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2022年8月11日木曜日

Edinburgh Fringe 2022/エディンバラ・フリンジ2022 もはやこれはシェイクスピア・ルネッサンス。いかにもなフリンジらしい体験ができます。Thom Tuck and Tim FitzHigham: Macbeth ついに観ました!

ここ数年、limited runでやってるのですよ。もっとハネていい代物なのだけど、何しろPRとかまともにできない人たちでやってるので、知る人ぞ知る(というか超ニッチなコメディ・サークル)の範囲を超えられない・・・それが トムさんとティムさん制作による例のシェイクスピア・スコティッシュ悲劇です。

Thom Tuck and Tim FitzHigham: Macbeth

https://underbellyedinburgh.co.uk/event/thom-tuck-and-tim-fitzhigham


1)(というか)トムさんとティムさんって誰よ。

Thom Tuckさんは 結構レポートしてます。一回祭ったことがあるので(なんと10年近く前だよ)簡潔にいうと15年以上前にThe Penny Dreadfulsというトリオでフリンジを盛り上げまして、その前後でソロ活動もやってまして、どっちかっていうとトムタックさんは、芝居よりでも活動を多くしていて、観てるのはスタンダップよりも芝居系のほうが多いです。オルタナティヴ・コメディ・ソサエティを運営してる人の1人です。(名誉会員になったかもしれないけど)ショーの演出よくやってます。

Tim Fizhighamさんもぽろぽろ話してます。しかししっかり感想記事を書いたのは11年も前だった・・・ 大丈夫、基本こういう芸人さんです。年とったけどやってること変わらん。


【内容は・・・】

(いや、マクベスなんで(汗)。マクベスの説明はしませんです・・・)

1。毎日ですね、フリンジにいる誰かをとっつかまえて演出家として招待し、その人の指示通りにマクベスやります。ほんとに言われた通りに従ってやります。

2。ショーはもちろん1時間枠です。1時間で2時間半のマクベスを終わらせます。無理やり終わらせます。ゲスト演出家も演者の二人も時間内に終わらせることをつねに気にしますので、芝居が終わらずに終わるということがありません。

3。マクベスを2人だけで演じます。いや、マクベスの一人芝居ってアラン・カミングが昔やったけど、そういうことじゃなくて、ふつうのマクベスを2人だけで演じます。だから例えば1シーンで1人が魔女やってバンクオーやって夫人やるんです。超ベーシックに衣装とかカツラとか変えてやるんです。

【感想】

毎日違うゲスト演出家を迎えるので、あたりはずれがあるかも?と思いきや、とんでもないですね。これはお金と時間があれば毎回とんでもないバージョンのマクベスが堪能できます。オレが観たバージョンは二度とないと思うので、ネタバレしますね。

まずゲストの演出家が当たりだった。Comedy StoreとかでずっとPaul Mertonとかと即興コメディやり続けてきたRichart Vranchだったので、チームワークで展開する即興のエキスパートだったんです。

トムとティムの無駄話ですでに8分ロスしているなかようやく紹介されて登場。ディレクターチェアという舞台袖でろくすっぽライトも照らされないポジションに座らされ、マクベス開始。

「いやさ、テレビシリーズとかで何シーズンもあるみたいな調子で5幕もやってらんねー。てか、ボックス・セットってなに?シーズンがハコになってるんじゃなくてシーズンがハコになってるんだからBoxed Setって呼ぶべきでしょ。そんなわけで、今の時代に5幕もやってらんない。若い層にもアピールできるように、キャッチ―で尺短くて、歌って踊って、リップシンクで1幕目はやるべき」と魔女役のトムさんが舞台袖で音楽かけて歌うティムさんに合わせてリップシンクで冒頭シーンを展開。ここでじかんがすでに半分近く使われちゃって、その後一気に一幕目の最後へ。1幕目のおさらいと2幕目のティーザーを演じることで1幕目をカバーします。(これまでのお話・・・ってやつですね)

とにかく「短く短くキャッチ―に」が演出の方向性なので、すっ飛ばすのが全部オッケーに。

2幕目に入ることにはすでに残り20分。前にいるお客さんにプラスチックの斧持たせて、ダガーにみたて、マクベス苦悩しながらも覚醒するシーン。とにかく時間がないので、ダンカンが殺されるシーンも、部下殺されるシーンも、バンクォ殺されるシーンも、夫人が狂っちゃって死んじゃうシーンも、全部舞台袖の見えないところで叫ぶだけで終わり。いいんです。じっくりやるのは今の時代にあわないんで、飛ばしちゃえばいいんです。

そんなこんなで残りもう8分。最後のクライマックスもやる時間なんかありません。「キャッチ―に纏め的にクライマックスを歌って説明して締めちゃうべきだと思う!」と名演出家の指示に従い、ティムさんギターを取り出し、ちゃらーん。その音色が、どうにもメキシカン。なぜそんな音を奏でる!という突っ込みも脳内でできる前に演出家が「それ、いいねぇ! トーンが明るくてキャッチ―! スペイン語でやっちゃおうか」とスペイン語を指示だし。一方、スペイン語まともにわかる演者ゼロ。無情なまでにメキシカンサウンドが奏でられるなか、うる覚えのスペイン語で、「おバカどもの、おーはーなーしいいいいい」と繰り返し、じゃんじゃかじゃんじゃかギターひいて終了・・・。

こんなマクベスみたことあるか、っていうマクベスでした。でもちゃんとマクベスやってたし終わってました。1時間で。これはもうシェイクスピア劇のルネッサンスだと思います。ぜひキャッチしてください。レビューとかどーでもいいレベルで、フリンジならではの最高な体験ができるかと思います。




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