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2019年6月11日火曜日

企画構想半年&実行24時間。James Acaster くん最新作Cold Lasagne Hates Myself をSweet Home Ketteringaで観ました!( その2)



チケットなどは こちらから https://www.jamesacaster.com

ショー中にとある肝ネタを通して「お前ら、家帰ってからネタバレすんなよ」というくだりがあって、それは色々な意味でジョークなんだけれども、同時に本当にスポイラーになるのと(いや、実際ニュースになっちゃってたからエイカスターくん知ってて、そこそこ英国のエンタメニュース聞きかじってる人では知らない人はいないと思うんだけど)本気で本人いやなんだろうな、ってのがわからなくもないので、このショーでどんなお話が展開されていたかは、話さずにおきます。

そんなネタバレを一切しない中、 今回の新作について言えることは、Netflixでもおなじみ、Repertoire 連作シリーズの5作目と言えるかと思います。題名はRetoldだと思います。

確かReset, Recap の感想は以前本ブログでアップし、その後Repertoireについては、Comedian's Comedianでのインタビューをレポートしているので、詳しくはそちらをご参照ください。

 このシリーズは、年一本ペースでフリンジそしてUKツアーで展開していたショーをまとめた4本(元は単体)であり、ネトフリのいうところの第1話recogniseは2014年夏になります。この頃はまだComedy is a therapy手法が到来する前。この手法が認知そして受け入れられるようになるのは、2016年の Richard Gadd さんのヘヴィーウエイト傑作&フリンジ大賞受賞作「Monkey See, Monkey Do」から。つまり、当時の(2013−16年夏の)エイカスター君にはavailableなオプションではなかったわけです。

何が言いたいかといますと。

 芸人さんとは往往にして、自分の一番辛くて痛いところをグリグリとほじくって痛めつけてリンチみたいなことをしてネタを作っていくもんであり、そのことは今まであちこちで書き散らかしていたかと思います*。
 その一方で、人間関係、特に恋愛関係を原因の一つとして、メンタルの根底が破壊されれていることをネタにしたショー、というときに、たとえどんなにスキルが高かろうが実際に面白かろうが、「オレも私もあるある」以上になりづらい鬼門エリアなんですね。別記事でも書いた記憶がありますが、2017年のJohn Robins(Hannah Gadsbyと同時受賞の。ちなみにHannah GadsbyもComedy is a therapyのfinest exampleという・・・)が約20年ぶりの成功です。
 そうしたハンディがある環境下、さらには白人のイングランドの独身中上流階級男性という社会的ピラミッドの頂点にいるハンデ(?)も追うエイカスター君が、メンタルで、人間関係で、もっというと恋愛関係で、ボロクソになったことを消化したくてネタを作る時、ストレートにやっても、Classic Scrape レベル以上にはならない。だから彼がRecogniseでやったことは、社会的および政治的観点からも機能する超ナンセンスなストーリーを作り出した。高度にもほどがあるスキルと驚愕の手法であり、天才の名をほしいままにしても当たり前です。
 そんなことを踏まえての、今回のCold Lasagne。これは過去シリーズが形を変えComedy is a therapy手法で語られたものだ、と解釈しています。彼の語る”体験”と”皮肉な運命”は、ラザニアの名にふさわしく幾層にも構成され、マクロ、マイクロ、イギリス社会文化、政治、そして宗教(カトリック教)問題にcatherine wheelのようにバチバチと次々点火していく。最高傑作の一つをまた見たなーと思いました。そしてこれがあって、ようやく彼は心身キャリア共に次に進むのかな?とか。8月に2作目の本が出版されますが、それも2016年の音楽についてですしね。Cold Lasagne見た限りでは、そんな気がしています。

Cold Lasagne ではないものをどうもHackneyで以前公開収録していたようなので、それがどんなものか、楽しみです。

??と思われる方は、今ふっと思い浮かんだ最近の記事が参考になるので、ぜひ

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