イギリスを主とする海外コメディをガツガツご紹介するブログです。産地直送のイキのよいコメディ情報を独断と偏見でピックアップして(だいたい)絶賛します。***トホホな事情が発生して今まで書いていたGo Johnny Go Go Go を更新できなくなってしまいました(涙)今までの膨大な海外コメディ記事はhttp://komeddy.blog130.fc2.com/です。


2022年11月28日月曜日

祝! バスデンBasdenさんがアダプテーションした名作芝居Accidental Death of an Anarchistが来年3月にロンドンにトランスファーされちゃうよ!

いつもコメディのおしゃべりでお世話になっている、ブリティッシュ・シアターご専門のNaviさんから教えてもらいました。


ひゃっほい! 2022年10月にシェフィールドのシアターで上演されたお芝居Accidental Death of an Anarchistが2023年の3月にロンドンのLyric Hammersmithにトランスファーが決定しました!!!


【これまでのお話】

1)このブログは、イングランドのコメディ作家でたまに役者と芸人もやるトム・バスデンさんを応援し続けてきたブログです。バスデンさんは活動範囲が広いのですが、活動量にムラがあるのと、告知をしない、という難点があるクリエイティヴです。

このブログ内→ http://www.gojohnnygogogo2.com/search/label/Tom%20Basden

その前→ http://komeddy.blog130.fc2.com/blog-category-28.html

2)表題のAccidental Death of an Anarchistは、2022年8月だったかに、「バスデンさんがアダプテーション、ダニエル・リグビー主演でAccidental Death of Anarchistがシェフィールドで再演されるよ。10月に2週間上演。」と知りまして。


3)オリジナルの芝居も知らん、超有名な劇作家ダリオ・フォ/Dario Foもまるでよくわかってない、シェフィールドも行ったことない、知っているのは、バスデンさんとダニエル・リグビーは過去に何度かタッグを組んでいること!そしてなんといっても、バスデンの名のあるコメディにオレが行かないはありえない。

ありえないのです。


4)というわけで10月某日、4時間近くかけてシェフィールドに行ったんですよ。


5)予算がちゃんともらえなかった時代は、バスデンさん(Tim Keyと一緒に)演者もやってたのですが、もう10年前から芝居を書いても舞台に立つことはなくなりました。なので、バスデンさんを見るつもりはなかったのですが、インターバル中トイレに駆け込む時に、息子くんとバギーを押して劇場に入るご本人をスポッティングしてビビりました。第2子誕生してたのか! 

思わぬプラベートを見てしまって、申し訳ないと思いつつ、極めて需要の低い日本マーケットならレポートしてもいいかと、バスデンさんアップデート情報として

入れときます。

6)で、鑑賞後、絶賛しかない雑感を垂れ流してはいます。

7)信頼できる評はオレの絶賛だけじゃなくて

The Guardianとか (4星)

https://www.theguardian.com/stage/2022/oct/02/accidental-death-of-an-anarchist-review-sheffield-crucible-tom-basden-daniel-rigby

What's On Stageとか (5星)

https://www.whatsonstage.com/sheffield-theatre/reviews/accidental-death-of-an-anarchist-2022_57517.html

The Stageとか (4星)

https://www.thestage.co.uk/reviews/accidental-death-of-an-anarchist-review-at-tanya-moiseiwitsch-playhouse-crucible-theatre-sheffield

The Reviews Hub とか (5星)

https://www.thereviewshub.com/accidental-death-of-an-anarchist-tanya-moiseiwitsch-playhouse-sheffield/

(The Timesの意味がわからないレビューのリンクは割愛します)

ほら!!!オレだけじゃないんですよ!!!


8)バスデンさんのお芝居って評判悪いことはほとんどないのです(→悪い評価は見えない)。Holes(これは完全オリジナルだけど、元ネタはLord of the Flies)も、初演がエディンバラのフリンジで評判良くてロンドンに期間限定トランスファー、 The Crocodileも初演がマンチェスターのインターナショナル・フェスティバルで評判良くてロンドンに期間限定トランスファー。だから今回も良い期待してました…。


【Accidental Death of an AnarchistとDario Foについて】

1)こういう時に英語ではとても素晴らしい表現

I am not in the position to …

があります。何か要求されてる(→雰囲気)の時に、「すみません、ちょっとそういう立場の人間でないので・・・」とするっと逃げるときに使います。

献金とか募金とか断るとき、とても行きたくない行事等を欠席したい時、なんかの役割を推薦されそうになった時、オレは人生で何度この言い回しのお世話になったことか。

そんなわけで、演劇界もイタリアのエンタメも詳しくない自分が、ダリオ・フォ氏のことや70年代に上演されて以来、世界中であちこち再演されてる傑作について頑張ってまとめるのしんどい・・・。ので、 2017年に早稲田大学の古典戯曲を読む会で開催された、イタリア語翻訳・通訳者の石川若枝さんのガイドによる、Accidental Death of an Anarchist 「アナーキストの事故死」の朗読会のFacebook上の告知ページで、この通訳者の方による紹介文を発見、丸ごと引用させていただきます。

“【作家紹介】
昨年の10月、90歳でこの世を去ったダリオ・フォは、第二次大戦後のイタリアを代表する演劇人の一人であり、半世紀にわたって俳優・脚本家・演出家・舞台美術家として多彩な活動を展開しました。
1926年、ミラノの北西、マッジョーレ湖に近いサンジャーノで生まれ、1950年にミラノの美術学校を卒業したのち、ラジオの仕事を通じて演劇の世界に入ります。
1954年に伝統的な芝居一座の末裔で女優のフランカ・ラーメと結婚し、多くの作品で共同作業を行いました。
イタリアの大衆的な演劇やコンメディア・デッラルテの流れをくむ喜劇のスタイルに、政治や宗教的権威、あるいは社会への辛辣な風刺を組み合わせた作品を次々と生み出し、人気を博しました。
1997年には「中世の道化の伝統に範をとり、権力を嘲笑し、抑圧された人々に尊厳をとり戻した」として、ノーベル文学賞を受賞しています。【作品紹介】
『アナーキストの事故死』(原題:Morte accidentale di un anarchico)は1970年に初演され、世界各地で好評を博した作品で、フォがもっとも政治的に積極的だった時期の傑作と言われています。
初演の1年前、1969年12月にミラノの中心部で大規模な爆破事件(フォンターナ広場爆破事件)が起こります。その後イタリアでは、全国でテロ事件と政治闘争が続き、10年以上にわたる「鉛の時代」に突入します。
この作品は、ミラノの爆破事件の直後、容疑者とされたアナーキストがミラノ警察の建物の5階から落下して死亡した事件をとりあげ、爆破事件への国家的な関与を暗示する挑発的な内容です。しかし単なる政治批判の劇ではなく、全体に「演じる」という枠組みを与え、フォの得意とする笑いの手法が駆使された上質の喜劇になっています。
伝統的な演劇と現代をつなぐ回路、時事的な問題に演劇がもち得るインパクトや笑いの力を考える上でも示唆に富む作品といえるのではないでしょうか”

(↑もしも、削除しないといけないのであれば、削除しまーす!)

その他情報としては、

ノーベル賞を受賞した時に週刊新潮で3p記事になってたみたいです。これはすごい良い記事そう。→

https://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I4326235-00

ユリイカで1998年にも記事になってる→

https://cir.nii.ac.jp/crid/1520573330605851776

2016年にお亡くなりになった時の追悼記事の一例 →

https://jp.reuters.com/article/fo-die-italy-idJPKCN12E042


【絶賛しかないオレの感想】

もう十分布教できてると思うので、わざわざ書く必要もないけど、ここはオレのブログなので!以下、箇条書きにします。

1)ダニエル・リグビー演じる主人公マニアックは詐欺ペテン師で、過去に数々の「別人」となり人様に迷惑をかけてきた人物なのですが、彼自身は様々な「役」を演じてきたパフォーマーで、常に(つまりこの芝居中も)観客を前に演じている、と、ガチに思い込んでいる。この設定のせいで、芝居の中で「客を認識していない世界」と「客を認識している世界」の2レイヤーが共存するんですよ。このレイヤーを巧みに利用する笑いの手法は、ダリオ・フォによる革新的な技ではないかと思うのですが、その手法をがっつりと活かしながら、バスデンさんの醍醐味といえばの(言葉の解釈のズレから繰り広げる笑い(&この笑いをベースにキャラ設定を客に浸透させていく)がてんこ盛りでした。

2)スタジオで、ステージの2面を客席が囲うレイアウトだったんですけど、

第四の壁がありつつも越えやすい親密さがあるという(注:超えてきます。マニアックが「最近流行りだから知ってるでしょ」って超えてくる)今回の芝居にベストのタイプを選んでたなぁと思いました。

3)オリジナルのマニアックはこんなに喋るのでしょうか・・・というくらい、マニアックの喋る量がすごくてですね。風刺パンパンに詰め込まれててセリフ自体に無駄はないんです。息継ぎのこと考えてない気がしてならない超絶長いセリフばかりを、マニアックが喋りまくる芝居で、成功の重力がダニエル・リグビーにずっしり乗りかかってる印象が(笑。

80分くらいなのに芝居にインターバル入れてるの、めっちゃ理解できます。終わった後、客席総立ちでリグビーに大喝采。オレは、ガチでときめきましたね(注:10年以上前はかわいいことはかわいかったことだけは断っておきます。10年以上前の話ですよ…)。

4)そのパンパンに詰め込まれた風刺なのですが、バスデンさんにしては珍しく、イギリスの警察に対するかなり攻撃的なパンチが多く(注:Line of Dutyジョークもありましたけども。Love IslandもHollyoaksも出ましたけどもw)、ある意味新境地と言っていいかも…いや! オレがいうんだから、新境地(断言)だろ。最近のこともビビッドに反映させての警察内で起きている差別、悪事、またネグリジェンスから招いた事件や、都合の悪いことの隠蔽についてなどをガツガツ入れてました。

2019年終わり-2020年初めにやった(むちゃくちゃ久しぶりだった)スタンダップで話してたことが頭によぎり、この量の攻撃の嵐は、バスデンさん、お子さんも増えちゃって、世界への不満と鬱憤がさらに溜まってるのかな、と思わず思ってしまいました・・・(汗)

5)風刺といえば、もう一つはメディアですね。登場人物の一人が記者なので。ただフォーカスは警察なので、茶々入れ程度かな。

6)1970年以降、イングランドとウエールズでは、合わせて3000以上の人が警察の拘置中になくなってるんですってね。お芝居の終わった後に、警察の拘置中に死んでしまったケースをI I I I  で、リンクhttps://www.inquest.org.uk/ とQRコードを表示してました。写真撮ったけど、あげていいのかわからないから、オーディトリアム出たところで表示していたものをあげときます。

むちゃくちゃ笑うんだけど、最後はめっちゃ真剣。

というわけで、絶対見たほうがいいです。国際的な飛行機を飛ばすというのもいいのではないでしょうか。春休みです。行けると思います。



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