イギリスを主とする海外コメディをガツガツご紹介するブログです。産地直送のイキのよいコメディ情報を独断と偏見でピックアップして(だいたい)絶賛します。***トホホな事情が発生して今まで書いていたGo Johnny Go Go Go を更新できなくなってしまいました(涙)今までの膨大な海外コメディ記事はhttp://komeddy.blog130.fc2.com/です。


2020年7月10日金曜日

UKコメディ業界現状調査レポート発表。冗談ではなく、イギリスのライブ・コメディが、つまり、イギリスのコメディ業界が死にそうです… 署名お願いします。


**追記**
先日のアーツ支援プログラムにライブコメディも含まれるというコンファームの連絡が届いたそうです。とりあえずは、よかった!


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まずは何よりこちらです。
より多くの署名を募ってます。イギリスのコメディ好きな人はぜひよろしくお願いします。


以下、なるべく簡潔になぜイギリスのライブコメディシーンが死にそうなのか、説明を試みます。


【公的機関がコメディをアートとして認めていない。
よって公的なアート関連の支援が回ってこない】


このブログでも3月半ばごろから定期的に、ロックダウンでのイギリスのライブコメディシーンについてレポートをしてきました。なんとか食い繋ごうと、オンラインコメディショーが行われてきましたし、コメディクラブや芸人さんたちをサポートする投げ銭系イベントもおこなれました。

3ヶ月あまりがすぎ、いよいよロックダウンの規制緩和へ。ルールを守ることが絶対規則ではありますが、それでも、テイクアウトのお店が再開、街のお店が再開、歯医者もGPも再開の許可がおり、散髪屋などがオーケーに。そして7月4日からはパブ・レストランがついに再開、映画館もオーケーよ(注:スコットランドはこの段階にはまだ!達してないです。イングランドとは別の対策をとっています。)…となったのに、シアター、ライブ・エンタメのゴーサインが下りないんです。他の業界は手探り状態ではありながらも、前進している。しかしパフォーミング・アーツ・シーンはまだ真っ暗。

ということでみんなでさらに!声を大きくあげ、国からの補助がなければ業界全体が潰れてしまうと訴えたところ、政府からの支援金が1.57億ポンド下りることに。 もちろんこれはアート・カルチャー全体に振り分けられるのですが、ないよりは全然マシ! 希望の光がさしたかのように見えた矢先、コロナ危機を機にライブコメディを支えるために立ち上げられたサポート団体Live Comedy Associationが業界の調査結果と共に衝撃の事実を発表。それは

「コメディはアートとして認められず、支援金の一部すらもらうことができない」

というものでした。

公的支援金、0ポンドです。

よくよく思い出してみれば、こないだ発表されたイングランドのアートカウンシルからの支援金でも対象外だったです。


【ライブコメディ関係者対象に行われた調査結果について】


細かいレポートはこちらにあります
。以下、かいつまんで。
  • ライブコメディ会場のうち3分の1が、このまま行けば今年中に完全閉鎖に追い込まれる。
  • ライブコメディ会場のうち77.8%が、来年中に完全閉鎖することになる。
  • 45%以上のライブコメディ関係者が業界を辞めることを真剣に考えており、さらには60%以上の関係者が2021年の2月までに本格的にライブコメディが再開される見通しがなければ、業界を辞めることを真剣に考えている。
  • 73.5% のコメディ関係者がメンタルヘルスに深刻な悪影響を及ぼしていると答えている
  • 83%のプロモーターはロックダウンが終わったとしても以前と同じように営業をすることができないと予測している
  • 75%以上の演者がコロナ前に見込んでいた今年の収入の5%にも到達していないと報告している
これを読んで、「イギリス政府から市民や会社に出ている支援金があるじゃない?あれは?」って思われるかもしれないです。ので以下の調査結果も追記します。
  • 自営業者にも会社の社員の人々と同じようなサポートを、ということで基本的に「年収を12等分x0.8%(頭打ち2500ポンド)」を10月まで国が払うというSEISS制度を上手に受領できている業界関係者、および演者は32.5%。
  • 会社員が受けることのできるFurloughを受け取れている業界関係者および演者は18.7%
  • 上記2種類のサポートは簡単なようで、実はいろんな条件が揃ってないと対象にならないのです。上手にもらえてない業界関係者および演者が27.8%...
というわけで30%近くもの人たち、なんでもらえないのかというと
  • 自営業といっても、フリーランスではなく、有限会社を立ち上げており、自分がその取締役社長となっているから。この場合の自営業は「small business」に入ってしまう。でも「small business」カテゴリーのサポートは雇用人が自分だけの場合、対象外になるんですよ・・・というわけで、アウト。(フィル・ニコルさんがめっちゃ怒ってますが、彼だけではないですね・・・)
  • フリーランスだけど月極契約などで年収の50%以上を毎月給料のように振り込みをもらっている場合も対象外。(→ちなみにオレがこれのせいで、SEISS対象外だったの 号泣)
  • 2019年ー2020年にフリーランスになっちゃった人はアウト。SEISS対象者は2016年4月ー2019年4月までの確定申告で対象者かどうかが決まるから。(→ちなみにこれでもオレはアウト。2019年に100%フリーランスになったから。号泣)
  • 年収50000ポンド以上は対象外。つまり支援金、ゼロ。
が主な、そして非道な理由としてあります。

ちなみにこっちの芸人さん、事務所所属とか多いですが、別に事務所から給料をもらってるわけじゃないです。日本と違ってもっとルースで、エージェントは何もお世話してくれないです。この様子、実はリッキー・ジャーヴェイスの昔のコメディで(WOWOWで放送だった、アスミック配給の)「エキストラ」で、スティーヴン・マーチャント扮するエージェントのやり取りをご参考にしていただけたら! 
マネージャーなんて、芸人さんの1hのショーのツアーの時につくくらい、ですかね。

【ツアーマネージャー、プロモーター、ライブ・スタッフなど
オペレーター側の状況】

  • ライブ・フォトグラファー、デザイナーを含むライブコメディ業界における呼び屋、オペレーター側に焦点を絞った調査によると、誰もが年間に12000ポンド以下しか稼げないだろう、という推測をしています。
  • これによりこのうち20%が業界をやめようかと本気で思っている。
  • 87.7%の人がメンタルをかなり深刻にやられている。この数字が業界全体を上回っているのが、本当にヤバいです。
  • もっとヤバいのが、業界全体では、今年の11月までに(元どおりにならなかったら)業界辞めちゃうしかないと考える人は38.9%である一方、呼び屋側はなんと82.3%もいる、ということです。85%の人がどう考えてもコロナでソーシャルディスタンスを守ってライブコメディを行うことができそうもない、という考えとか。さらにはスタッフもコメディクラブの会場や形態自体がコロナ感染を安全に回避できるような構造になっていない、と考えています。
  • プロモーター側は、ロックダウン後にロックダウン前と同じようにショーを回せないことから、収入の4分の1もあればいい方、という見方をしています。
絶望的ですが、悲観的とは思えない。極めて現実的なシナリオですよね…


【ライブコメディがどうしてそんなに大切か。その歴史と重要性

(今更ここにきて、説明しないといけないかと思いました・・・)

そもそも、なぜこんなにイギリスってライブコメディで騒ぐの? そんなにライブコメディで稼げるの? テレビやラジオがあるじゃない? そういうところに出ないとろくな収入もらえないでしょ?

と思われるかも知れない、と思いました。
イギリスだと、ライブ・コメディで注目になった人(大抵フリンジ含むライブコメディアワード経由)がテレビやラジオなどで仕事を得るようになる一方、そっちを無視して(または無視されても)ライブ・コメディだけで十分豊かな生活を送れるんです。

フリンジの話を抜きにして、乱暴すぎてヤバいんですが、ものっすごい!かいつまむと・・

昔々は大衆劇場や男オンリーの労働者階級クラブ(→パブだわな)みたいなところでやってたライブ・コメディですが、70年代からオルタナティヴや実験的なコメディの需要と供給がどんどん高まり、バー併設のコメディを専門にみるハコがオープン。ライブコメディを原動力にビジネスが動いて行くんですね。ロンドンのコメディストアが一番最初に開いたコメディクラブのうちの一つだったと思います(承前)
90年代に一回コメディクラブのブームが訪れます。
んでそのあと2000年代から徐々に増え始めるんです。
その原因の一つは、パブ文化の衰退にあります・・・

だあああああ、どんどん泥沼!(発狂

詳細知ってる人にはボコボコにされそうなのを承知の上で、例をいくつか程度にかいつまんじゃうと、
1)90年代にマードックがサッカーの放送権を買ってしまって、今までパブでおじさんたちが集まってビール飲みながらパブのテレビで地上波のサッカー見てギャーギャー叫んでたってことができなくなったとか、
2)サッチャー主義からの個人主義ががっつり浸透して根付いちゃってus vs themだったコミュニティー意識を凌駕して、なんかあったらパブ、って習慣が減ってった、とか、
3)スマホやネット環境が浸透しちゃって、みんなと交流するためにパブ行かなくてもよくなったとか
4)自分ちでサッカー見れるからパブ行かなくてもよくなったとか、

とかとかとか、そんなこんなで閉鎖に追い込まれたパブを救ってコメディ・クラブとして誕生したところも多いのです。芸人さんたちを呼び、見にくるお客さんたちにチケット売ってお酒をサービングすることで主に収入を得る。チケット代はなの知れた芸人さんの1hのショーでない場合は、五ポンドの低額が多いけど、お客はお酒を飲むので、それで経営していけるのです。プロのライブ芸人さんは15−20分尺のスロットを2ー3箇所くらい一晩に回っていいお金を稼ぎます。


こうした経緯から、コメディ・クラブはものすごく多数存在し、コメディビジネス事業の中では大きなシェアを締めています。そしてこれは、新しい芸人んさんが誕生する環境が数多くあるという意味でもあるのです。学校帰り、バイト帰り、仕事帰りにちょっと立ち寄って、マイク持ってステージに立って「コメディ」をやり始めることができる。ライブコメディは啓蒙の場でもあるのです。それにもかからず、
  • パブっぽいのにパブとしては認められない
  • 酔っ払いの大衆、労働者階級相手というルーツのせいで、公的機関がアートとして認めてない
といった理由で支援がもらえない…。

最後にFin Taylorさんがものすごく端的にイギリスのライブコメディの特殊性と重要性、いかにライブコメディはアートであり、守らなければいけないものであるかを、書いてくれていますので、ぜひ読んでください。 




もしかしてこれを訳せば、今までのながたらしい説明はいらなかったかも知れない・・・(後で日本語に起こします。なんか今時間見たら午前3時になっちゃってるんで 汗)

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