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2020年8月30日日曜日

Frankie BoyleのWork in Progressを観ました& 世界の、そして(日本も含む)”ポリコレ”について徒然… です。

 

 


こんばんは。

スコットランドが生んだコメディ界の世界的スーパー・スター、フランキー・ボイルが大好きすぎるいなむらです。

フランキーがロックダウン以来初めての(オンライン)ライブを観まして。久々の、WiPならではの、ほのぼのハートウォーミングでフレンドリーなフランキーが、テレビどころかオフィシャルのライブ・ツアーでもなかなかきけそうにないネタやモノローグで客を爆笑と恐怖のどん底の下へ突き落とす40分強を体験することができました。

感想は呼び屋さんにも褒められたツイートを貼り付けます(そしてそこそこ注目されてからタイポに気づくのね 汗 気が付いた時には遅いのだ↓)

 今回は今年秋(追記:今週9月頭からだそーです汗)に放送予定というBBC放送の風刺シリーズNew World Order でやろうと思っているネタをお試ししたいので、安全な場所で、ってことでAlways Be Comedy が受け皿になった、という経緯だそうです。

なんと8月23日から始まって全14回。日曜、月曜日に各エピソード用になんとなーく準備したトピックとネタがどこまでセーフでどこまでアウトか実際読み上げてみて探りましょーかね、というゆるゆるな感じです。

今回は1回目、2回目用に準備をしているネタから、と結構ネタ構成も含めて細かく教えてくれまして。どんなネタなのかは、今年起きたことを思い出せば、概ね把握できるかと思います(笑 初回時は24ページも準備してたそうで(笑 

ライブ前にお茶目なインスタの写真が上がってました。

今回ぼやこうと思ったのは、フランキーのコメディが存在できるのは、彼の笑いは史上最高にダークなオーディオ・アートであるから、というのと同時に、それを理解&賞賛するオーディエンスが一定量いて彼らによってバリアが作られているからだよね、ということです。

実は、フランキーも、かなりの修羅場を潜って今の位置にいます。

一朝一夕で構築されているバリアではないです。

フランキーは、テレビだと8out of 10 Catsでジミー・カーの座付き作家みたいな感じでグイグイ伸びてって、Mock the Weekとかよく出るようになって、2010年にChannel4で「Tramadol Nights」という番組を持ってたんですが、当時の彼の笑いの認知度とテレビ視聴者が全くマッチングしておらず、かなり問題になっていた上に、レイプ・ジョークが引き金となっていいしばらくテレビ出禁になっちゃったことがあります。ネタ自体は、ジョークをしっかり読めればギリギリセーフなのです。ただ言葉だけに反応しちゃう人が多すぎた。もっと悪いのが、このフランキーのレイプ・ジョークの微妙なラインを全く読めずに、そこらへんの新人がごっそり超アウトなレイプジョークを言い出すようになっちゃった。おかげでフランキーのネタ自体を聞いてないのにその低レベルなやつと一派一絡げにするレビュアーとかコラムニストもいました。無駄に発言力あるのでマジ、いい迷惑(苛)

でもスコットランドと世界に散らばるこの手のコメディ好きの間では彼は絶大な人気でした。コンテンツを読める人たちは彼をサポートしていたし、疑念を抱く人たちの間でも彼の話をきく耳はあったし、彼の声を理解力のある人々に聞かせる場もあった。( 例:https://www.youtube.com/watch?v=1zMU6-zuKj8&t=59s。)

締め出された後、フランキーは自伝以外で本を出版し始め(メジャー媒体には頼らねー的なノリ)、それが爆売れし、ライブは即完売。そんなこんなするうちにそのうち段々と丸くなってきた彼も(→めっちゃ!正義感の強い社会派です)自分の発言力とテレビの普及力を上手に利用した方がいいんでないか、と思うようになったんじゃないのかなぁ(→ここは憶測)3-4年くらい前からBBC3などを中心にフランキー色は出てるけどそこまでフルギアじゃないほんわか系の番組がぽろっと顔を出すようになり→その後徐々に活動を広げてきて、最近ようやく半年くらいに1回は何かしらのシリーズを見れてる感じかも。

上記は、正しく理解できない人たちが多ければ、フランキーのレベルですらも潰されかかるほどの力になってしまう事例です。

例えば、レイプとかわいせつ被害のジョークを発した場合、「被害者の気持ちを考えろ。そんなネタのジョークなんてもってのほか」でコンテンツ(語り手は誰か、笑の対象は誰・何か、も含む)が見えず全否定し、そのジョークの発言者をショービジネス界追放しちまえ、くらいな勢いで攻撃する。実は笑いのターゲットはレイプやわいせつ行為ではなかったり、その種類も軽視するものでもなかったりしても、です。こうした犯罪をおちょくることで高度な社会派風刺ジョークになっていることもあるのに。

日本のお笑いの場合、政治はおろか時事を扱う笑いが異常に少ないし、そんなにお笑いシーンを追いかけてるわけでないし…なので、もやもやすることはない一方、たまに、自分のレーダー範囲で、当たり障りのない高クオリティ・ジョークに過剰反応する人たちがいる場面に遭遇し(大抵ついったー)、ポリコレ攻撃はやめて欲しい…と思うことがあります。

ポリコレは大事です。みんな意識すべきだし、クソなジョークは減らすべきです。ただ、ポリコレ意識の高い環境でプロとして仕事をいくつもこなす笑いのクリエイターさんなら十中八九は、自分の言動がわかった上で、ある程度どこまでできるかを見極めながら一本筋を通してジョークを発している。日本のお笑いシーンもここは同じなんじゃないかと思います。だから、プロへの信頼とリスペクトは持ち、さらに、ジョークが面白いか面白くないかは別に、

    語り手は誰か(キャラ、パーソナ、素の本人など)

    どんな環境で

    どんなオーディエンスに向けて

    どんな文脈上で

    誰・何を対象ターゲットにしているか

が読めてから異議をとなえるべきかどうか判断して欲しいと思います…。じゃないと、クソなジョークと一緒に素晴らしいジョークも潰れてしまいます。ジョークはメタで成り立っているようなのものですから、笑えるか笑えないかは異義を唱える武器にはならないです。一方、筋が通っていれば、どんな攻撃があっても制作者側は屈する必要はないと思います。筋の通った面白いものは続けていって欲しいし圧力に負けてやめないで欲しいです。

フランキーの話に戻りますが、彼はツイッターは最近の機能をフル活用して、自分がフォローしている人しかリプライできない設定にしてジョークを飛ばしています。最近はこんなのかな。 "Identity politics" is a useful phrase to use when you mean "politics" but also want people to know you're probably a cunt

Work In Progressできいたものに比べたら全然…ですが、Cワード使うだけで攻撃されてた時代もありました… (あのね、Cワードってスコットランドの超庶民の間だとものすごい!ラフな言い方でのmate みたいな感じです…)

下記はつい最近BBCで放送された最近のUKツアーのライブセットです。フランキーの「〇〇 is like...」から続くジョークは、時事トピックを隠喩の連続で最悪の地獄シナリオで表現し、客はその見せられた震撼の地獄のどん底絵図に笑ってる場合じゃないんだけどその表現がおかしくて涙流して笑う、という暗黒の美の世界。


あ、ちなみにTramadol Nightsはまだ見れないし、その当時のスタンダップもメジャー有料配信サイトではオクラ行きにされちゃってる。けど! きになる人は、いわゆる見ちゃいけないサイトで見れます。

あと、下記がフランキーのWork in Progressが見れるチケットサイト、Always Be Comedy。

他にもラインアップがかなり強いのでおすすめです。

https://www.alwaysbecomedy.com




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