イギリスを主とする海外コメディをガツガツご紹介するブログです。産地直送のイキのよいコメディ情報を独断と偏見でピックアップして(だいたい)絶賛します。***トホホな事情が発生して今まで書いていたGo Johnny Go Go Go を更新できなくなってしまいました(涙)今までの膨大な海外コメディ記事はhttp://komeddy.blog130.fc2.com/です。


2023年8月5日土曜日

Edinburgh Fringe 2023 エディンバラフリンジ2023:まだ始まってないのにベストショーを観たかもしれない!星6レベルの大傑作:Kieran HodgesonのBig in Scotland

 強く推します。

https://tickets.edfringe.com/whats-on/kieran-hodgson-big-in-scotland

キエラン・ホジソンに関しては、彼がフリー・フリンジで注目を集めていた頃からずっとレポートを送り続けているし、近年はテレビ(Two Doors Down とかPrince Andrew: The Musicalとか)でも活躍するどころかThe Flashでアメコミ映画デビューもしちゃってるし、パンデミック中は、大人気英国ドラマの登場人物をことごとくモノマネするYOUTUBEクリップがいくつもヴァイラルになっちゃってるので、逆に20代前半からコツコツと全て自分で脚本構成演出して、批評家たちを根こそぎ魅了する一人芝居を作り続けてきた印象はもしかしてもしかしたら、薄れてしまっているのかもしれない・・・のですが、彼は本当にすごいのですよ。

彼はJohn Kearnsと並んで2010年代のフリー・フリンジのブームを巻き起こした人物だと言っても過言ではない…と個人的には思っています。

2015年のショー(アワードにノミネートされてる)↓

http://www.gojohnnygogogo2.com/2015/08/edinburgh-fringe-2015kieran-hodgson.html

2016年のショー(アワードにノミネートされてる。ガッドさんのモンキーがあったのでね、ガッドさんに持ってかれた。これはもうしょうがない)↓ちなみに、このショーでパートナーのスチュワートとの結婚ご報告。わんだふぉー&あどーらぼーがたけなわ。そら黄色い声もあげるわ。

http://www.gojohnnygogogo2.com/2016/08/edinburgh-fringe-festival-2016-kieran.html

2018年のショー:これがBrexitをテーマにしたやつですね。確かこれTV化されましたよね?違いましたっけ?

http://www.gojohnnygogogo2.com/2018/08/edinburgh-fringe-2018-kieran-hodgson-75.html


【今回のお話】

音楽と共にコテコテのタータンジャケットを着て「やあみんな!僕はスコットランド人のキエラン! 生まれ変わってスコットランド人になったキエランなんだよー!」って爽快に登場。みんなが知ってた以前のイングランド人キエランはもういない。壮大な大地の自然と古い伝統がDNAに刻み込まれ、情熱と人情に溢れるスコットランド人なんだ! なぜ現状況に至っているか、これからお話したい・・・。

つまりですね。

ヨークシャー生まれでイングランド育ちのキエラン君は、着々とショービジネス界でキャリアを積み、夢も希望もさらに膨大になり、ロンドンだーハリウッドだー!ってキラキラ(ギラギラ?)してくるわけですよ。そんなある日のこと、BBCのシットコムでレギュラーの話が舞い込んできます。それが、グラスゴーのはずれが舞台に繰り広げられるTwo Doors Down。モノマネ得意なキエランくんですから、「グラスゴーのアクセント問題なくできると思うし、まあいいかな?」と詳細を聞くためにBBCの人と会うのです。するとBBCってもBBCスコットランドだし、この仕事受けるならグラスゴーにしばらく移住しないといけない。ええええ(萎)、なんでギラギラに輝く場所がハリウッド・ロンドンのはずの僕が、グラスゴー(なんぞ)に行かなきゃいけんのよ。っと、なるものの、BBCのシットコムのレギュラーなんて憧れていた仕事の一つ!ということで旦那さんに相談するわけです。すると奇遇にも(彼はクラシック演奏者。これについては2016年のショー、マエストロのリンクを踏んでください)旦那さんもグラスゴーのロイヤルコンサートホールでの仕事の依頼があり、「これは運命!!」とグラスゴーへ。期待を膨らませてスタジオに行くのですが、行ってその場でグラスゴーの「カルチャーの壁」にぶち当たります。で、無意識下に働いていた「おごり」に気づくんですね。そして気づくんです。これか、これだったのか。と。

実はそれと並行して、キエランくんは友人アンディの結婚式に参加し、ベストマンとしてのスピーチを披露したんですね。その時に自分は(プロとして)最高のいいスピーチしたよね、ってドヤってたんですが、終わった後に、衝撃のダメ出しフィードバックを聞いてしまうのです。「キエランってさ、いつもいつも史実責めでマウントかけてくんじゃん。結婚スピーチであんなに史実ぜめでマウントかけてくるってどうよ。全然おもろない」


ええええええええ・・・

キエランくんの中で、この二つの事件がかち合うんです。イングランド人のキエランは史実責めで、マウントかけて悦に入り、この姿勢でスコットランドへ乗り込んで行っていた。違う、そうじゃない。イングランド人の皮を取り去り、マウントかけて悦に入っていた自分を脱ぎ捨て、スコットランド人として新しく!新しく生まれ変わるんだ!!

そして、スコットランド人になるための旅が始まるってやつなんです。


【感想】

何よりすごいのが、お得意の史実ぜめでマウントすることなく、スコットランドのカルチャーの真実をものの見事に描写していることです。それには何が必要かといえば、場所によって違うアクセントや人柄、地元色。イングランド人のスコットランドに対する言動や態度、スコットランド人のイングランド人に対する考え方の表現なんですが。例えば、Two Doors Downで、キエランくんが「スコットランド人できると思う」と軽く言ってみると、相手のプロデューサーが「…イングランド人がスコットランド人をやるってね、とても微妙でね。君がモノマネ上手だってのはもちろん知ってるけど、上手にできるってだけだと、絶対重箱の隅突かれて、コイツイングランド人のくせにスコットランド人できると思ってやってんじゃん、甘く見られたもんだぜ、って見抜かれるのよ…(延々と続く)」ってところとか。ハイランド(Tyndrumというところ)のパブで、オンライン・レッスンまで受けてマスターしたゲーリック語をブイブイ言わせてゲーリック語で注文して、パブのおっさんに「はぁ?」って言われた上に、地元の人が本来の伝統的な発音で地名を発音してないことを指摘して、めっさキレられる、とかw。

これらを登場人物たちを通して描写していくのですが、全部彼1人でやりますからね。Two Doors Downのスタッフ役も、キャストのイレイン・スミス役も、スコットランド人のアイデンティティを模索するための旅の途中で寄った中継点にあるパブのおじさん役も、全部!完璧に作り上げちゃうんですよ。ゲーリック語も含めて。全部。完璧に。見に行った日はプレビューなので地元中心のお客さんたちですが、いちいち絶賛の拍手ですよ。

友人がWiP含めてフリンジが始まる前に3回見てる上に今回もう一回いくらしいんですが(注:わーきゃーではなく普通のギークです)その気持ちもわかります。もう一回見たいもん。

というわけで、ぜひお勧めです。Next Up Comedyにあるのかな?

https://nextupcomedy.com/categories/fringe-2023

あ、ないや。でもこれ、秋以降、SOHO THEATREでもあるんじゃないのかな? 

見れる方はぜひ!!


p.s. 余談ですが、ゲロかわすぎが健在すぎです。マジ、ありえない。まだ20代半ばにしか見えない。肌のピチピチ感が8年前と変わらない。もう33歳くらいなのに。ありえない。たまたまセンター1番前のど真ん中に座ることになってしまったのですが、両隣のご夫婦の奥さんたち(→基本知らない人たち)と「キエラン近くで見るの大歓迎すぎるわー!かーわーいーすーぎー!!!」って無駄に激しく同意し合って盛り上がりました。みんな思ってることは同じ!


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