イギリスを主とする海外コメディをガツガツご紹介するブログです。産地直送のイキのよいコメディ情報を独断と偏見でピックアップして(だいたい)絶賛します。***トホホな事情が発生して今まで書いていたGo Johnny Go Go Go を更新できなくなってしまいました(涙)今までの膨大な海外コメディ記事はhttp://komeddy.blog130.fc2.com/です。


2024年3月18日月曜日

最近観たイギリスのライブコメディの感想その1。James Acaster: Hecklers Welcome 観ました(2024年2月22日のエディンバラ編)

こんにちは。

正月明けた1月に、法事が主な理由で里帰りしてましたが(注:お会いした方々お世話になりました)ほぼほぼジェイムズ・エイカスター最新ツアーのために、本来は1カ月くらい日本滞在したかったところを、3週間弱に切り上げて現実世界に帰ってきました。

その後も、週に1-2本のペースで昨年のフリンジで取りこぼした話題のショーを見に行っていたので、忘備録をつけておかないと、ネタも感想も忘れてしまうと思い、アップにいたります。

オーストラリア在住の方、これからメルボルン等でコメディフェスティバルが開催されるにあたり、ご参考にしていただければ、幸・・・と思ったら、(あれ?今年行かないの? アレ?)

ちなみに2023年のエディンバラフリンジでみたものの感想はこちら


James Acaster: Hecklers Welcome (→UKチケットはんばい中)


先日NY行ってた時に出演したSeth Meyers。もうNY公演は終わっちゃってると思う・・・


【背景的な話と、なんでこんなショー・タイトルになったかについて】

エイカスターくんは、(イギリスだけじゃなくて)英語圏を中心に大きな劇場をお客さんでパンパンにする芸人さんになっているのに、まだJosh Widdicombeのラジオ番組のサイドキックとしてClassic Scrapesの素材をぶちまけていたパーソナと親近感を維持しており、それが魅力と才能とすごさの1つであります。

その一方(ビッグになる過程ではあるあるな話かと思うのですが)、そのせいでオーディエンスのクオリティコントロールのハードルが他の芸人さんより高くなっちゃってるんじゃないかな、と(*1)。

詳しくは今までのオレの忘備録を全部ひっくり返して読んでくださいレベルの「スタンダップ」とは?という規模のデカい話になってしまうんですが。

客層と規模が広がることによって「スタンダップ・ショー」の認識の違いや経験度の違いにズレが生じてきちゃって、ショーの最中に不適切に客にからまれちゃう事件の発生率が高くなっちゃう。

エイカスター・コメディは一語一句、一本一本のネタが蜘蛛の巣のように、ものすっごい 緻密に計算&構築されていて、各フレーズ、1ネタでも機能しそれがクラスタとなっても機能し、さらには全部が収束して1作のアートになり、その1作1作のアートが連作にもなりうるんです。マジで、ゴッドなんです。

その神ショーが観れるのは、その過程に素人の外部がちゃちゃ入れないとき(*2)

しかしこれは、ガチのライブコメディファンの思いであり、現在の規模の客層を魅了する今、その割合ってのは50%以下かと思います。

(満を持して)ドン!ハネし、大きな劇場を数十分でほぼ完売しちゃうレベルに達しちゃったエイカスターくんは、(おそらく今まで以上に)オーディエンスに絡まれる目にあい、そのたびにブチ切れて、コテンパンにその客を叩きのめして(暴力じゃなくて言葉です)、Taskmasterでエイカスター入門したファンはドン引きするなか、ショーマストゴーオン(*3)。で、終了後我に返って、お客さんに悪いことした・・・ってゲロ落ち込む(→基本いい人。じゃないとこんな天才にはなれない)

そんな経験を繰り返すうちにエイカスターくんは、はたと真実に気づくのです。

「オレ、スタンダップ嫌いだったんだ!」

今までずっとスタンダップ・コメディアンとして成功したいと思って頑張ってきたんで全然気が付かなかった!!

ときは運よく(?)パンデミック。ライブをやっちゃいけない状況で、大手を振ってライブやらずに幸せな日々を過ごすエイカスターくん(*4)しかしその一方で、スタンダップコメディアンが自分のアイデンティティでもあり、切っても切れない仲であることも骨の髄までわかってるんです。

時はさらにながれ、世間は元に戻るなか、エイカスターが目指すべきは、彼のライブコメディにおける負のサイクルからの脱出。つまり、ショーが思い通りに進まなくてもハッピーでいられたらいいんです。というわけで、今回のショーが「お客さん、どうぞどんどん!絡んでください。このショーは、お客さんにどれだけ野次を飛ばしてもいいショーです。エイカスターは邪魔されても絡まれても絶対に怒ってはいけない。それどころか、にこやかに対応しないといけません」というものになったわけです。

二部構成。インターバル20分でした。1部でこのショーが出来た背景と、幼少から「人前に立って話す」ことを職業とする今までの自分とスタンダップの愛憎エピソードを語り、糸をあちこちに張り巡らせたところで、後半でいっきに紡いでいく、というものなんだという印象を持ちました。

【感想】

「印象を持ちました」と書いているように、どのように糸を張り巡らせたか、その糸は計画通りに全部張られているのか。後半でどうやって紡いでいくのか、出来上がる作品はどんな形やデザインなのか。

全然わからないやつに観に行っちゃいました(号泣)

ガチのコメディ・ファン、ガチのエイカスター・コメディのファンとっては、当たりはずれが激しいショーかと思います。

厳密にいうと、前半はオッケーでした。まだ会場が「ショーを観よう」の空気で、絡まれるのも話の内容に沿っていた(*5)ので、エイカスター話の続きが聞ける状態だったし、その場だからこその、インタラクティヴ性から笑いも生まれていた。好みはさておき、タイトル通りのバランスのとれたショーになっていたと思います。

ところが後半ほどなく、歯車が外れ、バランスが崩れだしちゃった。開演前からアルコール入れてたスコッツ客が話の腰を折ることを楽しみ始めちゃった。前半を含めたフリの先にある展開に進もうとするたびに、あさっての方向へむかったボールが投げられ、の繰り返しです。全く関係ないコメントを投げてくるし、いきなり質問してきたり。

何しろこれら全部受け入れて、対応するのがテーマのショーなので、客が「エイカスターがショーを邪魔されて続きを話せない」ことを本格的に楽しんじゃうと、なすすべがなくなっちゃう。

エイカスターくんは後半の途中から「ここまでのレベルで話の続きができない状態(客が自分の話の続きを聞く気がない)のは初めて。完敗だよ。なんとかコントロールしようと頑張ったけど、完全に諦めた!」と、そこから、YOUTUBERとかTiktokerがやってるみたいなQ&Aみたいなスタイルになっちゃって。エイカスター返しなんで、どんなボールも面白く返すんですけどね。すいません、ものすごい欲求不満です。

フラストレーションたまりまくって会場でました(*6)エイカスター・コメディは最高級だと思ってるし、このアイディアはある意味斬新で 客次第では素晴らしい作品になると思うし、エイカスターくん自体も新境地開拓になると思うから、心底応援したいけど、リスク高すぎる。本来作り上げていた絶対に裏切らない最高級クオリティの傑作を観れないのは、【バいですって。ってたぶん45%くらいの客は思ってると思います。


お願いです、エイカスターさん。パンデミックのときに、サイモン・.バードが「客が怖い?から客なしでスタンダップやります」ってスタンダップデビューしたやつみたいので収録してください。客に邪魔されなかったバージョンは本末転倒かもしれないけど、みたいんですよ。45%くらいの客はものすごい観たいと思ってると思います。Pateronでもなんでも10£でも20£でもいいんで売り付けてくれれば、観客全体の45%は購入するにきまってます。やって。お願い。じゃないと、このフラストレーションが消えることは一生ないし、リスク高くてもっかい35£だす気もしないです。

【最後に備考】

前方にF1層の女子が結構いたんですが、堂々と写メと映像とりまくってて、マジでビビりました。あんまりelaborateすると失礼にあたりそうな気もするので、書かないけど、いろんな意味で衝撃でした。

まあ今の子たちって映画館でバービーのゴズリンの写メとったりするみたいだけど・・・

この数日後、サムくんのライブを地元のハコで観てるときに前方の女の子たちがフラッシュつきで写メとりまくってて、「やめてくれそんなことされたら二度とここでライブしてくれなくなる」って夢でうなされました・・・そのうち正夢になりそう。こわすぎる。


*1アニキ系のパーソナだとここまでにはならないんじゃないか、と思っています。Russell Howardがめっちゃハネた比較的直後に、Assembly のMusic Hallって800席くらいのキャパで見たことあるけどお客さんに絡まれてなかったもん。あと、ネトフリで配信してる芸人さんたちってボス的な威圧感でてて、あれを無視して絡むってよほどの泥酔客しかないのでは?とはいえ、オレは芸人さんが大きな劇場でやれるようになった段階でほとんどの場合みなくなるので適当なこと言ってるかもだけど。

*2エイカスター・コメディはシアターよりで、クラウニングの要素はないんですよね。悪い言い方をすると、そのスキルはないです。だからガチでキレることでクオリティコントロールしてきたんですよね。

*3オレたまたま(運よく?)一回、エイカスターくんが客のたった一言の絡みにブチ切れて、いい時間使ってボッコボコに叩きのめした(ナイフで例えるならもう死んでるあとも数十回刺してる狂気)のに、きちんともとに戻ってアートを完成させて終わらせる様を見てて、もうわかっていることだけど天才すぎるって思ったことがあります。

*4 その後、調子にのって世間と関わるのがダメだったんだ!と一切のSNSを辞めて、SNSなし生活のおススメ、という本を書き、宣伝のツールが一切なくなってしまったことに気づいてOff Menu相棒のギャンブル氏に泣きつく、という伝説もあります。この本自体はエイカスター・コメディ好きは絶対に期待を裏切られない内容ですね。(読んでるさぁもちろん)

*5 すいません、観たのが一カ月近く前で細かい野次の内容を失念してしまいました。

*6 前から5列目の真ん中ゲットするくらい意気込んで取ってるんで。(いや、今回もテンパってるオレをよそに同行者がとってたんで実質なにもしてないんですが)。


0 件のコメント:

コメントを投稿