イギリスを主とする海外コメディをガツガツご紹介するブログです。産地直送のイキのよいコメディ情報を独断と偏見でピックアップして(だいたい)絶賛します。***トホホな事情が発生して今まで書いていたGo Johnny Go Go Go を更新できなくなってしまいました(涙)今までの膨大な海外コメディ記事はhttp://komeddy.blog130.fc2.com/です。


2018年10月16日火曜日

祝!(オレ的に)超念願のJames Acaster君Taskmaster 出演記念(?)Repertoireシリーズ第1部Recogniseを観た人へ


PART 1はこちら

Netflixで大絶賛配信中の4部作Repertoireからの一発目Recogniseについてお話させてください。で、観てから読んでください。

エイカスター君のコメディの魅力とは(簡単にざっくりとですが)、ものっすごい真剣勝負で実話のように語るたわいもないホラ話というナンセンスコメディに見せかけながら実は個人の話、社会的な話、国際的・又はもっとコンセプチュアルな話が入り乱れた地層みたいんな構成になってる、っていうところで、その具体例としてこのシリーズの3話目に当たるResetのライブ感想をアップしています

で、本題のRecognise。自分ずっとコメディアンになりすました実はアンダーカバーコップで、こんな生活してるせいもあって、結婚してたんだけどバツイチなんだ、って物語を、捜査の苦労話を元妻との生活や離婚のエピソードをくわえながら、展開します。アンダーカバーコップってカミングアウトしたところでホラ話率、つまりフィクションと実話の境界線のぼかし率めっさ高くなってます。実体験がどれだけどんな形で混ざってるのかよくわからないようになってる。そして一貫して描かれていることは、一つのことをperspectiveを変えると全く逆になったり別物になっちゃうよね、ホントの正体なんでしょね? っつーこと。なので、このRecogniseというのはそこがポイントなのかと思いつつ相変わらずのマルチ・レイヤーな笑いに感動していたのですが。。。

が。

今回の短期エイカスター祭りにつき、色々漁っていたら、Stuart GoldsmithのComedians Comedianで2部構成・全2時間半に渡ってがっつりコメディについて語っているエイカスター回(ここここ)があり、聴いてしまいましてん。プロがプロに語る制作裏話ですから、このRepertoireシリーズについてしっかり説明してくれていて。んで、そしたらですね、このRecogniseは, 当時のガールフレンドと別れたことについて描きたくて作ったっていう、オレ的には衝撃の事実が語られていたんですよ。

ものすごい、びっくりしました。いや、オイラでもある程度素材として彼女と別れたっていう経験は使われているんだとはわかったんですけど(→何しろ頻繁にエイカスター君は「ほんとのことしか喋んない」と豪語している)、まさかまさか、彼女との破局が軸となっている、それがメイン(!)とは全く予想外でした。インタビュー上でエイカスター君はそれが軸・メインだとは絶対にわからないようにしたかった、と語っており、さらに泣かせるのが、エイカスター君と当時のガールフレンドのことをよく知る友人はRecogniseの「I love you but I don't think I know you」というくだりで、辛すぎて泣いたそうです。げええ。マジで? 一般客はあれ見て才能の素晴らしさにウルウルはくるけどそんなところではちっとも来ないぜ、とあわててこの件を知った後に見直したら、結構重いじゃああああん(辛)ちょっとゴッホの最後の作品が自殺前に描いたという事実を知る知らないでは全く印象がことなるよってJohn BergerのWays of Seeingnに書いてあったのを思い出したくらい強烈な事実発覚ですた。

すげいな、と。これが才能というものなのか、と。
あの、破局だろうとラブラブだろうとロマンスネタってこないだのジョン・ロビンスがおそらく20年ぶり*にもてはやされた後、再び、避けネタに大逆転というくらい、鬼門ネタの一つだと思います。でね、まず、そこに思いっきり実は切り込んでいってたショーだったわけですよ。さらには、ロマンスネタメインだったと全くわからない超エイカスター仕上がりになっていた。

というわけでエイカスター君、万歳。皆さんももっかいRecognise見て見てください。

*オレの知る限りではストレートにロマンスがテーマでコメディトレンドになった英ライブのスタンダップは1997年のエド・バーンのショー以来ないです