フリンジで時間とプライオリティのバランスが取れず、後で観れるものは後で観るカテゴリーに入っちゃったやつです。
来週からロンドンでやるので、ぜひ、特にシアタークラスタの人に観てもらいたいですね。
https://sohotheatre.com/shows/colin-hoult-the-death-of-anna-mann/
ロンドン以外は、以下で、ぜひ。
そもそも、Anna Mann/ アナ・マンとは。
ポジション的にはアラン・パートリッジとか、マルセル・ルコントです。
コメディよりの役者さん&作家さん、コリン・ホルトの作り上げたキャラクターです。コリン・ホルトがネトフリのリッキー・ジャーヴェイスのアフター・ライフのS2かS3で投入されてて、大変喜んだ記憶が。ガッツ演劇畑の人という印象。コメディドラマでちょこちょこ出てきてることが多いと思います。ファーガス・クレイグと組んでフリンジでやっていたショー(スケッチコメディとかキャラクター・コメディとか)でそこそこ知られてましたが、ガツンと当たるほどではなく。Anna Mannがコメディ的には彼の出世作&キャラクターです。アナは女優なんですよ。テレビや舞台で活躍してきた女優。
今データ確認のためググったのですが、今回コメディ・アワードでノミネートされちゃったせいで、100%今年の情報しか出てこない・・・。あくまで未承認ですが、自分の記憶が確かなら、Anna Mannって2000年代終わり頃からフリンジではデビューしたはずです。その後は、毎年来てない&ColinHoultとして来ることもあったけど、最低数回はAnna Mannでショーをやってました。イギリスのライブコメディシーンでは、ガッツリ知られている、定評のあるキャラクターです。Anna Mannは、オレは結構前に1回Anna Mannが演技のワークショップやる、っていう手合いのショーを観に行き、パンデミック中のひたすらダベるオンラインショーを観たりしてました。
非常に申し訳ないのですが、成功したキャラクターコメディって、笑いの保証がある一方この保証が仇となり(ある程度どんなもんかわかるので)、いつも一番プライオリティを高くして追いかけなくなっちゃうんですよね。なので、今回は、友人の感想をきいてなければ、どうしても行かなきゃリストに入らなかったんじゃないかと思ってます。口コミ&レビューって大事!
というわけで、感想。
タイトルが、今回で封印しちゃうのかな?と思わせるような「アナ・マンの死」。
「お医者さんに “もうあと4ヶ月しか命がない” って診断されちゃった・・・」と、オートバイオグラフィー的な展開で進行します。良い両親に恵まれず、理解ある姉を心の支えに成長、とあるきっかけで女優業に目覚め(劇場バイトで上演中のステージに紛れ込んでしまった)、キャリアをスタートさせます。一方、男性との色恋沙汰もそこそこ派手で、結婚相手も何回も変わるというプライベートなお話も混ぜつつの、あのTVドラマ、この舞台、あの映画での出演エピソードを過去の栄光的に語って行くんですね。そして今の状況、今の自分にあるもの、そして今自分ができること、先に見えるもの、を模索していく。
実は、
「今回のアナ・マンは、アナ・マンを通してコリンホルト自身のADHDとメンタルヘルスについて物語っていく仕組みにもなってて、めちゃくちゃ深い(→だからオマエも観に行け)」という友人の感想でみたいと思ったので、ついそういう観点からみてしまったのですが、本当にその意味で、素晴らしかったです。
というのも、① アナ・マン
② アナ・マンが回想するときの過去のアナ・マン
③ アナマンが過去に演じて来た役 (つまりアナ・マンが殻をかぶる)
④ コリン・ホルト(アナ・マンの殻を被っている)
という通常よりもレイヤーが多い中をアナ・マンがスルスルとシームレスに移動するんですよ。①ー③に関しては、Colin Houltの卓越した演者としてのスキル、特に(ジョーダン・ブルックスさんにも共通するけど)日本のギャグ漫画にも通じる笑いのインパクトをステージ上で表現できちゃうにあるのですが、すごいのは③と④の移動です。本来④は出ちゃうとアウトじゃないかと思うんです。が、1)アナ・マンもコリン・ホルトも「パフォーマー」であること、そして、2)コリン・ホルトがアナ・マンをやっていることは暗黙の了解であること、この2点のせいだと思うんですけど、見事にスルーっと出たり入ったりするんですよ。
アナ・マンというキャラが世に誕生したときよりも、ジェンダー問題はよりセンシティヴになり、ウォーク世代が激増し、重箱の隅だけフォーカスして突きまくる。「女性」「女優」というキャラをHe/Himの白人の男性がやることへのプレッシャー(注:Colin Hoult がゲイなのかどうかはよくわからないけど彼自身はHe/Him。なぜならショー中に確定する下りがあるから。あと未承認だけど多分お子さんいる)と葛藤や悩みというのが、アナ・マンの創始者とアナ・マン自身とオーバーラップするんですね。今までのあれやこれやの問題は、自分(コリン・ホルト&アナ・マン)が「できなくて当たり前」「問題があるのは自分」からくるものだ思っていたことが、実は ADHDという「病気」のせいだとわかる。しかも業界では乗り遅れ気味の(&コメディ界あるあるな)「病気」で、わかったところで、(ここまで来ちゃってて)どうしろっていうのよ、的な。最後の締め方が感動的で、泣いちゃいましたね。(一番前でw)
ここで、再びのFourth Wall /第四の壁の話ですけどw、アナ・マンもガッツリとステージと観客の一線を超えて来ます。ショーはいつでも客とのインタラクションが重要なポジションをとっている。そもそもあるのかどうかも本当にわからなくなる、シアターとライブコメディの違いとは何か、を改めて考えたくなる作品だと思いました。ぜひより多くの方に見ていただきたいです。