もし、リッキー・ジャーヴエィスまたはデヴィッド・ブレントでこのサイトに来ていただいてしまった方へ。この映画には天才作家/芸人で超イケメンのトム・バスデンさんが出演しています。あの、日本でも比較的認知度がありそうな「The Wrong Mans」で2話ほど書いてますし出演してます。ITVで人気のシットコム「Plebs」作ってるし出演してますし、Peep ShowもFresh Meatの作家チームにも入ってますし、でもってブラックユーモア系お芝居も何本か書いてるんです。今度ローリー・キニーアさんとBBCの19世紀の医者のシットコムにメインで出ますし(たぶん1本は書いてる)、自分の経験元にしたE4のシットコム作りますし、それアメリカ版も同時に制作されて放送されますし、んでPlebsもまだ続くんです。詳しくは是非こちらをごらんください。
【というわけで】
本当はデヴィッドブレントの映画など見る気はさらっさら!なかったのですが、バスデンさんが出るとわかってからは、「でかい映画館スクリーンでバスデンさんが映るっていうバスデン史上初のイベントをオレ様レベルのファンが見逃してはいけない」という使命的な何かにかられてしまっておりました。
とはいっても、2分くらいあるトレーラーで
1分21秒に出た
だけだったので、「実はじぇんじぇん出てないんじゃないの?」って疑ってかかって行きました。とりあえず、スクリーン上でばーんと観れたらミッション完了くらいに思って行きました。
【バスデンさんとリッキー・ジャーヴェイスについて】
過去のバスデンさんとリッキージャーヴェイスの関わりについては
ここと、
http://komeddy.blog130.fc2.com/blog-entry-472.html
ここがよろしいかと思います。
http://komeddy.blog130.fc2.com/blog-entry-475.html
【レッドカーペット時のバスデンさんについて】
プロのバスデン・ウォッチャーなので、数少ないインタビュークリップとか聞いたり見たりしていました。んで例えば
— Miki Inamura (@whiteanklesocks) September 1, 2016
のクリップで、ふっつーに受け答えする中にも、バスデン砲弾を必ず飛ばすんですね。この文脈で物事話すなら「デヴィッドブレント」じゃなくて「リッキー・ジャーヴェイス」だろうに、って誰もが突っ込みたくなる。しかもしつこく言い張る。
かつて「The Officeのマーティンフリーマン」と「The OfficeのTim」の文脈で言いきっていたインディーズ文学誌Five Dialsのインタビューを思い出します。
そしてこの音声インタビュー。
ものすっごい守ろうと頑張ってる感が伝わってくるんですが(笑 悲痛の叫びみたいな感じに聞こえるんですが(笑"I can't separate David Brent from human race anymore"— Miki Inamura (@whiteanklesocks) August 14, 2016
Sounds quite... desparate... Basdenさん必死の訴え(爆https://t.co/b0RgtuKmSo via @audioBoom
ていうか、この写真下の超オサレショット、華やかでキャーキャー言うべきなんですが、
このサングラスは何?
ネタじゃないかと疑いたくなります。
【作品のあらすじは】
かつてBBCで放送された「ドキュメンタリードラマ/ドキュソープ」(*ホントはモキュメンタリーですよ)のThe Officeで15分有名人になったデヴィット・ブレント。その後どうしたかといえば、会社を辞めて(人員削減で肩たたきされて)かねてからの野望だったミュージシャンの夢を突き進んでいた、と。でもミュージシャンで身を立てられるわけもなく、再就職(タンポンの営業会社)し、そのお金を音楽活動に当て込んでおったわけです。
そんな中、BBCから「その後のデヴィッド・ブレントを追いかけるドキュメンタリードラマ」企画の話が舞い込んできた、と。そこでデヴィッドはこのチャンスを利用して大きな賭けに挑戦するわけですわ。会社から休暇をもらい(有給が足りず、無給休暇)自腹で、バンドを雇い(演奏してくれる仲間がいないのでお金を払って雇わなければいけない)、自腹でエンジニアを雇い、自腹でツアーバスとホテルの経費を全て出しての”ツアー”を決行。カメラはそのツアーを追いかけます。
【ここからものすごくネタバレるよ!】
【気をつけてね!】
例のドキュメンタリーという名目のモキュメンタリーから早15-6年。デヴィット・ブレントの世界が生み出した”笑い”を同じように繰り返しても新鮮味がなく、改めて持ち出す意味がない。確実に別の切り口が必要であり期待されていたことです。そしてそれは、リッキー・ジャーヴェイスも超承知であり、本作では、確かに別の切り口で「デヴィット・ブレント」が描かれていました。
それは、簡単にまとめちゃうと、「デレク」の延長もしくは同類のスタイルです。あのThe Officeのデヴィッド・ブレントはデレクの世界で起きている問題を(実は)抱えている。そこを救いとってあげて、そこを理解してあげて。彼は弱者なんだから。デヴィッド・ブレントを暖かく見守って支えてあげようよ、っていう話です。
前にも書いたけど、リッキー・ジャーヴェイスは、デヴィッド・ブレンドが生まれる前だか生まれる頃だかに「こういう「笑い」を作りたい」と温めていたことが後の「デレク」となった、と。つまりデヴィッド・ブレントにはもともとこの「デレク」の要素があったのだろうな、ということがはっきりわかりやすく説明され、それが描かれている作品でした。
あまりにもoffensiveでセクハラで人種差別的言動極まりない、陳腐で下世話なジョークばかりを放ち(→面白いと思っているから)みんなにウザい扱いされ、疎まれている。おそらく、我らの知るデヴィッド・ブレントだと思います。前半戦はこれが最たるもので、以前よりも程度が酷くて、アカラサマな言動をこれでもか、と見せつけていきます。
もちろんそんなデヴィッドに友達や真の協力者がいるわけもなく、人に協力してもらうために、お金で買収することにより解決していきます。こんなひどいヤツとは付き合いたくないけど、金払ってくれるなら、しょうがないか、と人々はお金が理由でデヴィッドに関わる。ここら辺から、ちょっとずつチョットずつ空気が不器用な人間、成功者となれない、人生の負け組の物語へと変わっていきます。
実はプロザックとか飲まなきゃいけないくらいうつ病になっていて今も心療科に通ってるとか、後半に進むにつれ「自分のことなんてどーでもいいと誰もが思っている」と知っている様子が見えて行きます。
さらには、誰もがデヴィッドなんて価値がない、見向きもしないしどーでもいいと思っている。何を言ってもいい、どんな扱いをしてもいい、利用してやろーぜ。だってアイツ最低何だから、と彼にリスペクトを取らないことを正当化して堂々と利用したり侮辱したりする人々をフィーチャーすることで「デヴィッドブレントかわいそう」「彼を暖かく見守ってあげようよ。手を差し伸べよう」って展開になって終わるんです。
バスデンさんはスタジオのエンジニア役ダンで、お金で買われてエンジニアとしてツアーに同行する役でしたが、
上記の一般ピープルがデヴィッドと出会い、
①「こいつ最低だから利用してやれ。金だけの関係。金の切れ目が縁の切れ目」の心理から→ ②「こいつ悪気があってひどいヤツなんじゃなくて、本当にわかってなくて酷い言動をしちゃうヤツなんだ」という理解、さらには ③「かわいそう。これ以上、バカな行動に出ないように止めてあげなきゃ」という親切心さらには ④「支えてあげよう」への飛躍を描き出す役柄でした。この映画では非常に重要だったと思います。他にも何人かデヴィットをサポートする役柄の人たちはいたのですが、バスデンさんが、この「拒絶」から「受け入れ」の変化を見せていた。
ちなみに、私は、これ一切笑えなかったです。(鉄板で笑ったのは、バスデンさんのヘアスタイルとバスデンさんのジージャンとバスデンさんの見切れ方)
どのタイプのコメディにも引っかからないかな、という感想です。
デヴィットみたいな人は「人生の弱い者」なのだから、許して暖かく受け入れてあげようよ、っていう姿勢、それを許せない人たちを「人生の強い者」というか「いじめっ子」的評価をすることにも抵抗を感じます。
あと、今までのデヴィットブレントを根底から破壊しちゃってる気もします。このキャラに特に愛着ないのでいいんですが、もともと作り上げたキャラを通して生き続けるアラン・パートリッジやクリス・ライリーの産物が存在する以上、別にキャラを自他共に認める弱者/負け犬に変えなくても、新しい視点でデヴィッドブレントのその後を描くことはできたのではないかと思うんですけどねー