事終わりが夕方に街中で終わるけども、一本どうでしょう。とゆるく募集したところ、友人からこれを見に行くリンクが送られてきました。それが

Alexander Bennett: I Can't Stand the Man, Myself です。

https://tickets.edfringe.com/whats-on/alexander-bennett-i-can-t-stand-the-man-myself

まるで何も知らない。30らしい。

ちょっとだけ調べました。Mark Watsonの24時間コメディのレギュラー登場芸人さんらしいです。だから友人のレーダーには引っかかっていたのか。Leicester Comedy Awardのノミネート経験があり、Royal College of Artsで講師もやってたらしいです。今もやってるのかな?

なるほど。このキャリアがあればこそのコンテンツだったのが納得できます。

今年よく見かけてるなーと如実に思うのが、自分が胸を張れるようなアイデンティティの模索。このショーのテーマもこれなのですが、興味深かったのはSelf Hatredを全面に出して、自分のどこが嫌いかを分析して笑いを作り出していくところです。

この、過去も含めて自分が触れたくない部分を、闇雲にとことんほじくり返していぢり倒して、笑いを生み出し、人が笑うことで、メンタル治療の薬にしていく、という手法は、昔からあるクラシックなやり方である一方、これで才能ある芸人さんたちがさらにメンタル悪化してもいる現実も大きくあったわけです。ここ8年くらいでシフトがちょっとだけ動き、「笑いを作る」ためにほじくり返すのではなく、「メンタルを改善する」ためにほじくり返すように。そのバイプロダクトとして発生する笑いを盛り込んでいくようになった、かと思います。(だから、上手じゃないと、セラピーセッションに毛のはえたレベルになっちゃう)

アレックス・ベネットさんはどちらかというとクラシックなほじくり返し方で笑いを生み出すんですが、それと同時に、ほじくり返したものをものすごくロジカルにつなげていき、理想のアイデンティティへと着実に向かっていくのですよ。その理想のアイデンティティの表現の仕方もとんでもなく馬鹿馬鹿しくて上手かったですけど、本髄はついているので、ダブルスタンダード。非常によかったです。バカバカしさとその裏に隠れる真のアイデンティティの姿が対照的かつ融合していて。



2023年8月13日日曜日

Edinburgh Fringe 2023 エディンバラフリンジ2023 上手かったです。幅広くお勧めしたいEd Gamble の次のUKツアー(見たのがWork in Progressなので)

https://tickets.edfringe.com/whats-on/ed-gamble-work-in-progress

注目リストを挙げた時に話したことですが、見た経緯を説明します。

エド・ギャンブルさんといえば、エイカスターくんとのOff the MenuやらTaskmasterに出ちゃってるやらで、すっかりみなさんご存知かと思います。もはや大きなハコでしかやらないし。なのですが、WiPでロイヤルマイルは城下町の地下ダンジョンみたいな建物、ゲロの香りがするHiveでちまちまやるんですよ。で、「ちっちゃいハコでやるなら、一回見て見ようかと思う! 多分面白いと思う!」 ってoff the Menuをよく聞く同行者がいうもので、じゃあ、試してみようかなぁと。

というのも、今まで一回もギャンブル氏を見たことないんです。通常はね、この手の芸人さんって、20代半ばの時に、かわい子ちゃん枠で、とりあえず見とく?って事が多い(*1)のですが、あんまり顔が整いすぎてたせいかなぁー?? で、なんか、こーモチベ―ションがわかないうちに、ビッグにだけはなってっちゃった。(→ 絶対にgoogle translate して読まないでください。このニュアンスは絶対失礼な翻訳になる気がする…)


というわけで感想は、「やっぱりターゲット層がデカくて成功してて、ツアーとかきちんとこなしている芸人さんって上手いんだなー」です。フリンジの時代もちゃんと経過した上での、自信とカリスマとでっかいハコでの高い経験値の賜物ですかね。ポッドキャストでも話しているような内容を「ネタ」として、チケットエージェンシーの手数料含めたら40ポンド行きそうな金額を払って見にくるお客さんが「面白かったね」と言って帰るようなクラフト芸にするっと仕上げていました。

もともと笑いって、多くの人にとって、腕組んで、眉毛コイル巻きにしていろんなこと考えてみるものじゃなくて、むしろ逆じゃないですか。単純に笑いたい、楽しみたい。いわゆる小難しさがないからと言って、いいものを見た、と思う質の高さ自体は、おもいっきり要求されます。むしろ値段が高い分、もっと厳しいと思う。しかもターゲット層広いから。
エド・ギャンプルってそんな中でも誰にでも彼を見たい人は、40ポンドを要求できる芸人さんだ、と思いました。

UKツアーを秋からだったかな? 始めるか、チケットを売り出すからしいので、とても楽しい時間が過ごせると思うので、ぜひ。


Edinburgh Fringe 2023 エディンバラフリンジ2023 今年のガチのベストが出てしまったかも。感動が止まらない(号泣)Ahir Shah: Endsは戦後英国社会史における移民社会の重要性と移民史への謳歌です。

あら!最初タイトルにWiP入れてた(https://tickets.edfringe.com/whats-on/ahir-shah-ends-wip)のに、あまりに絶賛でWiP取った! これで本格的にこの作品が今年のコメディ・アワードの受賞作となる可能性が高まりました。


https://tickets.edfringe.com/whats-on/ahir-shah-ends


アヒア・シャーのショーは過去に何度も絶賛しています。(びっくり。最初にすげーってレポート下の2015年と8年も前だった!)

http://www.gojohnnygogogo2.com/2018/08/edinburgh-fringe-2018ukahir-shah-duffer.html

http://www.gojohnnygogogo2.com/2017/08/edinburgh-fringe-2017-ukahir-shah.html

http://www.gojohnnygogogo2.com/2015/08/edinburgh-fringe-2015ahir-shah.html

HBOでもスペシャルやってます。(イギリスでは未放送)


こんなに素晴らしいマイク一本での名作1時間は久しぶりです。今思い出しても涙腺が緩みます(&ライブ中には会場観客ほぼ全員涙腺崩壊)

うちの娘ちゃんはガッツGen Zなので「スタンダップ」は古い、1時間も自分と同じバイブじゃない人(&世代が)マイク一本で客にダラダラしゃべりかけるフォーマットが苦手なんです。客と演者がナマで共有する空間内では、面白いと例え思わなくても笑わないといけない気分になる、そのプレッシャーがキツイ。しかしこれを見てついに「これはスタンダップというのとは違うし、いわゆるコメディとも違う」と。オレが愛する1hの(ざっくりとした言い方で恐縮ですが)「ライブコメディ」と「スタンダップ」の違いを体験できたみたい。しかも、これを見て「もう今年はこれ以外は見なくてもいいや。これを超えるものはない」と断言しました。

うれしいです!(→あばれる君っぽい感じで)


以下、超ネタバレになります。気をつけて。そうしないと、まるで素晴らしさが伝わらないから。ただ、以下の話は笑いの要素は全て取り除いています。信じられないかもしれないですが、笑いと涙がてんこ盛りです。




ときは、イギリスでRace Relations Actが施行され始め、それまで元植民地Commonwealthの移民法がじわじわとキツくなる頃の1960年代。北インドもパキスタンも政治的にひっくり返っている時で、一方イギリスは高度経済成長で労働者階級も中流階級みたいな経済力がついてくるブルジョア化時代。アヒアさんのおじいさんが、仕事仲間数人と頼る人も誰もいないイングランド、ブラッドフォードへやってくる。インドでは職どころかまともな生活もままならないため、妻に「職のあるイギリスで稼いで、お金を送ってくれ」と言われてやってくるのです。時間交代制で仲間と寝床をシェアし、1日3食分の手当もそれぞれ1食分を分け合うことで1食分を浮かして、貯金に回す。そして少しでも多くのお金を家族へ仕送る。

おじいさんは、移住したからにはイングランドの文化、イングランドの生活習慣をリスペクトし吸収するのが道理というもの。ジョン・ルイスで働き、地元コミュニティに全力で歩み寄り、仲間になろうとする。例え、石を投げられ、罵倒され、決してコミュニティの心の壁が取れることはなくても。

努力の甲斐あり、やがて奥さんと子供たち(アヒアさんのお母さん)がイングランドへ移住できるまでになりますが、失われた長い時間は愛する我が子たちが自分を見て恐れてしまうほどの、大きなダメージとなっていました。さらに月日は流れ、子供たちは巣立ち、アヒアさん誕生。1998年には家族みんなでリビングでGoodness Gracious Me(→大ヒットした2nd Generationのアジア芸人さんたちによるBBCスケッチショー) を鑑賞。おじいさんは2012年にこの世をさります。

自分の意志はガン無視でアレンジされ、出会ったその夜に結ばれた相手を生涯の伴侶と受け入れ、愛し続け、その人と子供のために、単身で知らない国の知らない街で生活する。本当は故郷が大好きで一時たりとも離れたくなんてなかった。だから晩年「今まで自分自身のわがままを通すことができなかったからせめてやりたいことやらせてくれ」と病を患いながらも公害がひどい、確実に病状が悪化する故郷に里帰りを欠かさなかったらしいです。

ショーは、戦後英国社会史における移民社会の重要性と移民史への謳歌です。アヒアさんのおじいさんのような方々がどんな屈辱や苦しみにも負けず、頑張ってきた。イギリス社会の一部になろうと血の滲む努力をしてきた。次の世代の未来が少しでも開けるように。取ってつけたものではなく、イギリス社会の一部へとなり得るように。その努力は確実に次の世代へと受け継がれ、ロンドン市長が、そして今や英国の首相がアジアの移民系でもなれる時代に。アヒアさんも何の障害もなく、いとも自然にアイリッシュの白人の女性と恋に落ち、皆からの温かい支持を受けて結婚できた。

色々問題はある。まだまだ問題はある。だけど、うちのじいちゃんがどれだけ頑張ってくれたことか。

アヒアさんのおじいさんは残念なことにSadiq Khanが市長になった時を見ることができなかったそうです。せめておじいさんが頑張った証が見れたらよかったけれど・・・と。そのためにも、このショーがアワードをとるなりなんなりして、1人でも多くの人がアヒアさんのおじいさん、そしておじいさんのような家族のいる人々すべてへ祈りと想いを寄せくれたらいいなぁと思っています。

映画とかドラマ化でイメージできるくらいのすごいショーでした。

(*1)念の為、戦後イギリスでは経済成長が60年代にどどっと起きる一方、労働力全然足らないため、元Commonwealthの国、特にアジアのインドとパキスタン方面からたくさん移住の斡旋(?)がありました。


2023年8月7日月曜日

Edinburgh Fringe 2023 エディンバラフリンジ2023 思いの外大当たりで幅広くお勧めできるかも。演者にいぢられたくないあなたも100%参加して笑いを取れるFoxdog Studios: Robo Bingo行きました

 これは、幅広くお勧めできそう。めちゃくちゃ楽しみました。

Foxdog Studios : Robo Bingo


https://tickets.edfringe.com/whats-on/foxdog-studios-robo-bingo

ITコンサルタントの2人ならでは。PCプログラミングを駆使したインタラクティヴな爆笑60分でした。まず会場に入ると、会場内専用の Wi-Fiにスマホを繋げさせられ、各自ハンドルネームを入力。会場全員でビンゴを始めます。初めは普通の番号なんですが、ビンゴの途中でお題が表示され、お題に合わせた絵を描かされる。そのうちその絵を使ってのビンゴが始まる。

クイズやら投票やら太鼓でドンみたいな音楽ゲームやらを並行して行いながら、そのクイズ問題や答えが、のちのビンゴ内容になったり、2人の旅行先の(Isle of Manだった)観光名所がビンゴ内容になったり。観光名所の表示の仕方もこの2人がキャラとして画面に登場してて、ハンドシミュレーターゲームで出てくるキャラの動きみたいに、観光名所を踏みに行くんですよ。

クイズやら投票やら抽選やらで当たった客がいろんな役回りもしないといけなくて、オレは、Bingoゲームでビンゴになるはずないのにビンゴをクレームしてアウトになったお客さんの裁判で、議長に選ばれ、ハンマーをバンバン バンバン(不必要に)叩く役やりましたし、友人は書紀としてタイプガンガン打つ役やったり、めちゃくちゃ面白かったです。Vibe的にFlight of the Conchordsっぽかったかな。

ぜひ、クオリティの高い箸休めに!

Fox Studioについては https://foxdogstudios.com/

コーポレートのイベントなどでも大活躍してるみたい。5年前くらいから?



2023年8月6日日曜日

Edinburgh Fringe 2023  エディンバラフリンジ2023 WiPとハンボーなこと言ってるけど、安定のハイクオリティ。完全に終わった絶望の世界に対するレジリエンスについてお届けする1時間、Jordan Brookes: Snakes for Cats to Watch (Work in Progress) 観ました

 

Jordan Brookes: Snakes for Cats to Watch (Work in Progress) 

https://tickets.edfringe.com/whats-on/jordan-brookes-snakes-for-cats-to-watch-work-in-progress


ジョーダン・ブルックスさんについては、絶対見ないといけない、と今まで数々褒め倒しています。

2022年のショー

http://www.gojohnnygogogo2.com/2022/08/edinburgh-fringe-2022-2022-2019jordan.html

2019年(アワード受賞作)のショー

http://www.gojohnnygogogo2.com/2019/08/edinburgh-fringe-2019-jordan-brookes.html

2018年のショー

http://www.gojohnnygogogo2.com/2018/08/edinburgh-fringe-2018-must-seejordan.html


毎回空間スペースの使い方、特にショーに2、3層にレイヤーを持たせ、レイヤー間をシームレスに出たり入ったり行き来するスキルの高さが尋常ではなく、この超ハイレベルを保ち続けるだけで、この芸人さんの色になってしまっているかと思います。

今回は、完全に終わった絶望の世界に対する彼なりの思想というかレジリエンスの持ち方、といったところでしょうか。30代後半、センシティブ白人男性世代の(ギリ、ミレニアムに入るのか)“ねえねえ、公式じゃないけど、どー考えても今アポカリプス真っ盛りだよねぇ。終わっちゃってるよね” という中で、どう過ごすか。生き抜くための模索ではなく、むしろ、生き抜きたいというエネルギーもモチベもない中で、なんだかまだ生きてるんだけど、どうしたらいいの。てか、間違えて生き抜いちゃったらその先に何があるの。もし周囲がみんな死んじゃってて、自分だけ生き抜いちゃったらヤバいやつじゃね?

…という話が、2つのレイヤージョーダンさん個人の体験と時事をもとにした雑感というレイヤーと、映画「タイタニック」を自作アダプテーションしたミュージカル版を上演するというレイヤーの間を行ったり来たりしながら、進行していくんですよ。

タイタニックのミュージカルは披露するけれども、自分はバックグラウンドに登場する端役だから、自分の出番がない時に、ダラダラと駄弁ってる、という設定。彼の話し相手として観客がいるので、すごい唐突に(しかも頻繁に)リアルに壁を乗り越えてきますし、客も越えようとする。あれで、ショーが邪魔されず進行できてるのもすごい。

タイタニック自体の話は誰も知らん人いない。だからいきなり彼に「出番」がきてミュージカル・レイヤーに入っても客は別レイヤーに置きざりにならないんですよ。みんな一緒に移動できちゃうんです。

これでWiPと言われても・・・という完成度です。ちょっとTim Keyみたいな感じかな。オーディエンスとのインタラクションが避けられないので、インタラクションのデータ採集が大量に必要なのかも。

ネタを全部覚えてなくて、後半戦は特に破れかかったネタメモ紙をポッケから取り出して、いちいち確認するんですが、それも考えようによっては演者ジョーダン・ブルックスのレイヤーとして捉えることが全然可能。そのレイヤーにいるときも、笑いを作り出し続けているからです。

SOHO THEATREでプロパーに公演始めるって言ってました。ぜひ見てみてください。ぜひ。




Edinburgh Fringe2023 エディンバラフリンジ2023 悩める白人の20代シスジェンダー(男性)がこのご時世に対応する「男性像」を暗中模索するHoratio Gould: Sweet Prince観ました

 

Horatio Gould: Sweet Prince

https://tickets.edfringe.com/whats-on/horatio-gould-sweet-prince


フリンジデビューらしいです。
パンデミック中にオンラインで、(オレの中で)目立つようになってきた・・・なんですが、フランキー・ボイルのツアーの前座やったとか、ちょっとかわいがられてるみたいなんで、一応そういうことも影響あるとは思いますが、勘で、チェックしておいた方がいいかも、と思って観ました。

(ヴィットリオさんとフィンテイラーさんと誰か1人が作ってるFin vs Internetの誰か1人だったのを観た後に思い出しました)


父親が「息子の将来のため、アッパー・ミドル・クラス的な名前をつけなあかん」とアッパー・ミドル・クラスの人間ならば絶対につけないような、ワーキング・クラスの思考回路だからこその名前を授かったホレイシオくん、26歳。ちなみに父の名はジョン。

このご時世に白人で男性でストレート。
何か!何かカードがあればテレビ出演ももらえるチャンスの門がござったかもなのに、所持カードゼロで門が開かない。男4人でロンドンでフラット・シェアしてるけど、オレ含めて誰も大工仕事ができないよ。修理の助けとしてやってくるヤツもできないよ。これはカードとして使えますか。

彼女います。できてます。セックスで一番男が気持ちいいと感じるのは、アナルだと彼女に口説かれてます。コワイ。でも拒んでホモフォビアみたいに思われたくない。ゲイの友人だっているし! 自分はホモフォビアじゃないって偽善じゃないって証明する方法ってやっぱりアナルを受け入れるしか…

と、確実に15禁なネタでお届けする1時間でした。悩める白人の20代シスジェンダー(男性)がこのご時世に対応する「男性像」を暗中模索する1時間。

オールド・スクール育ちなので、デビューなのにマイク一本のスタンダップだけで、1時間を無駄と思わせないクオリティにまで作り上げているってことだけで評価してしまいがちなんですが、そろそろ慣れないといけないのですかね(汗)その一方で、現場(ライブ)の経験をいかに積んでいるか否かは、確実にライブショーのクオリティに反映される。オンラインベースで知名度を上げてきている若手こそ、(特に)メジャーなハコであるPleasanceで14−5ポンドをチャージして披露するショー作りを、しかもデビューで成し遂げていることをきちんと高評価するべきでは、とも思うのですよ。

結構なボリュームで恋愛ネタがあるのですが、あくまでツールとしてであり、要は「マスキュリニティ」について模索している、というのが、恋愛関係ネタ、特にストレートの恋愛ネタが、ずーっと人気がないため(つまらんから)( *1 ) 干される傾向にある環境下、一回転して新鮮な使い道作り出した印象にあり、ポイント上がりました。

オレが観たのはデビューショーの初日。来年までにどんな変化が出てくるのか、楽しみ、と注目していきたいと思います。

(*1) これについては以前AcasterくんのLasagneのショーの感想の時に書いてます。http://www.gojohnnygogogo2.com/2019/06/james-acaster-cold-lasagne-hates-myself_11.html

Edinburgh Fringe 2023 エディンバラフリンジ2023:ものすごく素晴らしかったのだけど、心配。症状自体は悪化?(汗)Dan Rath: All Quiet Carriage Along the Inner Western Line

 

Dan Rath: All Quiet Carriage Along the Inner Western Line

https://tickets.edfringe.com/whats-on/dan-rath-all-quiet-carriage-along-the-inner-western-line

なにしろ、推しが推してる芸人さんなのと、去年見たCockroach Partyが相当気に入ったのと、今年のメルボルン・コメディ・フェスティバルですでに高評価もらっちゃってるので、もう見る前から素晴らしいのはわかっていたんですが、今年は去年よりもさらに、病みつきになってしまうような、彼の思考回路探訪ツアーでした。

彼のすごいところは、話術だけで、空前絶後の突拍子もない世界を次々とつなげていき、観客にその絵図を描き出してしまえることです。すごい表現力です。基本は、昨年と同じ、「オレ、底辺だから。ここから下はもうないから」っていう立ち位置での徒然草なんですよ。今年は、家すらなくなって、テント生活っていう話になってます。ニューロ・ダイバーシティと実はオレもワタシも・・・がトレンドになっちゃって、元祖診断されて薬もらって療養してた元祖組の居場所がさらになくなっちゃうような終わってる世界で、何も失うものがないガチの底辺にいる→だから思考が制限されない。

スーパーでかかってる音楽を止める時間帯を作って自閉症タイムセール行うのどうよ、とか、宝くじの当選者の金の使い方見てると、生まれながらの超ゲロ金持ちって、絶対金の楽しみ方知らないよね、とか、タイタニックを引き合いに出してニューロダイバーシティの状況を説明しはじめたりとか。(タイタニックとJKローリングは今年もよくきくネタですね)

ジェフリー・ダーマーやテッド・バンディなどの極悪人が人気俳優によって演じられることでスポットライトを浴びちゃってるっていうくだりが、以外にもノーマル思考でお?と思ったくらいかな? 去年よりも、今年の方が楽しめたと思います。彼の奇想天外っぷりを体験済みだったからだと思う。

社交性ゼロの態度だし、コミュニケーションしようもない思考回路なのですが、客に話しかけてくるし、客の共感も得るし、というところも、笑いの要素の一つなんだと思います。

ただですね(汗)去年も彼のメンタルヘルスとセラピストの話はありましたが、去年はそれを上手にコミュ症キャラに使っていたという印象だったのですが、今年は本当に治療とセラピストによってなんとか持ち堪えている、というボディランゲージで、大丈夫かな?とガチで心配になってしまった。この人壊れちゃうかもしれない、という不安が拭えない・・・こんなディストピアンな世界になってしまって、ミレニアム世代のセンシティブな子たちだと身も心もボロボロになっちゃうんでしょうかね。「だ、大丈夫かね 汗」と演者に対して心配してしまうことが多い年です。


Edinburgh Fringe 2023 エディンバラフリンジ2023 アメリカの芸人さんのショーを観まして。感想です。その2 Nick Pupo:Addicted

 稲村がアメリカのライブコメディシーンに疎いことを知る友人(ロンドン在住)から布教され、行ってきました。この2本をお勧めしてくる友人の精神状態を心配すると同時に、2本とも、いくつかの理由で感想を書くと面白いな、と思ったので、アップしたいと思います。

 (はじめは2本いっぺんにと思ったけど、長くなっちゃったので1本1記事にします)


Nick Pupo:Addicted

https://tickets.edfringe.com/whats-on/nick-pupo-addicted


こちらもストーリーテリング・コメディ枠と認識し、タイトルを見ればある程度 予測はつくとは思いますが、彼自身のドラッグ中毒の実体験のお話です。

とはいいつつも、テーマの軸は「真実を語ること」。包み隠さず、嘘をつかず、正直になること、です。

フロリダの郊外での生い立ち、おさなじみとの出会いと、そのおさななじみが大切にしていたハムスターをあやまって殺しちゃうこと。真実を隠して過ごしてしまうこと。

フロリダって子供たちにDEAのドラッグ、ダメ、絶対!的なビデオを見せるんですってね(学校で行うのかな?)それをみて、ドラッグ超こわい!って思う一方、演者さんはかなり早い段階からドラッグを体験する状況に遭うんですね。で、14歳だったかな?から色々はじめてっちゃう。一方、幼なじみは、清く正しく美しい人生を歩んでいくので、ドラッグをやっていることを隠して過ごしていく。ショーは、好奇心と誘惑、最高の(希望のない現実からの)逃避になってしまった経緯、一方で、常に後ろめたい感情と罪悪感に苛まれ、勇気を振り絞って話してみれば、実は状況は改善することもあるのに、上手にできずに翻弄され続けている姿を正直に語っていくものです。

こちらはAvital Ashに比べ、客に語りかけるタイプのプロパーな一人芝居になってました。彼のキャリアのバックグラウンドを知らないけど、スタンダップ芸人と言ってるわりに、ドラマスクール上がりという印象を受けました。

ただですね。パーソナル・レベルでのみストーリーが展開されていくせいで、ドラッグと遭遇したベース環境が、ミドルスクールでの比較的よくあってもおかしくない手合いのものなのか、それとも彼の置かれている生活環境を反映しているものなのか、わからないんですよ。フロリダの社会環境の知識なんて、フロリダ・プロジェクト(映画)とか?ブレイキング・バッドってフロリダ関係あったっけ? っていうレベルだし。こちらも苦しんでいる状況にあり、この作品がtherapy sessionの役割にもなっている演者に対して悪魔みたいな感想を持って、酷すぎるのですが、個人レベルを通して社会観光レベルを見れるよう奥行きを作って欲しかったです。

さらに、こちらも最大の問題点は、コメディの要素が薄すぎる、ということ。本当に申し訳ないのですが、ここ(エディンバラとかグラスゴーとか)に住んでると、中毒で苛まれている方々ってそこそこ身近な話なんですよね。ドライに、ダークに皮肉いっぱいに表現する文化習慣があるし(伝統?)、そこら中にこれをダークユーモアに仕立て上げてる名作もゴロゴロ転がっている。あの例の名作の名をを挙げる必要もないと思います。ドラッグにしろ何にしろドラッグとかアルコールをネタにした作品の水準と笑いの盛り込み方が、他のエリアより異常に高い。深刻な問題である一方、笑えないよね、じゃないんですよね。

印象としては、彼がコメディクラブなどで20分くらい話す中毒ネタの方が面白いんじゃないかなーと思いました。そしてオレの友人もそういうミックス・ビルで彼のネタを見たのかもしれない・・・です。

で、とりあえず、この2本をリストに入れてきた友人のメンタルを気遣いたいと思います。



Edinburgh Fringe 2023 エディンバラフリンジ2023 アメリカの芸人さんのショーを観まして。感想です。その1  アヴィタル・アッシュ: Workshops Her Suicide Note

稲村がアメリカのライブコメディシーンに疎いことを知る友人(ロンドン在住)から布教され、行ってきました。この2本をお勧めしてくる友人の精神状態を心配すると同時に、この2本とも、いくつかの理由で感想を書くと面白いな、と思ったので、アップしたいと思います。

 (はじめは2本いっぺんにと思ったけど、長くなっちゃったので1本1記事にします)

Avital Ash: Workshops Her Suicide Note

https://tickets.edfringe.com/whats-on/avital-ash-workshops-her-suicide-note


フライヤーに「物心ついた時から、常に自殺の思想と鬱と共に生きてきた」というオープニング。子供の頃に実母だと思っていた母親が実は父親の再婚相手で、実母は1歳半の時に自分の前で自殺していた、というかなり衝撃的な展開です。潜在意識の中で虚無感が自分を虫食っていて、死にたいんだけど、まあせめて死ぬときくらいは、明るいトーンで朗らかに、笑いもあったりしながら、さらには希望もあったらいいな。タイトル通り「自殺ノートのワークショップ」で、彼女が生い立ちストーリーを語りながら、ちょっといいセリフや言葉、フレーズを(ピックアップされた書記役の客と)彼女自身がメモって行き、最後にそれをつなげて自殺ノートを作ります。

幼い頃のバックグラウンドに加え、思春期の体験談が、スパイクされてることなんですよ。なぜそんなことをされるような状況に身を置いてしまったのか、といえば、その幼い頃の精神的ダメージがネックになっているのと、彼女の家族環境が厳格なユダヤ教徒にあることですが。しっかり言わないですけど、このくだりで、ガチで演者が涙ぐんでしまうので、被害者になってしまったのだと。

非常に重い話です。厳格なユダヤ教のもと生まれ育つと男女差別も半端ない。被害に遭っても実父には信じてもらえない。また、ホロコーストのトラウマもかかわる。笑いもちょっとだけありますけど、ほぼほぼ1時間とんでもなく心が真っ暗になります。理想の自殺ノートを完成させたいというモチベーションがあるから、生きていられているのかも。という締めくくり後に、ステージ降りた時に、この芸人さん、死んじゃいかねないな、大丈夫かな、と思いました。

ただですね。非常にストレートなストーリーテリングで、客に話しかける形式で、時系列に進んでいく。自殺ノートを作るワークショップ、といっても、フォーマットとしてはネタ帳にメモリながら進行するWiPと変わらないです。こうした構成スタイルでも、1時間のストーリーテリングを客が集中して聴けるクオリティに仕上げている点で、彼女の実力は高いと思うのですが、こうした内容を語るにはあまりに捻りのない、ストレートすぎるストーリーテリングのせいで、メンタル治療という役割を持つ以上の、クリエイティヴ性やアート性が薄い作品…と、こんな内容のショーに向かって悪魔のような感想を持ってしまいました。

こんな感想を持ってしまった理由は、おそらく、というか確実に、ガッドさんのMonkey See Monkey Doとか、Kim NobleのYou Are Not Alone  そしてLullaby for Scavenger(感想アップしてなかった 汗)を観てるからなんですが。やはり、(ダーク)コメディ枠のわりに、何一つ(事実を述べる中で盛り込めれるちょっとしたジョーク以上の)コメディを作り出していないというのも気になりましたね。

どうなんでしょうね。フリンジシアターの知識と鑑賞歴がないから、認識カテゴリーを変えてたらこういうことでもこういうものなのか、わからないんですよね・・・

彼女SNSでエゴサするので、この記事あげるときは、全部カタカナでアップしないといけないな、と(汗)

2023年8月5日土曜日

Edinburgh Fringe 2023 エディンバラフリンジ2023:まだ始まってないのにベストショーを観たかもしれない!星6レベルの大傑作:Kieran HodgesonのBig in Scotland

 強く推します。

https://tickets.edfringe.com/whats-on/kieran-hodgson-big-in-scotland

キエラン・ホジソンに関しては、彼がフリー・フリンジで注目を集めていた頃からずっとレポートを送り続けているし、近年はテレビ(Two Doors Down とかPrince Andrew: The Musicalとか)でも活躍するどころかThe Flashでアメコミ映画デビューもしちゃってるし、パンデミック中は、大人気英国ドラマの登場人物をことごとくモノマネするYOUTUBEクリップがいくつもヴァイラルになっちゃってるので、逆に20代前半からコツコツと全て自分で脚本構成演出して、批評家たちを根こそぎ魅了する一人芝居を作り続けてきた印象はもしかしてもしかしたら、薄れてしまっているのかもしれない・・・のですが、彼は本当にすごいのですよ。

彼はJohn Kearnsと並んで2010年代のフリー・フリンジのブームを巻き起こした人物だと言っても過言ではない…と個人的には思っています。

2015年のショー(アワードにノミネートされてる)↓

http://www.gojohnnygogogo2.com/2015/08/edinburgh-fringe-2015kieran-hodgson.html

2016年のショー(アワードにノミネートされてる。ガッドさんのモンキーがあったのでね、ガッドさんに持ってかれた。これはもうしょうがない)↓ちなみに、このショーでパートナーのスチュワートとの結婚ご報告。わんだふぉー&あどーらぼーがたけなわ。そら黄色い声もあげるわ。

http://www.gojohnnygogogo2.com/2016/08/edinburgh-fringe-festival-2016-kieran.html

2018年のショー:これがBrexitをテーマにしたやつですね。確かこれTV化されましたよね?違いましたっけ?

http://www.gojohnnygogogo2.com/2018/08/edinburgh-fringe-2018-kieran-hodgson-75.html


【今回のお話】

音楽と共にコテコテのタータンジャケットを着て「やあみんな!僕はスコットランド人のキエラン! 生まれ変わってスコットランド人になったキエランなんだよー!」って爽快に登場。みんなが知ってた以前のイングランド人キエランはもういない。壮大な大地の自然と古い伝統がDNAに刻み込まれ、情熱と人情に溢れるスコットランド人なんだ! なぜ現状況に至っているか、これからお話したい・・・。

つまりですね。

ヨークシャー生まれでイングランド育ちのキエラン君は、着々とショービジネス界でキャリアを積み、夢も希望もさらに膨大になり、ロンドンだーハリウッドだー!ってキラキラ(ギラギラ?)してくるわけですよ。そんなある日のこと、BBCのシットコムでレギュラーの話が舞い込んできます。それが、グラスゴーのはずれが舞台に繰り広げられるTwo Doors Down。モノマネ得意なキエランくんですから、「グラスゴーのアクセント問題なくできると思うし、まあいいかな?」と詳細を聞くためにBBCの人と会うのです。するとBBCってもBBCスコットランドだし、この仕事受けるならグラスゴーにしばらく移住しないといけない。ええええ(萎)、なんでギラギラに輝く場所がハリウッド・ロンドンのはずの僕が、グラスゴー(なんぞ)に行かなきゃいけんのよ。っと、なるものの、BBCのシットコムのレギュラーなんて憧れていた仕事の一つ!ということで旦那さんに相談するわけです。すると奇遇にも(彼はクラシック演奏者。これについては2016年のショー、マエストロのリンクを踏んでください)旦那さんもグラスゴーのロイヤルコンサートホールでの仕事の依頼があり、「これは運命!!」とグラスゴーへ。期待を膨らませてスタジオに行くのですが、行ってその場でグラスゴーの「カルチャーの壁」にぶち当たります。で、無意識下に働いていた「おごり」に気づくんですね。そして気づくんです。これか、これだったのか。と。

実はそれと並行して、キエランくんは友人アンディの結婚式に参加し、ベストマンとしてのスピーチを披露したんですね。その時に自分は(プロとして)最高のいいスピーチしたよね、ってドヤってたんですが、終わった後に、衝撃のダメ出しフィードバックを聞いてしまうのです。「キエランってさ、いつもいつも史実責めでマウントかけてくんじゃん。結婚スピーチであんなに史実ぜめでマウントかけてくるってどうよ。全然おもろない」


ええええええええ・・・

キエランくんの中で、この二つの事件がかち合うんです。イングランド人のキエランは史実責めで、マウントかけて悦に入り、この姿勢でスコットランドへ乗り込んで行っていた。違う、そうじゃない。イングランド人の皮を取り去り、マウントかけて悦に入っていた自分を脱ぎ捨て、スコットランド人として新しく!新しく生まれ変わるんだ!!

そして、スコットランド人になるための旅が始まるってやつなんです。


【感想】

何よりすごいのが、お得意の史実ぜめでマウントすることなく、スコットランドのカルチャーの真実をものの見事に描写していることです。それには何が必要かといえば、場所によって違うアクセントや人柄、地元色。イングランド人のスコットランドに対する言動や態度、スコットランド人のイングランド人に対する考え方の表現なんですが。例えば、Two Doors Downで、キエランくんが「スコットランド人できると思う」と軽く言ってみると、相手のプロデューサーが「…イングランド人がスコットランド人をやるってね、とても微妙でね。君がモノマネ上手だってのはもちろん知ってるけど、上手にできるってだけだと、絶対重箱の隅突かれて、コイツイングランド人のくせにスコットランド人できると思ってやってんじゃん、甘く見られたもんだぜ、って見抜かれるのよ…(延々と続く)」ってところとか。ハイランド(Tyndrumというところ)のパブで、オンライン・レッスンまで受けてマスターしたゲーリック語をブイブイ言わせてゲーリック語で注文して、パブのおっさんに「はぁ?」って言われた上に、地元の人が本来の伝統的な発音で地名を発音してないことを指摘して、めっさキレられる、とかw。

これらを登場人物たちを通して描写していくのですが、全部彼1人でやりますからね。Two Doors Downのスタッフ役も、キャストのイレイン・スミス役も、スコットランド人のアイデンティティを模索するための旅の途中で寄った中継点にあるパブのおじさん役も、全部!完璧に作り上げちゃうんですよ。ゲーリック語も含めて。全部。完璧に。見に行った日はプレビューなので地元中心のお客さんたちですが、いちいち絶賛の拍手ですよ。

友人がWiP含めてフリンジが始まる前に3回見てる上に今回もう一回いくらしいんですが(注:わーきゃーではなく普通のギークです)その気持ちもわかります。もう一回見たいもん。

というわけで、ぜひお勧めです。Next Up Comedyにあるのかな?

https://nextupcomedy.com/categories/fringe-2023

あ、ないや。でもこれ、秋以降、SOHO THEATREでもあるんじゃないのかな? 

見れる方はぜひ!!


p.s. 余談ですが、ゲロかわすぎが健在すぎです。マジ、ありえない。まだ20代半ばにしか見えない。肌のピチピチ感が8年前と変わらない。もう33歳くらいなのに。ありえない。たまたまセンター1番前のど真ん中に座ることになってしまったのですが、両隣のご夫婦の奥さんたち(→基本知らない人たち)と「キエラン近くで見るの大歓迎すぎるわー!かーわーいーすーぎー!!!」って無駄に激しく同意し合って盛り上がりました。みんな思ってることは同じ!


2023年8月2日水曜日

Edinburgh Fringe 2023 エディンバラフリンジ2023 昨年フリンジデビューで高評価を叩き出していたVittorio Angeloneさんの新作観ましたWho Do You Think You Are? I Am!

 

https://tickets.edfringe.com/whats-on/vittorio-angelone-who-do-you-think-you-are-i-am

去年見たTranslationで注目しがいがあると思ったので、今年も早々にプレビュー中から行きました。

結論から言って、かなり良かったです。自己アイデンティティという昨年と同じテーマの模索をしているのですが、前回は1920年代のアイルランドが舞台のトランスレーションというお芝居に沿って話を展開していくので、この構成による「縛り」が斬新である一方、ある種ショーの足を引っ張っていた(?)のですが、今回は完全パーソナルな話のみで構成されているので、「アイリッシュ」で「ベルファスト」「家系はイタリアからの移民」で「ロンドン移住」に加え「白人男性」で「シスジェンダー」で「自閉症かもしれない」な「芸人」が、複雑に絡み合う様をかなり上手に表現できてた。なぜ重く仕上げたがらないか、なぜこれだけ持ってるカードを使いこなそうとしないのか、非常に納得がいきました。

Fin vs the Internetを共同執筆してるからFin Taylorさんと同じマインドセットも基盤にあるんだろうなということが如実にわかるようなネタもありましたね。特に4−5年前のFin Taylor さんを一部彷彿とさせました。

 TikTokでSNSハネしてるの?よく理由がわからないのだけど、2日間除いて全部既に完売らしいんですよ。マジでなぜ?? もしもSNSのせいだったら、この先こういうライブができる実力のある芸人さんたちがSNSを使いこなして大したPRもせずとも始まる前からほぼほぼソールドアウト、がニューノーマル(死語)になるのかもしれないですねぇ。


以下はネタバレになっちゃうのかな? とも思うので要注意。

去年新人でかなりハネちゃったせいで、「友達たくさんできた!」と思ってた友達が、全然友達じゃない!どころか陰口叩かれとったっていう話が出まして。このくだりは、いくつかあった凍っちゃうようなジョークの背景にもなってたんで、ただの暴露で終わりじゃないんですが、まあ正直、うげぇ、ってなりましたね…。(ヴィットリオさんのレベルでこんな目に遭ってるなら、推しなんて一体どんな目に遭っていた可能性があるというのだろう… )



2023年8月1日火曜日

Edinburgh Fringe 2023 エディンバラフリンジ2023 メルボルンコメディフェスティバルでは既に大変好評だったやつ、観ました:Tom Ballard: It is I

 

https://tickets.edfringe.com/whats-on/tom-ballard-it-is-i

フリンジは4日から始まるのですが、今週7月31日からプレビューがダラダラ始まっています。このショーはすでに評判が高かったので(ベネットさんが無茶苦茶褒めてた)、プレビューのプレビューみたいな日でも大丈夫だろうと観に行きました。

彼のショーは2016年に観ていて、2019年は時間が取れずに見逃したために、今回は優先順位が上がったと思います。

以前のショーの感想はこちら。http://www.gojohnnygogogo2.com/2016/08/edinburgh-festival-fringe-2016tom.html


今回も、強烈にえぐい描写で無茶苦茶な社会の様子を叫び倒していました。Paramount Plus でトム・バラード・スペシャル配信されてるらしいんですが、誰も知らねー→昨今の配信コンテンツ会社の経営体制&借金背負いまくってる件についてやら、コロナのせいでうっかりすっかりデブ症状が全く治らない件やら(注:前はもっとスッキリしていた)、こんな容姿なのに25歳のアクロバットダンサーの超イケメンなボーイフレンドできちゃってる件やら、そのボーイフレンドがアボリジニっていう件やら…が前半戦。

真剣なお付き合いをしている様子のボーイフレンドの話から、差別問題ネタに入り込んでいくのかな?と思いきや、そこへは踏み込まず、そのまま乗馬の話へ。(体重上限があって乗馬許可されなかったんですって)。過去に散々切り倒してきてるネタだし、すっかりソーシャリストのイメージも浸透されてるから、なのかもしれません。

今回のメインディッシュ的なネタが、エリザベス女王の崩御とそれにまつわるmonarchy なんですよ。正直、ふむ。でした。去年の9月下旬なので、メルボルンコメディフェスティバル(今年の3月)時期なら、まだ旬の素材かもなのですが、今となってはもう1年近く前のことなので。Monarchy自体は王道ネタだし、いくつも名作があるので、時事的な新鮮さを失うと、リスキーな挑戦ではないかな、と思います。ミレニアム世代なので、しゃべるスタイルも含めてヘタをすると内容自体は、ビデオエッセイをやる系の人気TikTokerやYOUTUBERとあんま変わらなくなっちゃう。面白い子たちいますからねぇ。オーストラリアの視点からに特化すれば逆に良かったのかも?とか。

そうはいっても、トム・バラードさんは、客の空気を読み、インタラクティヴに会話をしながら即座にそして見事にネタを調整していく点では、編集で切り刻んで作ったコンテンツを一方通行に配信するTikTokerやYOUTUBERとは一線を画していたかと思います。彼の持つ技術がないために、後者のコンテンツ配信者はライブシーンで大変苦戦し、若い層のお客さんがライブにどんどんどんどん興味がなくなっていく,というのが深刻な問題である中、彼のような才能のある芸人さんにはぜひ頑張ってもらいたいです。

細々した微調整含め、来週後半くらいにはすごくいいシェイプになってるのかな、と思いました。