イギリスを主とする海外コメディをガツガツご紹介するブログです。産地直送のイキのよいコメディ情報を独断と偏見でピックアップして(だいたい)絶賛します。***トホホな事情が発生して今まで書いていたGo Johnny Go Go Go を更新できなくなってしまいました(涙)今までの膨大な海外コメディ記事はhttp://komeddy.blog130.fc2.com/です。


2024年4月29日月曜日

【考察】TikTokとかでクリップがガツガツハネてるFin vs the Internetに、イギリスの善良な白人の芸人さんたちの迷走っぷりが如実に出ていてものすごい興味深いです

Fin vs the Internetは、Fin TaylorさんとVittorio AngeloneさんとHoratio Gouldさんの3人によって作られている1エピソード10分くらいのシリーズです。

YOUTUBEの再生回数は5桁くらいしかいかないのですが、TikTokとインスタではすんごいハネてて、うん十万うん百万回とか平気で回っています。

表に立つのは、この3人の中では一番キャリアが長くて売れてるフィン・テイラーさん(ゆえにFin vs the Internet)。

でもVittorioさんは2022年にお芝居の構成内容に沿って展開するショーが1hショーのデビューだったにも関わらず、高評価を叩き出し、その後も上手にSNSを使いこなし続けてるみたいなので、若い人たちの間では、認知度高いと思います(多分)。


【シリーズの前提】

フィン・テイラーさんは、Mock the Week 等のパネル・ショーやBBCのご長寿スタンダップショーケース番組Live at the Apolloなどのテレビ出演を数々こなし、知名度あるはずなのに、自分のYOUTUBEチャンネルはハネないし、シアター・レベルのハコはおろか、中サイズレベルのハコもチケットが思うように売れず。一方、インフルエンサーやティックトッカー、リアリティTV出身者たちは、(ライブステージの経験もないのに)ライブイベントをやる、となったら、あっという間に大きな劇場やアリーナサイズのハコを瞬間にソールドアウトにしちゃって、ウハウハできる。

いんたーねっと、でヴァイラルになりたい。なるにはどうしたらいいの。

というわけで、今流行りのソーシャル・メディア成功者たちにインタビューして、ノウハウを取得しようと思います。

という名目の、Between Two Ferns みたいなやつ。 です。



【Fin vs The Internetの制作ノート】

3人はこのシリーズ制作において、Ali G の制作過程をモデルとしていると語っています。(ソースはPatreonで上げてるご本人たち談)

(念のため、Ali Gはサーシャ・バロン・コーエンのTVブレイク・キャラです。25年かそれ以上前の話をしています)


Ali Gとしての冠番組をもらう前から別番組のコーナー枠でやってたインタビュー・コーナーの尺は5分−10分くらい。インタビュー相手の反応で、これだ!というのを抽出するために、ものすごい長回しをする。この手法を使って、「ダメの白人イギリス男」代表キャラとして、インターネットを賑わす今どきなみなさんとチャットし、「これだ!」を抽出しちゃいましょう。

Fin Taylorさんといえば、ずっと本人の「政治的に左なのに左で頑張ろうとしても何一つ機能しない世の中で、どうしたらいいかわからんポリティカル・ホームレス」的ポジションを武器にものすごいエッジでクレバーな社会&政治風刺を繰り広げていた芸人さんで、例を出せば

→ http://www.gojohnnygogogo2.com/2017/08/edinburgh-fringe-2017-fin-taylor-lefty.html

翌年は、エディンバラのコメディ・アワードにもノミネートされた(オレ的にはこれで彼は2018年のキング・オブ・コメディになると思っていた→ならなかった)

→ http://www.gojohnnygogogo2.com/2018/08/edinburgh-fringe-2018me-too-fin-taylor.html

この路線で露出しても、全然、チケット販売に繋がらない。人気も認知度もミャーミャー。・・・からの、ヴァージョン・アップとしてオンラインシリーズ上に爆誕したキャラが、進化系ではなく、退化系フィン・テイラー。

もう知らんがな、(生まれも育ちも白人のイギリス男の)本能の赴くまま、頭に浮かんだこと全部ベラベラ口に出しますけど、何か? と、これ言ったらどうなるかとか考えずに(注:という設定で台本書いてる、という意味です)、いんたーねっと成功者たちと繰り広げるやりとりを延々と録画し、そこから抽出したバイラル要素を切り貼りしまくって作る5−10分になります。

たしかフィンテイラーさんの奥さんのインプットで(注:2024年4月現在二児の父)やりはじめたインスタとTikTokで、激ヤバに失礼だったり下品なことをおくげもなく、取材相手にぶちまけているクリップをあげていくうちに、前述のレベルでクリップが回るようになっていってます。とはいえ、最初のきっかけは、このシリーズをやりはじめたころに、なぜかアメフトのアの字も知らんし興味もないのに、ゲストとして呼ばれたGood Morning Football (注:American Football)からのクリップ。上記のキャラが最善の形で笑いを生み出したのですね。そこからこのシリーズに流れ新しいファンできていったのはあったと思います。



【考察】

退化系のフィンさんは「頭に浮かんだこと全部ベラベラ口に出します」。なぜこのバージョンになったのかは、以下のように推測できるし、理解できるんです。

1)Political Homelessの苦悩キャラはBBC Radio4、どんなに背伸びしてもBBC2層に響くだけの(所詮は)ニッチ・キャラ。Taskmasterマジックでもない限り、売れないのです。しかもその層って人生もとっくにUターン組(オレ?)が結構なシェア率を占める。ここにしがみついても先がない。

2)Fin Taylorさんはギリかもだけど、VittorioさんとHoratioさんの属する(元々のミドルクラス&大卒&ワーキング・クラスのブルジョア化の結果生まれたミドルクラス)の世代って、政治経済社会といろいろわかってても、どの方面においても諦めと絶望しかなく、白人の男性に関してはジェンダー―と人種問題に翻弄されまくり、いっぱいいっぱいななか、自分なりに折り合いを模索していて。ここに響くのは、アルター・エゴ的なRighty Loosey gooseyなキャラなんでしょうよね。気合入ってると、うざいしださいしで、若いのはついてこないです。

3)からの、言っちゃいけない言葉や内容をノーコンテクストでランダムに飛ばしちゃう。う○こ、とか、ち○こ、とか、ケツ、とか、フェラ動作とかワンキング動作とか。こーゆーやつ言い合ってやりあってゲラゲラ笑ってる若者は子供だけじゃなくて結構なシェア率です。唐突なのと馬鹿馬鹿しいのの掛け合わせで人が笑うってある。これやっちゃおう(だって超ピステイクじゃん)これは(2)で話している層だけじゃなくて、もっと広い層って気はしますけど…。

実際この戦略でSNSも成功し、ツアーは大き目のハコもソールドアウトになるし、と結果を出してますから、彼らにとって方向性は合っているのでしょう。

とはいえ、オレのような笑いの趣味からすると、ホームランを打つ打率が低い。キャラクターやパーソナって一個人をフィクションで作り上げるもんですから、ものすごい緻密に、ものすごい掘り下げて作っていかないと、ちょっとした言動がブレたり、ぬるくなる確率が高くなる。退化バージョンのフィン・テイラーは、ランダム性の高いRighty Loosey gooseyなキャラだから、上記の副作用が出る確率高くなっちゃうンじゃないかな、と。

あと、取材相手が芸人さんじゃないし、インフルエンサーとかリアリティTVスターって善良でセンシティヴな人多いから、平場のトーク回し、そんじょそこらの才能と経験じゃ…ってところあると思います。

3人とも、(そこそこ結構なシェア率を占める)前述のアルター・エゴは持ち合わせてはいるけど、それに支配されているタイプではないので、振り切らないといけない時に、無意識下による微々たるためらいが出ちゃうのかなぁ。とか。とくに、アメフト番組のゲストとなったときのフィン・テイラーさんと比較すると。。。あれは本当にテイラーさん自身の延長戦で、アメリカのアメフト界に何思われたって失うものはなにもないですから、怖いものなしで振り切れるし。と合点がいっちゃうんですよね。あくまでオレの中でですけど。

【で、最近】

3人がPatreon会員の質問に答えるさながら、笑いについて再び談話している回があったのですが、そこで「ああいうことやってウケてる芸人いるけど、アレやりたくねえな」っていうのをそれぞれ話していて。最初は、こうしたポリシーがこのシリーズのバックボーンにもなっているんだな、と思ってたのですが、

「前に座ってる客とかをいぢるのはやりたくない」(→これはよくある話なのでともかく)

「オレたちミドルクラスだしオレたちの笑いを見に来るのも結局ミドルクラスなんだから、ミドルクラスがのぞきたいワーキングクラスを見せるワーキングクラス側に寄り添ったコメディやりたくねえ」(→あら、これあの人(たち)のこと言ってる)

「(ステージ転ぶとかステージから落ちそうになるとかプロップ系で不具合があるとかetc)ステージアクシデントをネタとして盛り込むのやりたくねえ」(→あたたたたた! 耳が、耳が痛い)

ちなみに、ヴィットリオさんは、「アイルランド」「ベルファスト」「ロンドン移住民」「バックグラウンドはイタリアからの移民」っていうカード一切使いたがらない。(→ギリ北アイルランド紛争停戦後ベイビーで、(経験的に)知らない世代に入っちゃうせいかな?) そして、ホレイシオさんはお父さんはガッツリ系のワーキングクラスのバックグラウンド(→2023年のエディンバラフリンジのショーで言ってた)

たぶん、お父さんお母さん教師で職場がプライベートスクールだったせいでプライベートスクールにずーーーーーっと通ってたっつうレベルの、ガチのガッツリ!白人イングリッシュ・ミドルクラスってフィン・テイラーさんだけ。

この彼らの「これやりたくない」をきいてるうちに、あまりにもあれもやりたくないこれもやりたくないに溢れかえってて。彼らはパンクというよりは、英国コメディ業界の現状をまえに中二病にかかっちゃったのかしら・・・(汗)? とか思ったりしてます。

そんなわけで、ドーンとハネる時が来ると思うんで、引き続きウォッチャーは続けてたいなーと。応援してます。


2024年4月22日月曜日

最近のバスデン情報です

 気がつけば今年でバスデンさんのファンになって15周年。と気がつき、最近全然バスデン情報をアップしていなかったことを思い出しました。最後にバスデン情報を上げたのが、1年前だったことが発覚して、これはファンとしてヤバいのではないか、と思い、アップすることにしました。


1)ウエストエンド上演作の「Accidental Death of Anarchist」がオリヴィエ賞のNoël Coward award for best new entertainment or comedy playにノミネートされました。

賞自体は取ってない。Stranger Things: The First Shadow by Kate Trefry – at the Phoenix Theatre (WINNER)って書いてある

オレ的角度からの、バスデン・アダプテーションのAccidental Death of Anarchistについてはこちら。

http://www.gojohnnygogogo2.com/2022/11/basdenaccidental-death-of-anarchist3.html


2)Here We Goのシリーズ2がオンエア。非常に評判も良く終了。

続きはあるのか?

(全然作れると思うから多分ある気がする)


オレ的角度からのHere We Go についてはこちらのなかに

http://www.gojohnnygogogo2.com/2022/02/the-witchfinder-white-lotus-s2-south.html

このシリーズのパイロット版についてはこちらのなかに

http://www.gojohnnygogogo2.com/2021/02/20211ukpandemonium-back-s2-pls-like-s3.html


3)Tim Keyのポエトリープログラム(BBC Radio4のシリーズ)新シリーズ配信

今までLate Night Poetry Programmeだったんですが、夕ご飯の時間の1830分にくりあがっちゃったので、Late Night がなくなってTim Key Poetry Programmeになりましたが、シーズン6って言っていいんだと思います。同じ設定でバスデンさんが出てます。

https://www.bbc.co.uk/programmes/b03pn5pl

毎回、いいゲストをブッキングしてるんですが、Tim Keyのソーシャルネットワークが素晴らしいので、旬な芸人さん方を取り入れるのも素晴らしいシリーズです。今全シーズン聴ける状態だと思うので、ぜひ未聴の方は、どうぞ。


4)BBCの人気コメディ・ドラマ「ゴースト」でカメオ出演という名のちょい役。

ゴーストは最終シーズンの最終話。すみません。非常にやばいのですが、このシリーズまるで見てなくて、見なきゃいけないのに、最終シーズンの最終話に出てたって教えていただいて、そこだけ見たとかいう酷いことをやっています。本当にすみません。

5)BBCの人気コメディ・ドラマ「マンディ」でベネフィット・アドバイザー役でご協力。

最近新シーズンが配信されたので、3話くらい顔出しをなさっている。トレーラーにも顔出しをなさっている。

以上よろしくお願いします。

2024年4月16日火曜日

英国&アイルランドとアメリカのNetflixでNo1です。リミテッドシリーズ「Baby Reindeer(邦題:わたしのトナカイちゃん)」 についてのリンクまとめ

オレが叫んでもこの高すぎる温度では誰も避けていきそうなので、以下でエントリー記事書きました。ガッドさんがスコッツのおかげで、ひとさまに触れる用に開設している、スコットランド関連情報をたまにのっけるnote.comで、文法の間違いとかめちゃくちゃ気を使ったやつです。

https://note.com/scot_geek/n/n10f83a2e4815

イギリス&アイルランドとアメリカで1位なのに、日本で10位内にも入ってないどころかトレンドにも入れてないの。日本市場って、マジでどのジャンルもめちゃくちゃ大変。泣きたい。

猫被ったほうでは書いてないことで、1つだけここで追加したいと思ったことがあります。

オレ、芝居は2回観ましたが、1回目で受けたときの重い衝撃と、このシリーズで受けた衝撃がかなり同じバイブです。なんでかってと、初期の上演のほうが、あのモンキーとの関連性を伝えるジャブをパスパス打ってたと思う。だからモンキーを知ってる客は終わったあと客席から立てなかったし、オレもモンキーが一番重いと思っちゃいかん、みたいなことを言ってた。4月11日の夕方から一気見して、まだ、後遺症です。ココロ痛いのから抜けれない。

ガッドさん自体は、大丈夫だから心配しないでねーってファンに念押しポスティングしてるけど、いや、ガッドさんはオーバーカムかもしれんけど、オレたちが再びメンタルやられてるから! 

忘備録としてガッドさんがお気に入りのレビューだったDen of Geek の記事(ネタバレあり)

https://www.denofgeek.com/tv/netflixs-baby-reindeer-totally-transforms-in-its-stunning-episode-4/

わかってるよねな、ベネットさんの5つ星レビュー

https://www.chortle.co.uk/review/2024/04/11/55388/baby_reindeer

Digital Spy もまあまあ良かったと思う(書いた人はツイート時にマスターピースって言ってたから)

https://www.digitalspy.com/tv/a60450359/baby-reindeer-martha-true-story/


インタビュー記事

Vanity Fair

https://www.vanityfair.com/hollywood/baby-reindeer-netflix-richard-gadd

Gay Times

https://www.gaytimes.co.uk/originals/netflix-baby-reindeer-richard-gadd-nava-mau-interview/

Independent 

https://www.independent.co.uk/arts-entertainment/tv/features/richard-gadd-baby-reindeer-interview-netflix-stalking-b2526548.html

attitude 

https://www.attitude.co.uk/culture/baby-reindeer-creator-richard-gadd-on-netflix-bunny-boiler-drama-a-lot-of-this-stuff-happened-to-me-463493/



2024年4月2日火曜日

サム・キャンベルSam Campbellの新作 Wobservations、イギリス・アイルランド絶賛ツアー中、4月オーストラリア巡のちに、Netflix is a JokeでLA上演、おまけにニューヨーク行きます。

カンボーの過去の記事はこちら。

http://www.gojohnnygogogo2.com/search/label/Sam%20Campbell

 

ついにエージェンシーが立ち上げたウエブサイトからお近くで行われるキラキラ☆ライブ情報をゲットしてください。今まで、彼の笑いを1時間ナマで見る機会がなかったコメディファンの方々も、見るチャンスが続々増えてきました。メーリングリストに登録も、アリだよ!

https://www.samcampbelltour.com/


TaskmasterUK効果てきめんのため、イギリスの追加公演日程はどこもおっきな劇場になっちゃってるのはわかるしあのハネっぷりでは当たり前でしょうだし、オーストラリアは生まれ故郷なんだからもっと前からもっとちやほやしてるべき・・・と思っているのですが、LAとNYの会場は、ガチのファンでも、ちょっこし心配になるデカさです。

Taskmaster UKってアメリカでも視聴率あるんですか(恐)?あんなになんでもかんでもアメリカ版リメイクを作る国で、UKものがそのまま大衆に受け入れられてる気がまるでしないよ。

エージェントは、エイカスター氏をモデルにして米市場拡大してる気がするんですが、エイカスター氏がアメリカで今の規模に達するまでNetflixでの4部作デビューとTaskmasterUKから1-2年経ってるのを備考しておきたいよ。コツコツ☆ビルズアップだった気がするよ。

過去作のアメリカでのハコのサイズを考えると、周りのお祭り騒ぎの勢いでリープを強制しちゃってるみたいで、本人のメンタル心配・・・。どうかオレの不安は大きな間違いであると信じたいです。マジで。


【新作 Wobservationsの感想】

わてくしは、世の中に素晴らしい傑作コメディを見つけ、いろんな1時間ものの(スタンダップを含む)ライブコメディショーを最高、最高、最高。と褒めた倒してきて、ある一定の才能に関しては、長期間にわたって崇めてきました。

そんなドンハマりした芸人さんの笑いのなかで、たぶん、この芸人さんの笑いだけ種類違うな、と思っている点が2点あります。

1つ目は、笑いに生活感がないこと。Tales of my life (それがフィクションにまたがっていても)じゃないんです。近い友人や知り合い、家族がネタにならない。訪れた場所とそこで見聞きした人は着想になることはあるけど、具体性が、ない。Never Mind the Buzzcocksに出たときに「歌音楽に興味ない。「あー君と別れてうんちゃらー」とか、お前の気持ちなんか知るかよ。どーでもいいわ」的なことを言ってたんですよね(→音楽とカンボーがあまりにも縁遠いのになぜ出演、みたいないぢりあって)彼の笑いのスタイルとつながってる気がします。

その結果、プライマリーもセカンダリーもエンドポイントが究極の「笑い」だけになる。「笑いを通して」「笑いの先に」あるのは「笑い」だけ。共感や共有からのつかみやオチをびっくりするくらい作らない。60分、清くパンクに「笑い」だけで突っ走る。でも、ただのギャグのアッセンブルになってるんじゃなくて、シアトリカルでインタラクティヴなテクニックをいくつもsubtleに使いこなしてるんですよ。2回観ると、いかにどれもこれもが緻密に構築されたショーの一部だったかがわかる。初めてみたときも同じこと書いたけど、Harry Hillと似てる種なんだけど、違いはシアトリカルのsubtleさとそこに差し込まれる毒の強烈さですかね。

2つ目は、(1つ目の関連しているのですが)カンボーの基盤が、我々の住む世界じゃないんってことなんですよね。(例えばAunty Donnaとかもね)、この種類のぶっ飛びナンセンスの「ヘン」コメディでも、我々の住む世界って見せかけといていつのまにか芸人さんの世界に誘われ、ライドする。基盤を我々の住む世界からスタート、または入れ込むことが多いと思うんです。

一方、カンボーのショーは、(どうやったら説明できるかすごい考えたんですが)、 ショー自体が、映画「マルコビッチの穴」でいうところの「マルコビッチの穴」って言ったらわかってもらえるでしょうか。会場入ったときからすでに「マルコビッチの穴」に出てきたあの「穴」のある部屋で、始まったらみんなその中入っていく。1時間後に吐き出される。

ということを考えていると、タイトルがオブザベーションをもじったWobservationsってのが、本当に的を得てるバングオンなタイトルだな、と思いました。アメリカでいい距離感で見たかったら80ドル?とかするみたいだけど・・・ぜひ。



2024年3月28日木曜日

最近観たライブ感想その3:絶賛UK ツアー中☆Nick Helm's Super Fun Good Time Show 観ました

【これまでの(ファン的角度からの)お話】

ニック・ヘルムさんについてはこちら。その場限り的な空前絶後のパフォーマンスが得意なので、詳細を記録しときたいという理由からショーの一部始終を書いちゃってるものもあります(こことかこことか)。2017年2019年2022年は鬱三部作と言われていて(*1)、そのうち2022年の作品の感想をまともに書いていないまま今に至ってしまっております。

https://www.nick-helm.co.uk/#live

2024年3月26日からツアーが始まりました。が、チケットは完売していないようです。(今日のグラスゴーもチケットあるらしいよ!)テレビ出演、人気(コメディ)ドラマ出演も多く、知名度は高いはずなんですが、ライブへ客は流れづらい印象。常々書いてましたが、(コメディ)ドラマの役柄イメージとライブパフォーマンスのパーソナとの間に、一見すると果てしないギャップがあるように見えるからなんじゃないかというのが、オレの見解です。表現方法が違うだけで、基盤は同じなんだけどね。それが見えるリテラシーを大衆に求めるもんでもない。というわけで、劇場サイズはでかくても300くらい+完売なかなかしない。

とはいえ、ファン的には、布教活動に勤しむモチベが維持されるし、10年以上前と変わらぬ距離でライブ観れるのは、めっちゃありがたいというのは否めないですが…

【今回の作品について】

過去3作が「気が付かず鬱」(2017年)、「鬱と自分」(2019年)「パンデミックを潜り抜けた鬱病者(自分)のケーススタディ」(2022年)的なテーマで。今回のテーマはどうしようかなーと思っていた昨今、抗うつ剤をいろいろ試しても鳴かず飛ばずな効果なんで、医者に相談に行ったら、じつは鬱というよりはbipolar(双極性障害?)だって診断されちゃった。

ええええええ! 

「でも先生、オレ「躁」のときの認識がないんですけど・・・?」

「bipolarの種類もいろいろあって、患者さんの場合は躁が💩レベルしかない(→鬱のときとあんまかわらない)」

「・・・・・・」

そんなわけで、bipolarの処方をもらい始めたのだけど、ずいぶん調子がいいらしいんですよ(*2)。観客のみなさんと、心の底から最高に遊べるfun timeを作ろう!って気分になり、今回のショーが誕生です。

ショー自体の長さは「60分」。なんですが、エディンバラのフリンジやそれをそのまま転送できるSOHO THEATRE的なところじゃないかぎり、芸人さんは90-120分の任務を課せられるんですよね。対処法としては、1)前座を1-2人入れちゃう 2)自分で全部時間埋めちゃう 3)(劇場サイズのデカいところでやる大物さんにはよくあるケース)始めからショー自体の長さを45分x2(15-20分インターバル)で構成しちゃう。で、ヘルムさんは迷いもせず(2)なんですよ。なんでかってと、crowdworkの天才だから(*3)。本編ほどに綿密に準備もせず、クオリティを落とさず、量を増し増しにできるんじゃないかと思います。

よって、最初の40分(実際には60分に伸びてた)は「ショーまだ始まってない」と定期的になんどもなんども断りを入れつつ、Super Fun Good Time Showの導入口的な話。薬は効いてていいんだけど、イカないんだこれが! いや、大丈夫、勃起はする!めっちゃ!硬くなる!めっちゃ!めっちゃ!!めっちゃ!!!硬くなる!!! (前に座る男性客指して)大丈夫!ハードファンをがっかりさせるようななよったちんこじゃない!安心して!めっちゃ!めっちゃ!めっちゃ!!!硬くなる!!!だけど、どうにもイカない!!!

からの、「自分90sがティーンエイジャーだったからCOMEって言葉に汚れを感じる世代なんだけど、どうみんな?COMEってなんて言ってる?言ってた?」と、どこに座ってても直撃&つっこまれる、ヘルムさんおなじみの展開に。しかも下ネタ全開。この「ニックヘルムのショーに来たら、どの席座っても安全な場所はない」って緊迫感(?)が最近緩かったんで(*4)ああ、たしかにお薬効いてるのかしら、とほっこり。

多分ネタなんだろうけど、「お前らノリが悪すぎ!おまえもおまえもおまえもCxxxばっかり!!」とか。トイレに立つなどの大きな動きをするお客さんだけじゃなく、、顔にてェあてて感慨深そうに見てた(かなり後方の)お客さんにいきなり突っ込み始めたり。

「ショーは始まってない!!!」とものすごい頻繁に言い張り続けるものの、これらのティーン時代・思春期時代の下ネタ、そしてヘルムさんがいぢってるお客さんたちが、きちんと「ショー」自体(→結局80分くらいの長さに)のなかでストーリーとしてつながりを持ち、高クオリティのメタジョークとなり、またいぢられたお客さんたちはのちに舞台に立たせられ、ネタの落としどころとして役立ち、大活躍していくんですよね。ヘルム氏、4人舞台に立たせられ、客席内でも(前方後方関係なく)3人くらいと一体となって一番のメインネタを作り上げていくってね。神業スキルだな、と思います。ご本人社交性がないんで・・・って言ってますけど、それとこれは別なんですよね。

お客さんたちは素人さんですから使いづらいことも結構多いと思います。でもヘルムさんのすごいところは、素人さんどんなボールも貶してスマッシュ決めるんですよ。スマッシュ決めてかつコントロール下に維持する。今回はフェスティバルでもない平日は水曜日の地元客ばっかりだったので、よっぱらいやスタグナイトのヤバいやつはいなかったけど。

というわけで、20時に始まったショーは15分のトイレ休憩をはさみ、22時35分に終わりました。めちゃくちゃ!疲れたけど最高でした。


(*1)2017年は本人やってるときにまるで気が付いてなかったけど、周囲から「どんよりモードにもほどがある」って言われて認識したらしいです。オレはじつはWiPしかみてないのと、本人が気づく前の者だったに違いないので、「鬱」の印象があんまりないんですよね。ただすげえ暗黒世界の究極のエロ芸術コメディで、感動した記憶が今も残ってます。

(*2)前作も鬱病の薬をもらってよくなったーよくなったーっていってたんだけど、今度はもっと実感してるみたい。

(*3)crowdworkっていうと一番前に座るお客さんを中心に「なまえは?」「どこからきたの?」「職業は?」「そこカップル?」みたいなやりとりでウォームアップというか、場をつないでいく、みたいのが典型的ですが、ヘルムさんのは、もうその域とレベルを完全に超えていて、ナタリー・パラミディスが大絶賛されてる系のクラウニング・スキルです。実際以前ヘルムさんどこかの媒体でクラウニングのレッスンを数カ月受けたって言ってたと思う。ただ数カ月のレッスンからの実践の繰り返しでこの達人レベルに至っているのは、天性の才能があってこそ、と思わざるを、得ません。

(*4)Hot'n Heavy の10周年記念ライブを去年エディンバラフリンジでやったときは除く


2024年3月26日火曜日

待ちすぎた、ガッドさんのBaby Reindeer (邦題は「私のトナカイちゃん」???)Netflixシリーズ、待望の4月11日配信

 日本も同じ日に配信開始でしょうか? 一応チェックしたら日本のネトフリの4月配信リストに入ってました!

スコットランドが産んだ天才リチャード・ガッドさんが、英語圏のコメディ・アワードといえば、のエディンバラのフリンジ・フェスティバルでアワードを受賞した3年後に、第4の壁を流行らせた(→語弊)フィービー・ウォーラー・ブリッジのフリーバッグのプロダクションとタッグを組んで発表、

Stage Awards (2019)でOutstanding Performance

Olivier Awards(2020)でOutstanding Achievement in Affiliate Theatre

Holden Street Theatre Awards (2019)でBest Theatre Show

を受賞した一人芝居Baby Reindeerが、ネトフリドラマシリーズとなったやつです。






イギリスではすでに相当知られているはずなのですが、世界配信ということもあり、今回のPR方法が、ガッドさんの名前だけでは弱いと思われてるみたいで、やたらと The End of Fxxxing Worldチームの制作です、ダケで押し通そうとしているのには、結構ムカムカきてます。しょうがないのかね。
ワーカホリックな天才のガッドさんが、闘魂こめて作ってるこのシリーズは傑作しかないです。ですので、皆さん見て騒いでください。



2024年3月18日月曜日

最近観たイギリスのライブコメディの感想その2。Ian Smith, Dan Tiernan とRob Autonのショーの感想です。

 本当は前のポスティングでエイカスターくん含めてまとめて書いちゃってあげちゃうつもりだったのですが、エイカスターくんの感想だけでとんでもない長さになっちゃったので、分けることにしました。大丈夫。この3人は忘備録程度のボリュームに留まります。


Ian Smith: CRUSHING 


ポスター広告にもシール貼ってあるとおり、2023年のエディンバラ・フリンジのコメディ・アワードにノミネートされてるんですよ。ガッドさんのコメディ観て以降、適度に注目している芸人さんであるため、高評価のレビューが出るたびに、行かないと行かないと、とは思ってたんですが、お昼時のタイムスロットで、なかなか上手に時間が取れない!ってことで、このショーが地元に再訪する、って発表になった時点で速攻チケットを確保しまして(多分半年前くらい)・・・くらいの熱量だけはありました。

内容は、プレッシャーとかストレスとかメンタル弱ってるんだけど、それを乗り越えるのは発散だよね、っていう話で。その主な原因が(たしか昔のショーで結婚したって話を聞いた記憶があるのだけど)パートナーとの別れたことではあるのだけど、その話をしたいのではない、と上手にそっちに関連する可能性の話に一切触れなかったのは、スキルだな、と思いました。後半は、セラピー的なアクティビティとして、スロヴァキアに行って車をぶっ壊すツアーに参加してくるストーリーを展開。ショー自体が芸人さんのセラピーの道具ではなく、芸人さんがセラピー方法を提示している、という意味では、他と確実に一線を画したショーを作ったんだと思いました。

本当に残念だったのが、フリンジではその車をぶっ壊すツアーに参加する映像を流したフィナーレがオレが見た地元のショーでは、なかったことです。これがあるとないだと、締まり感とインパクトが全然違うと思いますし、パワー落ちが否めません。その映像はムッチャクチャ面白かったらしい。SOHO THEATREでは流したのかな? 

というわけで、面白かったし、とてもいい芸人さんだと思うけど、注目度は現状維持かなぁ・・・。


Dan Tiernan: Going Under


この1ー2年で頭角を表してきた新人さんで、BBCのNew Comedy Award 受賞したりLeicester Comedy Awardでノミネートされたり。2023年フリンジで上演したこのショーも超話題になってて、見に行かなきゃ、と狙っている一方どうしても時間の都合がつかず。で、今回見てきました。

ディスプラクシア で、ゲイなんですって。こんな症状を持つ自分の学校での話や義父との関係の話や仕事での試行錯誤、コメディアンを目指し始めた経緯等、そんな中、心の支えだった大切な妹さんが白血病にかかってしまい・・・

と、聞いてると、どこが笑えるんだ?と思うんですけど、いいのか悪いのか、(あくまで本人が言うところの→)ゲイっぽくない外見とディスプラクシアの症状を利用して落としていくんですね。体のバランス崩すとか、声のボリュームの加減間違えちゃうとか、動きのコントロールできなくなっちゃう、とか。極めて善良な客を相手に、罪悪感を感じさせずにこの手の笑いを成立させてるのは、スキルかな、と思います。

イギリスでは、日本ではよく見かけるような、唐突に叫んだり動いたり、というショック的なインパクトで笑わせる笑いはあまり見かけません。なので(障害が原因云々はさておき)ダン・ティエランの笑い自体が新鮮なのだとは思います。

おりしも比較的最近「水曜日のダウンタウン」でチャンス大城さんとインタラスティングたけしさんのドッキリ検証があったのを思い出しました。このショーの笑いは、その検証でみんなが語っていることと物凄く関係していると思います。

ものすごいちなみに、憧れの芸人さんはサムくんらしいです。去年のサムくんのフリンジでの10分ショーの時にオレの真後ろの席に座ってたんですよね・・・なるほど。


Rob Auton: Rob Auton Show (UK & メルボルンのチケット売ってます)

2022年11月にThe Stand Comedyで見た時の感想をどこにもあげていない模様で、困ったな・・・


というのも、今回のショーは2023年のフリンジの見逃し分を見たんですが、その内容が2022年のフリンジの見逃しをその年の11月に見た時と共通する点がすごく多くてですね、リンクを貼って、逃げちゃおうと思ってたんですよ・・・

オートン・コメディに関しては2014年でどんハマり→2015年で一旦放置して熟成期間を設け→2019年で満を時して賛美という経緯を辿っての注目アーティストさんです。元々Spoken Wordというか絵描き&詩人の要素が高かったんですね。今もコメディアン、というよりはアーティスト性が高い。(オレの中で)
過去の感想のリンクを貼っておきます。2019年のを読んでもらえたら。


自分の生い立ちを通してのアイデンティティの模索で、今回はオーディエンスと絡みながらの絶望や落胆の表現がとても素晴らしかったですね。イギリス内でもオーストラリアでもキャッチできるので、ぜひ。

最近観たイギリスのライブコメディの感想その1。James Acaster: Hecklers Welcome 観ました(2024年2月22日のエディンバラ編)

こんにちは。

正月明けた1月に、法事が主な理由で里帰りしてましたが(注:お会いした方々お世話になりました)ほぼほぼジェイムズ・エイカスター最新ツアーのために、本来は1カ月くらい日本滞在したかったところを、3週間弱に切り上げて現実世界に帰ってきました。

その後も、週に1-2本のペースで昨年のフリンジで取りこぼした話題のショーを見に行っていたので、忘備録をつけておかないと、ネタも感想も忘れてしまうと思い、アップにいたります。

オーストラリア在住の方、これからメルボルン等でコメディフェスティバルが開催されるにあたり、ご参考にしていただければ、幸・・・と思ったら、(あれ?今年行かないの? アレ?)

ちなみに2023年のエディンバラフリンジでみたものの感想はこちら


James Acaster: Hecklers Welcome (→UKチケットはんばい中)


先日NY行ってた時に出演したSeth Meyers。もうNY公演は終わっちゃってると思う・・・


【背景的な話と、なんでこんなショー・タイトルになったかについて】

エイカスターくんは、(イギリスだけじゃなくて)英語圏を中心に大きな劇場をお客さんでパンパンにする芸人さんになっているのに、まだJosh Widdicombeのラジオ番組のサイドキックとしてClassic Scrapesの素材をぶちまけていたパーソナと親近感を維持しており、それが魅力と才能とすごさの1つであります。

その一方(ビッグになる過程ではあるあるな話かと思うのですが)、そのせいでオーディエンスのクオリティコントロールのハードルが他の芸人さんより高くなっちゃってるんじゃないかな、と(*1)。

詳しくは今までのオレの忘備録を全部ひっくり返して読んでくださいレベルの「スタンダップ」とは?という規模のデカい話になってしまうんですが。

客層と規模が広がることによって「スタンダップ・ショー」の認識の違いや経験度の違いにズレが生じてきちゃって、ショーの最中に不適切に客にからまれちゃう事件の発生率が高くなっちゃう。

エイカスター・コメディは一語一句、一本一本のネタが蜘蛛の巣のように、ものすっごい 緻密に計算&構築されていて、各フレーズ、1ネタでも機能しそれがクラスタとなっても機能し、さらには全部が収束して1作のアートになり、その1作1作のアートが連作にもなりうるんです。マジで、ゴッドなんです。

その神ショーが観れるのは、その過程に素人の外部がちゃちゃ入れないとき(*2)

しかしこれは、ガチのライブコメディファンの思いであり、現在の規模の客層を魅了する今、その割合ってのは50%以下かと思います。

(満を持して)ドン!ハネし、大きな劇場を数十分でほぼ完売しちゃうレベルに達しちゃったエイカスターくんは、(おそらく今まで以上に)オーディエンスに絡まれる目にあい、そのたびにブチ切れて、コテンパンにその客を叩きのめして(暴力じゃなくて言葉です)、Taskmasterでエイカスター入門したファンはドン引きするなか、ショーマストゴーオン(*3)。で、終了後我に返って、お客さんに悪いことした・・・ってゲロ落ち込む(→基本いい人。じゃないとこんな天才にはなれない)

そんな経験を繰り返すうちにエイカスターくんは、はたと真実に気づくのです。

「オレ、スタンダップ嫌いだったんだ!」

今までずっとスタンダップ・コメディアンとして成功したいと思って頑張ってきたんで全然気が付かなかった!!

ときは運よく(?)パンデミック。ライブをやっちゃいけない状況で、大手を振ってライブやらずに幸せな日々を過ごすエイカスターくん(*4)しかしその一方で、スタンダップコメディアンが自分のアイデンティティでもあり、切っても切れない仲であることも骨の髄までわかってるんです。

時はさらにながれ、世間は元に戻るなか、エイカスターが目指すべきは、彼のライブコメディにおける負のサイクルからの脱出。つまり、ショーが思い通りに進まなくてもハッピーでいられたらいいんです。というわけで、今回のショーが「お客さん、どうぞどんどん!絡んでください。このショーは、お客さんにどれだけ野次を飛ばしてもいいショーです。エイカスターは邪魔されても絡まれても絶対に怒ってはいけない。それどころか、にこやかに対応しないといけません」というものになったわけです。

二部構成。インターバル20分でした。1部でこのショーが出来た背景と、幼少から「人前に立って話す」ことを職業とする今までの自分とスタンダップの愛憎エピソードを語り、糸をあちこちに張り巡らせたところで、後半でいっきに紡いでいく、というものなんだという印象を持ちました。

【感想】

「印象を持ちました」と書いているように、どのように糸を張り巡らせたか、その糸は計画通りに全部張られているのか。後半でどうやって紡いでいくのか、出来上がる作品はどんな形やデザインなのか。

全然わからないやつに観に行っちゃいました(号泣)

ガチのコメディ・ファン、ガチのエイカスター・コメディのファンとっては、当たりはずれが激しいショーかと思います。

厳密にいうと、前半はオッケーでした。まだ会場が「ショーを観よう」の空気で、絡まれるのも話の内容に沿っていた(*5)ので、エイカスター話の続きが聞ける状態だったし、その場だからこその、インタラクティヴ性から笑いも生まれていた。好みはさておき、タイトル通りのバランスのとれたショーになっていたと思います。

ところが後半ほどなく、歯車が外れ、バランスが崩れだしちゃった。開演前からアルコール入れてたスコッツ客が話の腰を折ることを楽しみ始めちゃった。前半を含めたフリの先にある展開に進もうとするたびに、あさっての方向へむかったボールが投げられ、の繰り返しです。全く関係ないコメントを投げてくるし、いきなり質問してきたり。

何しろこれら全部受け入れて、対応するのがテーマのショーなので、客が「エイカスターがショーを邪魔されて続きを話せない」ことを本格的に楽しんじゃうと、なすすべがなくなっちゃう。

エイカスターくんは後半の途中から「ここまでのレベルで話の続きができない状態(客が自分の話の続きを聞く気がない)のは初めて。完敗だよ。なんとかコントロールしようと頑張ったけど、完全に諦めた!」と、そこから、YOUTUBERとかTiktokerがやってるみたいなQ&Aみたいなスタイルになっちゃって。エイカスター返しなんで、どんなボールも面白く返すんですけどね。すいません、ものすごい欲求不満です。

フラストレーションたまりまくって会場でました(*6)エイカスター・コメディは最高級だと思ってるし、このアイディアはある意味斬新で 客次第では素晴らしい作品になると思うし、エイカスターくん自体も新境地開拓になると思うから、心底応援したいけど、リスク高すぎる。本来作り上げていた絶対に裏切らない最高級クオリティの傑作を観れないのは、【バいですって。ってたぶん45%くらいの客は思ってると思います。


お願いです、エイカスターさん。パンデミックのときに、サイモン・.バードが「客が怖い?から客なしでスタンダップやります」ってスタンダップデビューしたやつみたいので収録してください。客に邪魔されなかったバージョンは本末転倒かもしれないけど、みたいんですよ。45%くらいの客はものすごい観たいと思ってると思います。Pateronでもなんでも10£でも20£でもいいんで売り付けてくれれば、観客全体の45%は購入するにきまってます。やって。お願い。じゃないと、このフラストレーションが消えることは一生ないし、リスク高くてもっかい35£だす気もしないです。

【最後に備考】

前方にF1層の女子が結構いたんですが、堂々と写メと映像とりまくってて、マジでビビりました。あんまりelaborateすると失礼にあたりそうな気もするので、書かないけど、いろんな意味で衝撃でした。

まあ今の子たちって映画館でバービーのゴズリンの写メとったりするみたいだけど・・・

この数日後、サムくんのライブを地元のハコで観てるときに前方の女の子たちがフラッシュつきで写メとりまくってて、「やめてくれそんなことされたら二度とここでライブしてくれなくなる」って夢でうなされました・・・そのうち正夢になりそう。こわすぎる。


*1アニキ系のパーソナだとここまでにはならないんじゃないか、と思っています。Russell Howardがめっちゃハネた比較的直後に、Assembly のMusic Hallって800席くらいのキャパで見たことあるけどお客さんに絡まれてなかったもん。あと、ネトフリで配信してる芸人さんたちってボス的な威圧感でてて、あれを無視して絡むってよほどの泥酔客しかないのでは?とはいえ、オレは芸人さんが大きな劇場でやれるようになった段階でほとんどの場合みなくなるので適当なこと言ってるかもだけど。

*2エイカスター・コメディはシアターよりで、クラウニングの要素はないんですよね。悪い言い方をすると、そのスキルはないです。だからガチでキレることでクオリティコントロールしてきたんですよね。

*3オレたまたま(運よく?)一回、エイカスターくんが客のたった一言の絡みにブチ切れて、いい時間使ってボッコボコに叩きのめした(ナイフで例えるならもう死んでるあとも数十回刺してる狂気)のに、きちんともとに戻ってアートを完成させて終わらせる様を見てて、もうわかっていることだけど天才すぎるって思ったことがあります。

*4 その後、調子にのって世間と関わるのがダメだったんだ!と一切のSNSを辞めて、SNSなし生活のおススメ、という本を書き、宣伝のツールが一切なくなってしまったことに気づいてOff Menu相棒のギャンブル氏に泣きつく、という伝説もあります。この本自体はエイカスター・コメディ好きは絶対に期待を裏切られない内容ですね。(読んでるさぁもちろん)

*5 すいません、観たのが一カ月近く前で細かい野次の内容を失念してしまいました。

*6 前から5列目の真ん中ゲットするくらい意気込んで取ってるんで。(いや、今回もテンパってるオレをよそに同行者がとってたんで実質なにもしてないんですが)。