イギリスを主とする海外コメディをガツガツご紹介するブログです。産地直送のイキのよいコメディ情報を独断と偏見でピックアップして(だいたい)絶賛します。***トホホな事情が発生して今まで書いていたGo Johnny Go Go Go を更新できなくなってしまいました(涙)今までの膨大な海外コメディ記事はhttp://komeddy.blog130.fc2.com/です。


2023年8月6日日曜日

Edinburgh Fringe 2023  エディンバラフリンジ2023 WiPとハンボーなこと言ってるけど、安定のハイクオリティ。完全に終わった絶望の世界に対するレジリエンスについてお届けする1時間、Jordan Brookes: Snakes for Cats to Watch (Work in Progress) 観ました

 

Jordan Brookes: Snakes for Cats to Watch (Work in Progress) 

https://tickets.edfringe.com/whats-on/jordan-brookes-snakes-for-cats-to-watch-work-in-progress


ジョーダン・ブルックスさんについては、絶対見ないといけない、と今まで数々褒め倒しています。

2022年のショー

http://www.gojohnnygogogo2.com/2022/08/edinburgh-fringe-2022-2022-2019jordan.html

2019年(アワード受賞作)のショー

http://www.gojohnnygogogo2.com/2019/08/edinburgh-fringe-2019-jordan-brookes.html

2018年のショー

http://www.gojohnnygogogo2.com/2018/08/edinburgh-fringe-2018-must-seejordan.html


毎回空間スペースの使い方、特にショーに2、3層にレイヤーを持たせ、レイヤー間をシームレスに出たり入ったり行き来するスキルの高さが尋常ではなく、この超ハイレベルを保ち続けるだけで、この芸人さんの色になってしまっているかと思います。

今回は、完全に終わった絶望の世界に対する彼なりの思想というかレジリエンスの持ち方、といったところでしょうか。30代後半、センシティブ白人男性世代の(ギリ、ミレニアムに入るのか)“ねえねえ、公式じゃないけど、どー考えても今アポカリプス真っ盛りだよねぇ。終わっちゃってるよね” という中で、どう過ごすか。生き抜くための模索ではなく、むしろ、生き抜きたいというエネルギーもモチベもない中で、なんだかまだ生きてるんだけど、どうしたらいいの。てか、間違えて生き抜いちゃったらその先に何があるの。もし周囲がみんな死んじゃってて、自分だけ生き抜いちゃったらヤバいやつじゃね?

…という話が、2つのレイヤージョーダンさん個人の体験と時事をもとにした雑感というレイヤーと、映画「タイタニック」を自作アダプテーションしたミュージカル版を上演するというレイヤーの間を行ったり来たりしながら、進行していくんですよ。

タイタニックのミュージカルは披露するけれども、自分はバックグラウンドに登場する端役だから、自分の出番がない時に、ダラダラと駄弁ってる、という設定。彼の話し相手として観客がいるので、すごい唐突に(しかも頻繁に)リアルに壁を乗り越えてきますし、客も越えようとする。あれで、ショーが邪魔されず進行できてるのもすごい。

タイタニック自体の話は誰も知らん人いない。だからいきなり彼に「出番」がきてミュージカル・レイヤーに入っても客は別レイヤーに置きざりにならないんですよ。みんな一緒に移動できちゃうんです。

これでWiPと言われても・・・という完成度です。ちょっとTim Keyみたいな感じかな。オーディエンスとのインタラクションが避けられないので、インタラクションのデータ採集が大量に必要なのかも。

ネタを全部覚えてなくて、後半戦は特に破れかかったネタメモ紙をポッケから取り出して、いちいち確認するんですが、それも考えようによっては演者ジョーダン・ブルックスのレイヤーとして捉えることが全然可能。そのレイヤーにいるときも、笑いを作り出し続けているからです。

SOHO THEATREでプロパーに公演始めるって言ってました。ぜひ見てみてください。ぜひ。




Edinburgh Fringe2023 エディンバラフリンジ2023 悩める白人の20代シスジェンダー(男性)がこのご時世に対応する「男性像」を暗中模索するHoratio Gould: Sweet Prince観ました

 

Horatio Gould: Sweet Prince

https://tickets.edfringe.com/whats-on/horatio-gould-sweet-prince


フリンジデビューらしいです。
パンデミック中にオンラインで、(オレの中で)目立つようになってきた・・・なんですが、フランキー・ボイルのツアーの前座やったとか、ちょっとかわいがられてるみたいなんで、一応そういうことも影響あるとは思いますが、勘で、チェックしておいた方がいいかも、と思って観ました。

(ヴィットリオさんとフィンテイラーさんと誰か1人が作ってるFin vs Internetの誰か1人だったのを観た後に思い出しました)


父親が「息子の将来のため、アッパー・ミドル・クラス的な名前をつけなあかん」とアッパー・ミドル・クラスの人間ならば絶対につけないような、ワーキング・クラスの思考回路だからこその名前を授かったホレイシオくん、26歳。ちなみに父の名はジョン。

このご時世に白人で男性でストレート。
何か!何かカードがあればテレビ出演ももらえるチャンスの門がござったかもなのに、所持カードゼロで門が開かない。男4人でロンドンでフラット・シェアしてるけど、オレ含めて誰も大工仕事ができないよ。修理の助けとしてやってくるヤツもできないよ。これはカードとして使えますか。

彼女います。できてます。セックスで一番男が気持ちいいと感じるのは、アナルだと彼女に口説かれてます。コワイ。でも拒んでホモフォビアみたいに思われたくない。ゲイの友人だっているし! 自分はホモフォビアじゃないって偽善じゃないって証明する方法ってやっぱりアナルを受け入れるしか…

と、確実に15禁なネタでお届けする1時間でした。悩める白人の20代シスジェンダー(男性)がこのご時世に対応する「男性像」を暗中模索する1時間。

オールド・スクール育ちなので、デビューなのにマイク一本のスタンダップだけで、1時間を無駄と思わせないクオリティにまで作り上げているってことだけで評価してしまいがちなんですが、そろそろ慣れないといけないのですかね(汗)その一方で、現場(ライブ)の経験をいかに積んでいるか否かは、確実にライブショーのクオリティに反映される。オンラインベースで知名度を上げてきている若手こそ、(特に)メジャーなハコであるPleasanceで14−5ポンドをチャージして披露するショー作りを、しかもデビューで成し遂げていることをきちんと高評価するべきでは、とも思うのですよ。

結構なボリュームで恋愛ネタがあるのですが、あくまでツールとしてであり、要は「マスキュリニティ」について模索している、というのが、恋愛関係ネタ、特にストレートの恋愛ネタが、ずーっと人気がないため(つまらんから)( *1 ) 干される傾向にある環境下、一回転して新鮮な使い道作り出した印象にあり、ポイント上がりました。

オレが観たのはデビューショーの初日。来年までにどんな変化が出てくるのか、楽しみ、と注目していきたいと思います。

(*1) これについては以前AcasterくんのLasagneのショーの感想の時に書いてます。http://www.gojohnnygogogo2.com/2019/06/james-acaster-cold-lasagne-hates-myself_11.html

Edinburgh Fringe 2023 エディンバラフリンジ2023:ものすごく素晴らしかったのだけど、心配。症状自体は悪化?(汗)Dan Rath: All Quiet Carriage Along the Inner Western Line

 

Dan Rath: All Quiet Carriage Along the Inner Western Line

https://tickets.edfringe.com/whats-on/dan-rath-all-quiet-carriage-along-the-inner-western-line

なにしろ、推しが推してる芸人さんなのと、去年見たCockroach Partyが相当気に入ったのと、今年のメルボルン・コメディ・フェスティバルですでに高評価もらっちゃってるので、もう見る前から素晴らしいのはわかっていたんですが、今年は去年よりもさらに、病みつきになってしまうような、彼の思考回路探訪ツアーでした。

彼のすごいところは、話術だけで、空前絶後の突拍子もない世界を次々とつなげていき、観客にその絵図を描き出してしまえることです。すごい表現力です。基本は、昨年と同じ、「オレ、底辺だから。ここから下はもうないから」っていう立ち位置での徒然草なんですよ。今年は、家すらなくなって、テント生活っていう話になってます。ニューロ・ダイバーシティと実はオレもワタシも・・・がトレンドになっちゃって、元祖診断されて薬もらって療養してた元祖組の居場所がさらになくなっちゃうような終わってる世界で、何も失うものがないガチの底辺にいる→だから思考が制限されない。

スーパーでかかってる音楽を止める時間帯を作って自閉症タイムセール行うのどうよ、とか、宝くじの当選者の金の使い方見てると、生まれながらの超ゲロ金持ちって、絶対金の楽しみ方知らないよね、とか、タイタニックを引き合いに出してニューロダイバーシティの状況を説明しはじめたりとか。(タイタニックとJKローリングは今年もよくきくネタですね)

ジェフリー・ダーマーやテッド・バンディなどの極悪人が人気俳優によって演じられることでスポットライトを浴びちゃってるっていうくだりが、以外にもノーマル思考でお?と思ったくらいかな? 去年よりも、今年の方が楽しめたと思います。彼の奇想天外っぷりを体験済みだったからだと思う。

社交性ゼロの態度だし、コミュニケーションしようもない思考回路なのですが、客に話しかけてくるし、客の共感も得るし、というところも、笑いの要素の一つなんだと思います。

ただですね(汗)去年も彼のメンタルヘルスとセラピストの話はありましたが、去年はそれを上手にコミュ症キャラに使っていたという印象だったのですが、今年は本当に治療とセラピストによってなんとか持ち堪えている、というボディランゲージで、大丈夫かな?とガチで心配になってしまった。この人壊れちゃうかもしれない、という不安が拭えない・・・こんなディストピアンな世界になってしまって、ミレニアム世代のセンシティブな子たちだと身も心もボロボロになっちゃうんでしょうかね。「だ、大丈夫かね 汗」と演者に対して心配してしまうことが多い年です。


Edinburgh Fringe 2023 エディンバラフリンジ2023 アメリカの芸人さんのショーを観まして。感想です。その2 Nick Pupo:Addicted

 稲村がアメリカのライブコメディシーンに疎いことを知る友人(ロンドン在住)から布教され、行ってきました。この2本をお勧めしてくる友人の精神状態を心配すると同時に、2本とも、いくつかの理由で感想を書くと面白いな、と思ったので、アップしたいと思います。

 (はじめは2本いっぺんにと思ったけど、長くなっちゃったので1本1記事にします)


Nick Pupo:Addicted

https://tickets.edfringe.com/whats-on/nick-pupo-addicted


こちらもストーリーテリング・コメディ枠と認識し、タイトルを見ればある程度 予測はつくとは思いますが、彼自身のドラッグ中毒の実体験のお話です。

とはいいつつも、テーマの軸は「真実を語ること」。包み隠さず、嘘をつかず、正直になること、です。

フロリダの郊外での生い立ち、おさなじみとの出会いと、そのおさななじみが大切にしていたハムスターをあやまって殺しちゃうこと。真実を隠して過ごしてしまうこと。

フロリダって子供たちにDEAのドラッグ、ダメ、絶対!的なビデオを見せるんですってね(学校で行うのかな?)それをみて、ドラッグ超こわい!って思う一方、演者さんはかなり早い段階からドラッグを体験する状況に遭うんですね。で、14歳だったかな?から色々はじめてっちゃう。一方、幼なじみは、清く正しく美しい人生を歩んでいくので、ドラッグをやっていることを隠して過ごしていく。ショーは、好奇心と誘惑、最高の(希望のない現実からの)逃避になってしまった経緯、一方で、常に後ろめたい感情と罪悪感に苛まれ、勇気を振り絞って話してみれば、実は状況は改善することもあるのに、上手にできずに翻弄され続けている姿を正直に語っていくものです。

こちらはAvital Ashに比べ、客に語りかけるタイプのプロパーな一人芝居になってました。彼のキャリアのバックグラウンドを知らないけど、スタンダップ芸人と言ってるわりに、ドラマスクール上がりという印象を受けました。

ただですね。パーソナル・レベルでのみストーリーが展開されていくせいで、ドラッグと遭遇したベース環境が、ミドルスクールでの比較的よくあってもおかしくない手合いのものなのか、それとも彼の置かれている生活環境を反映しているものなのか、わからないんですよ。フロリダの社会環境の知識なんて、フロリダ・プロジェクト(映画)とか?ブレイキング・バッドってフロリダ関係あったっけ? っていうレベルだし。こちらも苦しんでいる状況にあり、この作品がtherapy sessionの役割にもなっている演者に対して悪魔みたいな感想を持って、酷すぎるのですが、個人レベルを通して社会観光レベルを見れるよう奥行きを作って欲しかったです。

さらに、こちらも最大の問題点は、コメディの要素が薄すぎる、ということ。本当に申し訳ないのですが、ここ(エディンバラとかグラスゴーとか)に住んでると、中毒で苛まれている方々ってそこそこ身近な話なんですよね。ドライに、ダークに皮肉いっぱいに表現する文化習慣があるし(伝統?)、そこら中にこれをダークユーモアに仕立て上げてる名作もゴロゴロ転がっている。あの例の名作の名をを挙げる必要もないと思います。ドラッグにしろ何にしろドラッグとかアルコールをネタにした作品の水準と笑いの盛り込み方が、他のエリアより異常に高い。深刻な問題である一方、笑えないよね、じゃないんですよね。

印象としては、彼がコメディクラブなどで20分くらい話す中毒ネタの方が面白いんじゃないかなーと思いました。そしてオレの友人もそういうミックス・ビルで彼のネタを見たのかもしれない・・・です。

で、とりあえず、この2本をリストに入れてきた友人のメンタルを気遣いたいと思います。



Edinburgh Fringe 2023 エディンバラフリンジ2023 アメリカの芸人さんのショーを観まして。感想です。その1  アヴィタル・アッシュ: Workshops Her Suicide Note

稲村がアメリカのライブコメディシーンに疎いことを知る友人(ロンドン在住)から布教され、行ってきました。この2本をお勧めしてくる友人の精神状態を心配すると同時に、この2本とも、いくつかの理由で感想を書くと面白いな、と思ったので、アップしたいと思います。

 (はじめは2本いっぺんにと思ったけど、長くなっちゃったので1本1記事にします)

Avital Ash: Workshops Her Suicide Note

https://tickets.edfringe.com/whats-on/avital-ash-workshops-her-suicide-note


フライヤーに「物心ついた時から、常に自殺の思想と鬱と共に生きてきた」というオープニング。子供の頃に実母だと思っていた母親が実は父親の再婚相手で、実母は1歳半の時に自分の前で自殺していた、というかなり衝撃的な展開です。潜在意識の中で虚無感が自分を虫食っていて、死にたいんだけど、まあせめて死ぬときくらいは、明るいトーンで朗らかに、笑いもあったりしながら、さらには希望もあったらいいな。タイトル通り「自殺ノートのワークショップ」で、彼女が生い立ちストーリーを語りながら、ちょっといいセリフや言葉、フレーズを(ピックアップされた書記役の客と)彼女自身がメモって行き、最後にそれをつなげて自殺ノートを作ります。

幼い頃のバックグラウンドに加え、思春期の体験談が、スパイクされてることなんですよ。なぜそんなことをされるような状況に身を置いてしまったのか、といえば、その幼い頃の精神的ダメージがネックになっているのと、彼女の家族環境が厳格なユダヤ教徒にあることですが。しっかり言わないですけど、このくだりで、ガチで演者が涙ぐんでしまうので、被害者になってしまったのだと。

非常に重い話です。厳格なユダヤ教のもと生まれ育つと男女差別も半端ない。被害に遭っても実父には信じてもらえない。また、ホロコーストのトラウマもかかわる。笑いもちょっとだけありますけど、ほぼほぼ1時間とんでもなく心が真っ暗になります。理想の自殺ノートを完成させたいというモチベーションがあるから、生きていられているのかも。という締めくくり後に、ステージ降りた時に、この芸人さん、死んじゃいかねないな、大丈夫かな、と思いました。

ただですね。非常にストレートなストーリーテリングで、客に話しかける形式で、時系列に進んでいく。自殺ノートを作るワークショップ、といっても、フォーマットとしてはネタ帳にメモリながら進行するWiPと変わらないです。こうした構成スタイルでも、1時間のストーリーテリングを客が集中して聴けるクオリティに仕上げている点で、彼女の実力は高いと思うのですが、こうした内容を語るにはあまりに捻りのない、ストレートすぎるストーリーテリングのせいで、メンタル治療という役割を持つ以上の、クリエイティヴ性やアート性が薄い作品…と、こんな内容のショーに向かって悪魔のような感想を持ってしまいました。

こんな感想を持ってしまった理由は、おそらく、というか確実に、ガッドさんのMonkey See Monkey Doとか、Kim NobleのYou Are Not Alone  そしてLullaby for Scavenger(感想アップしてなかった 汗)を観てるからなんですが。やはり、(ダーク)コメディ枠のわりに、何一つ(事実を述べる中で盛り込めれるちょっとしたジョーク以上の)コメディを作り出していないというのも気になりましたね。

どうなんでしょうね。フリンジシアターの知識と鑑賞歴がないから、認識カテゴリーを変えてたらこういうことでもこういうものなのか、わからないんですよね・・・

彼女SNSでエゴサするので、この記事あげるときは、全部カタカナでアップしないといけないな、と(汗)